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しかしそれから数十分後――
作業部屋にて▼眼鏡を掛けた「オミナエシ先生バージョン」の女王フルールから渡された漫画原稿を目にしたイリスは、
『のぉッ!!!?』
両眼が飛び出そうな程の驚きを以て、数歩後退り。
羞恥で真っ赤に染まった表情でカタカタと打ち震え、
「まっ……マジ……なのかぁい……」
やっと言葉を絞り出したかと思うと大国の女王を相手に、
『こっ、この変態漫画家ぁあぁ!』
「何でゴザル?」
「ゴザルじゃねぇさね! 恋愛の形は自由にしてもぉ見せちゃいけねぇ「ピー」な所が「ピー」な風に全部丸出しじゃないさぁねぇえぇ!」
慄き絶叫、
『どうりでぇ「チィ坊やタープ」に作業をさせない訳さぁねぇ!』
頭を抱えて立ち上がった。
チィックウィードとターナップは作業から外されていた。
当然である。
十八禁無修正状態の漫画原稿を幼いチィックウィードや、チィックウィードに手伝わせない建前としても聖職者であるターナップの眼に触れさせる訳にはいかないから。
『ラディ! ドロプぅ! アンタ達ぁ何を黙々と作業してんのさぇねぇ!』
耳まで真っ赤に苦言を呈すと二人は、
「だって、ねぇドロプ」
「ええ。ソレを隠すのが「この仕事の一つ」で、」
『何を当たり前のように言ってるのさぁねぇ!』
苦笑を交えてツッコムと、ニプルウォートとカドウィードが作業の手を止めニヤリと笑い、
「イリス様はぁ意外とウブでいらっしゃいますねぇ~♪」
「ほんにぃ「ウブい生娘」にぃありんすなぁ~♪」
その含んだ笑いに、
『ちっ、違ぁ! あっ、アタシぁただぁ!』
赤面顔で何かしらの弁明をしようしたが、
「アンタ今からそんなんじゃ、オトコエシ先生の作業になったらぁ卒倒しちまうさぁ♪」
「ホホホホ。げにぃありんすなぁ♪」
二人の更なる不敵な含み笑いに、
「へ?」
一抹の不安を覚えるイリス。
イリスの不安が解消されないまま日々は過ぎて行き――
オミナエシ先生のGL系同人誌作業は終わりを迎え、マネージャーバージョンのリブロンは完成原稿を最終チェック。
問題が無いのを確認し終わると、原稿束を綺麗にまとめて封筒に入れ、
「皆様、ご苦労様でした。私は印刷会社へ行って来ます」
退出して行き、
『お……終わったぁ……さぁねぇ……』
息も絶え絶え自席に突っ伏し、ため息を吐いたのはイリス。
目の前の作業に全力没頭する事で「羞恥を封印」して来た彼女であったが、原稿に過剰没入していたあまり、十八禁な「女子同士の秘め事」が、作業を終えた今でも頭にモヤモヤと貼り付いて離れず、
(忘れろぉ! 忘れるんだアタシぃ! もぅ苦行は終わったさねぇ!)
煩悩を振り払うが如く、赤面顔を横に振っていると、
『イリィさん』
アシスタント筆頭の証である青ジャージに身を包んだパストリスがやって来て、異様なほどに平静な、流れ作業的口調で、
「次に、この原稿を販売できるように局部を黒で塗り潰して欲しいでゴジャル」
『きょ、局ぅ?!』
愛らしいロリ顔から発せられた衝撃的一言に疲れも吹き飛び驚くイリス。
渡された原稿を目にした彼女は、
『・・・・・・』
一瞬にして石化フリーズ。
固まったと思った矢先、
「ふっ……」
短い一息を残して自席から崩れ落ちた。
「刺激が少々強過ぎたでゴザルか?」
「強過ぎたようでゴジャルなぁ」
気を失って床に横たえる彼女を淡々と見下ろす、■眼鏡を掛けたオトコエシ先生バージョンの女王フルールと、アシスタント筆頭パストリス。
ニプルウォートとカドウィードも呆れ交じり、
「「卒倒」とぁだらしないねぇ~」
「まったくでぇありんす。不甲斐なきにありんすぅな~」
見下ろしたが、ラディッシュはそんな女子四人に、
「え? いや、いきなりコレを見せられたら、誰でも普通は「とてつもないショック」を受けると思うけど……ねぇドロプ」
「ひえぇ?! あっ! そぉ、その、ひっ、人によりけり、だと思いましてですわぁ! わっ、私はあくまで仕事としてぇ受け止めているのでぇ平気と言うか大丈夫と言うか何と言うか!」
「そ、そう言うモノなのぉ?!」
女子達の逞しさに驚きを隠せないラディッシュの一方、
(((((もしかして毒され過ぎ?)))))
少し「自分と言う存在」に不安を覚える、その女子達。
そんな彼、彼女たちが視線を落とした先にあったのは、気絶したイリスが手にしたままの漫画原稿であり、そこに描かれていたのはリアリティーを徹底的に追求したオトコエシ先生渾身の、緻密に描かれた、臨場感あふれる、
≪男×男の濡れ場(無修正)≫
開始された作業には、幾多の困難や、新たな発見、再発見、乗り越えなければならない苦難の道が数々続き、その合間にはニプルウォートが元同僚たちから歓待を受けたり、ラディッシュがリブロンから「密かなつきまとい」を受けたり、フルール騎士たちを前に天世で見聞きして来た全ての講演や、上級貴族たちからの接待など、日々は目まぐるしく過ぎて行った。




