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6-46

 イリスからラディッシュに対するお説教があっての数日後――

 

 勇者組プラス一人の姿はフルール国謁見の間にあった、

 ベッドの様な玉座にしな垂れ、妖艶な笑みをたたえ横たえる現王フルールを前に、毅然と跪き、仲間たちを代表してラディッシュが恭しく、

「御久し振りです、フルール陛下。エルブ国国王勅命のもと、参上致しました」

 頭を下げると、女王フルールは怪しげな黒のレースの扇で口元を隠しながら、


「話は聞いてありぃんすぇ、勇者殿ぉ。ほんに久しきにぃありんすなぁ~」


 ゆるりと懐かしんだ上でニプルウォートにも目を留め、

「ニプルもぉ健勝で何よりぃ。活躍は聞き及んでいんすぇ」

「勿体無い御言葉。陛下も、お変わり無く美しく」

 頭を下げる彼女に、女王は安堵した様子を見せながら、

「時にぃ勇者殿ぉ、」

「?」

 ラディッシュを始めとする八人を改めて見回し、


「しばし見ぬ間にぃまた一段とぉ「多種多様なオナゴ」が増えたにぃありんすぅなぁ~」


 からかいを多分に含んだ眼差しを以て、

「のぉ、リブロンやぁ?」

 傍らに立つ女性に問うと、問われたリブロンは以前と寸分たがわぬ凛とした中に気恥ずかしさを滲ませながら、


「なっ、何故に私に訊くのです陛下ぁ」


 少しばかり動じた様子を見せ、ラディッシュと眼が合うなりサッと顔を背けた。

 多少なりとも女性の機微を理解する者であれば、好意の裏返しと気付けそうなモノであるが、


(ソッポを向かれたぁ?!)


 未だ嫌われていると思い込み、軽くショックを受けるラディッシュ。

 先の別れ際、彼女の口から直接『気は無い』と、キッパリ告げられていたから誤解は尚の事であったが、彼女の本意は胸元に揺れる「黒猫のチャーム」を見れば明らかで、気付けない彼をよそに、女性陣の乙女センサーは敏感に反応、


(((((またヒトリぃ!)))))


 恋敵の潜伏を確信した。

 彼を異性として特別視をしていない様子を見せる、イリスは別として。

 色とりどりな恋模様を見せる一行に女王フルールは、


「ほんにぃ勇者殿はぁ見ていて飽きんせぇんなぁ~♪」


 妖艶なホクホク顔で幼きチィックウィードに目を留め、

わらべやぁ、ヌシの名はぁ何と言うにありぃんすぅ?」

 特徴的な話し方の問いに「普通の幼子」であれば戸惑いを覚えたであろうが、カドウィードの物言いで慣れていた彼女は即座に「自分の名を訊かれている」と理解し、満面の笑顔で、


『チィはぁ「チィックウィード」なぉ♪』

「ほほぅ左様かぁぇ♪」


 微笑ましげに眼を細め、

「してぇ母は、」

 初対面となる「イリス」と「カドウィード」に視線を移すと、チィックウィードは天使の笑みで、


『ママなぉ!』


 ドロプウォートの腕を掴み、


『『なぁんとぉお!』』


 驚愕する女帝フルールと、慄くリブロン。

 エルブ国四大貴族が一子の娘ともなれば同盟国としても大ごとであり、ラディッシュ達もそれが分かるが故に慌てて釈明しようとしたが、笑顔満面のチィックウィードは間髪入れず容赦なく、


『パパなぉ!』


 ラディッシュの腕を掴み、

『ふぅおぉおぉ~』

 激しい目まいに襲われるリブロン。


(ゆっ、勇者殿ぉとぉ英雄殿ぉのぉ御子おこぉおぉ……そっ、ソレはぁつまりぃいぃ!)


 頭の中で、大人の関係に至った「ラディッシュとドロプウォート」の姿が妄想され、ショックのあまり膝から崩れ落ちそうになったが、フルール国女王最側近としての肩書が、立場が、辛うじて意識を繋ぎ止めた。


 すると女王フルールが唐突に「ほっほっほっ」と高笑い、

「なるほどぉそう言う事にありんすかぁ♪」

「?」

「二人は親代わりとなぁ♪」

「!」

 リブロンはハッと冷静さを取り戻し、


(わっ、私は何をトチ狂っていたのでしょう!)


 改めてチィックウィードを見つめ、

(彼女の年齢を考えればスグに分かりそうな物ぉ私はぁ盲目的にぃ~)

 人知れず自省していると、女王のニヤけた目と合い、その眼は「誤解で良かったね」とでも言いたげで、

(//////ッ!!!)

 途端に恥ずかしさが込み上げた彼女は、


『なっ、何でぇすかぁ陛下ぁその眼はぁ!』


 照れを誤魔化す様に強く反発すると、女王はクスリと妖艶に小さく笑い、

「なぁんでんありせんえぇ~♪」

 含みを多分に盛ったからかいの笑みを見せつけつつ、チィックウィードにたおやかな笑みを向け、


「チィやぁ、近ぅおいでなしぃ」

(!?)


 初対面の大人な女性に「おいで」と呼ばれ、珍しく惑う彼女。

 答えを求めるように顧みると、

(!)

 母(仮)ドロプウォートと父(仮)ラディッシュや仲間たちは笑顔で頷き、背中を押された彼女はニカッと笑うと、母性の塊の様な女王の下へ小走りに駆け寄った。

 すると、

(?!)

 無言のうちにすっと抱き寄せられ、一瞬びくりと驚くチィックウィードであったが、体に伝わる彼女の温もりに、

「…………」

 安堵の落ち着いた物言いで、


「ジョウオウサマはママともチガウ、とってもイイニオイがするなぉ♪」


 そんな彼女に女王フルールも優しく抱き寄せたまま、

「嬉しき事を言ぅてぇくれるにぃありんすなぁ♪」

 たおやかに表情を綻ばせ、一見すると微笑ましい光景ではあったが、リブロンやラディッシュ達は少し心が痛んだ。


 彼女が、自らの腹を痛めて子を持つ事が出来ない体であるのを知っていたから。


 同席していた女騎士たちも小さく奥歯を噛み締め、

((((((あんなハクサンにさぇ出会わなければ陛下にもォ!))))))

 それは今さら取り返しようの無い、過ぎ去った過去の過酷な現実。


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