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6-58

 青空の下――

 

 ラディッシュ達はフルール国国境の関所を馬車で抜け、同盟四国でありながらも、かつて緊張状態があったが故に設けられた非武装、否干渉地帯の森の街道を進んでいた。

 勇者組の活躍により、エルブ、フルール、カルニヴァ、アルブル四国の緊張状態は以前より緩和されたものの、国境の線を引き直すことで生じる「新たな諍い」を嫌った四国は共通認識の下、森の扱いを現状維持に留める事にしたのである。


 一面を見れば互いの国を気遣った美談とも取れるが、その半面、否干渉地帯に違法に作られた村々での「非合法な諜報活動の場」を失いたくないとの思惑も見え隠れしていた。


 街道を進みしばし経った頃、御者台のニプルウォートが不意に、

「なぁラディ」

「?」

「次に行くのは、アルブルかい?」

 すると手綱を引く彼が答えるより先、チィックウィード達とカードゲームに興じていたイリスが手札から眼は放さず、


「アルブルは後回しにしておくれでないさぁねぇ」


『はぁ?!』


 眉間に深い怒りシワを寄せるニプルウォート。

 イリスの「身勝手な言い分」もさることながら、礼を欠いた物言いがはなはだ癪に障り、


「アンタは何を仕切ってんのさぁ?!」


 不満を露わ、荷台に振り返ると、似た気性を持つイリスも彼女の熱に当てられ売り言葉に買い言葉、


『アタシぁ「アルブルで狙われた」っつったさねぇ!』


 一歩も引く気を見せず振り向いたが、


「ソレぁアンタが言ってるだけでホントかどうか怪しいモンさぁ!」

「アタシが嘘を吐いてると言いたいのかい、ニプルッ! 上等じゃないさねぇ!」


 怒り任せに手札を投げ置き、ガラッパチな女子二人が一触即発。


『けっ、ケンカはダメだよぉ!』


 ラディッシュは慌てて馬車を止めながら、

「みんな仲良くしようよぉ! 仲良くねぇ♪」

 話しに割って入ったが、何の論拠も持たない「中途半端な仲裁」など、むしろ火に油。


『『ならぁラディは何処に行くつもりなの(さ・さねぇ)!!!』』


 怒りを増したイキ顔二つに、同時に迫られる結果となり、

「えぇ?!」

 答えに詰まり、

「いっ、いきなり僕に、そ、そんな事を訊かれてもぉ?!」

 しどろもどろで狼狽えると、


『アルブル国の近くの違法村で良いのではなくて』


 イリス寄りの提案を、平静な口調で挟んだのは御者台のドロプウォート。

 しかしその案は、頭に血の上ったニプルウォートに更なる怒りを招く呼び水にしかならず、

「なっ!」

 彼女が激昂しそうになると、気を良くしたイリスがすかさず、


「分かってるじゃないさぁねぇ、ドロプぅ♪」


 二の句を遮った。

 ところが、


『勘違いされては困りますですわ、イリィ』

「へ?」


 ドロプウォートは冷淡に「彼女の上機嫌」を斬って落とした上で、


「違法村には様々な情報が集まりますわ。そこで貴方の情報も集め、事の真偽を問わせていただきますわ」


 それは「疑いを持っている」との意であり、立場は逆転。

『なっ?!』

 イリスが不愉快交じりの驚きを見せた一方、


「ソイツは良いねぇ♪」


 ニプルウォートが気を良くすると、面倒ごとに関わりたくないスタンスであったカドウィードが不意に、

「カディもドロプに一票でありんす♪」

 すると仲間たちの視線は、意を表していないターナップとパストリスに自然に向かい、向けられた二人は、


((イリィについて何か分かるかも知れ(ねぇ・ないのでぇす)……))


 思い至り、

「オレもソレで構わねぇスよぉ」

「ぼ、ボクもそれでヨイと思うのでぇす」

 ドロプウォートへの同調を示し、話をどこまで理解出来ているか分からないチィックウィードも大人たちの話の流れに乗っかるように、

「チィもヨイなぉーーー♪」

 笑顔で手を挙げると、ニプルウォートが挑発する様に、


「だとさぁ「イリスさん」よぉ、どぅするさぁ?!」


 その小馬鹿にした笑みに、勝ち気な彼女が大人しく引き下がる筈も無く、


『上等さぁねぇ! アタシぁ逃げも隠れもしないさねぇ!』


 強気で返し、一行の行き先は期せずして定まった。

 不穏な空気をはらみつつ。


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