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 推しの作家を前にした、勇者組の女子達は有頂天。

 

 男子に内緒の「女子の秘め事」、「女子の嗜み」と言う発想は何処へやら。


 熱烈に握手を求めたり、手持ちの愛読書にサインを求めたりと、ラディッシュとターナップ、そして状況が理解出来ないチィックウィードを置き去りに。

 そんな中、


『何をそんなに浮かれてるさぁねぇ~』


 呆れ口調は、イリス。

 本音は、推しの作家ユリユリであるリブロンを前に、


(アタシもぉユリユリ先生のサインが欲しいさぁねぇーーー!)


 大絶叫していたが、斜に構えた自らのキャラを意識するあまり、

「もぅ少し大人になったらどぅさねぇ~」

 ヤレヤレと言った口振りで、

「チィ坊を見ぃなやぁ、呆れてるさぁねぇ~」

 半笑いを浮かべつつ、心では泣いていた。


 そんな彼女を、

「「「「・・・・・・」」」」

 見透かしたジト目で見据えるドロプウォート、パストリス、ニプルウォート、カドウィード。

 見据えられ、

(!?)

 内心でギクリとするイリス。


 ユリユリ先生の作品の「隠れ大ファン」でありながらの背信行為に、バツが悪そうに眼を泳がせ、その後ろめたさを誤魔化す様に、

「なっ、何さぁねぇアンタ達ぃその眼はぁ?! いっ、言いたい事があるならぁハッキリとぉ、」

 強がりを多分に交え「言ってみろ」と言おうとすると、女子四人は平静に、ともすれば冷淡に、


「「「「服の下に隠してるのは何(なんですのぉ・なのでぇす・なのさぁ・でありんすぅ)?」」」」

『のぉ!?』


 あからさまな狼狽えを見せるイリス。

 隠していたのは仲間たちから「胸やけしそう」と揶揄さ、隠れてコッソリ読み耽っていた、


≪ユリユリ先生の大作≫


(まっ、まさかコイツ等ぁ気付いてるっぅ?!)


 反射的に胸元を押さえ、

『なっ、何を言ってるのさぁねぇ、アンタ達ぃぁ! こっ、ここには何もぉ、』

 無いと言い張るより先、キラリと目を光らせたチィックウィードが彼女の背後から、


「いただきなぉ♪」


 光の如き素早さで彼女の胸元から本を抜き取り、


『ちっ、チィ坊ぉお! 何するさねぇ!』


 慌てて取り戻そうとした手を、彼女はスルリとかいくぐり、

「ここに「ユリユリ」ってぇ、かいあるなぉ♪」

 皆に見えるよう本を高々掲げて、表紙に書かれた作家名を指差した。


『のぉはっうぅ!!!』


 羞恥の赤面顔でフリーズするイリスと、

「「「「「「「「「・・・・・・」」」」」」」」」

 沈黙する大人たち。

 同情するに値する「彼女の羞恥」をおもんぱかり。


 意図せず秘め事を暴露された時の「恥ずかしさ」と言うモノを、イヤと言うほど理解出来たから。

「…………」

 もはや言い逃れも出来ない様子で、石化したかの如く固まるイリス。


 そんな彼女の様子を気マズそうに窺う大人たちの姿から、流石のチィックウィードもイタズラで済まされない行為であったと悟り、

「え、えぇ~と……なぉ……」

 バツが悪そうに視線を泳がせていると、固まっていたイリスがやおら静かに歩き出し、イタズラっ子の手から「密かな愛読書」をゆっくり取り返すと、リブロンの下に静々と歩み寄り、

「さ……サイン……書いてもらってイイ……さぁね……」

「は……はい……」

 重苦しい空気の中での、短い会話の数分後、


『いやぁ~ヤッパリ素直が一番さぁねぇ~♪』


 ヤケクソと思えなく無い上機嫌の笑顔で、書いてもらったサインを見つめるイリス。

 しかし、それから更にしばし後、


「はぁ~~~」


 彼女は満面の笑顔から一転した、暗く深い、大きな、それはとても大きな球息を吐いていた。

 茜色に染まった小川の土手に一人座り、落ち込んだ表情で佇みながら。

 有頂天まで上り詰めた彼女が、何故に再びどん底へ落ちたのか。


 その理由はサインをもらった後に遡る。


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