表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
408/901

6-59

 アルブル国国境近くの違法村を目指すラディッシュ達――


 誰も何も言わない車内。

「「「「「「「「…………」」」」」」」」

 先の件で生じた「わだかまり」が未だ抜けず、御者台で手綱を引くラディッシュは、


(く、空気が重い……)


 耐え兼ねた彼はパーティーのリーダとして、勇者として、

(こんな時こそ僕が何とかしなきゃ!)

 仲直りのきっかけを作ろうと発起し、


「そっ、そう言えば、前はハクさんの粗相の御蔭で、どの違法村も入る度に散々追いかけ回されて、ホント困ったよねぇ~」

「「「「「「「…………」」」」」」」

「さっ、流石に今回は大丈夫、かなぁ~?」

「「「「「「「…………」」」」」」」


 誰からの同調も、質問も無く、


「あは、あははは……」


 乾いた笑いは次第に尻つぼみ、

「…………」

 ついにラディッシュも沈黙。

(僕って無力だ……一応は勇者で、このパーティーのリーダーなのに……)

 手綱を握ったまま意気消沈すると、


『ラディ』


 御者台に並び座る無言であったドロプウォートに、唐突に声を掛けられ、

(!)

 待ちに待った仲間からの声掛けに、


『何何何っ?!!!』


 満面の笑顔で振り向くと、笑顔の無い彼女は淡々と、

「エルブ国の陛下の時と同様に「謁見の間」からの去り際、フルール陛下に呼び止められてましてですわよね?」

(!?)

 ギョッとした驚きを見せるラディッシュ。

 何か、気まずい事でも隠しているかのような反応を見せた彼に、ニプルウォートも、


「そう言やぁ何を言われたのか、まだ教えて貰ってないねぇ?」


 その一言を皮切りに仲間たちから続々と、


「何を言われたでありんすぅ?」

「何だいアンタぁ、エルブでも王様に呼ばれたのさねぇ?」

「何スかぁ兄貴ぃ、オレ達にぁナイショっすかぁ?」

「ナイショは良くないなのぉでぇすぅ」

「よくナァイ♪ よくナァイ♪」


 沈黙は破られた。

 本人の望まぬ形で。


 向けられた集中砲火に、

(重い空気が変わったのは嬉しいけどぉ……これはちょっとぉ……)

 戸惑いを隠せず、

「ぅえっとぉ……」

 返す言葉にも詰まった。

 その理由とは、女王フルールに言われた話が「エルブ国国王から言われた話と同じ」であったから。


≪新生アルブル国の国王になる気はないかぇ?≫


 やはりと言うべきか、玉座への勧め。

 しかし、丁重に断ったラディッシュ。

 エルブ陛下に話したのと同様に「自身の未熟さ」を伝えると、彼女は変わらぬ妖艶な微笑みを浮かべたまま、


「王として未熟なのはぁ妾とて同じなぁんぇ。それはエルブ、カルニヴァとても。必要なのは王として斯くあるべしと言う「覚悟のみ」にありんす」

「でも僕は……」

「至らぬ所を支えてくれるのがぁ仲間でありぃ、臣下でありぃ、国民でありんすぅ。そしてヌシにはぁ既に、その仲間たちが居りぃんすぇ?」

「!」

「加え、ヌシの功績を鑑みればぁ、アルブルの民とて納得しぃんしょう」


(そうかも知れないけど、でも僕は……)


 語れぬ「秘めた思い」を抱えた様子で黙る彼を、女王フルールはふっと小さく笑い、優しく背中を押すように、


「不安定な世情においてぇ、時間はさほどぉありんせぇんぇ。よく考えてみるんすぇ」


 天世のかつてない不穏な動きを、地世の活発な暗躍をほのめかしたが、それでも彼は「心に留め置きます」とでも言わんばかり、

「はい……」

 小さく頷き、

(みんなに相談したら、みんなも二言返事で背中を押してくれると思うし、手伝ってもくれると思う。でも……今の僕には肝心の「その覚悟」が無い……それに……)

 思い惑い、

(それに玉座に就いたら出来なくなる、どうしても「やってみたい事」もある。みんなには……まだ、話していないことだけど……)

 意識は現在に戻り、


『みんなゴメン』


 優柔不断を感じさせぬ物言いで、


「フルール陛下に言われた事も含めて、今はまだ、話せないんだ……ホントに、ゴメン」

「「「「「「…………」」」」」」


 仲間たちが腑に落ちない様子を見せる中、


『ならば私は待ちますわ。「今はまだ」と言う言葉を信じて』


 声を上げたのはドロプウォート。

 仲間の誰よりも彼の答えを聞きたい筈の彼女の「信頼と我慢」に、

「「「「「「…………」」」」」」

 異を唱える事が出来る者など居なかった。


 彼女の気遣いのお陰で、仲間からの信頼を失わずに済んだラディッシュ。

「ありがとう、ドロプ。心の整理が付いたら、ちゃんと話すから」

「えぇ。皆と共に、その日を待ちますわ」

 彼女は、たおやかな笑みを見せ、それぞれの胸の内に「思う所」は残しつつ、結果としてガス抜きは出来たのか、車内に平穏が戻った。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ