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ラディッシュ達が国境の関所に近づきつつあった頃――
甲冑に身を包んだ、高身長で体躯のがっしりとした一人の女性が跪き、視線を伏せ、
『ご報告いたします陛下!』
彼女の前に居たのは、ベッドの様な玉座にしな垂れかかる様に横たえ、素肌が透けて見えそうな衣に身を包み、妖艶な笑みを浮かべた、フルール国現王。
ここは謁見の間であり、玉座の彼女は「妖艶な笑み」の中にも女帝と呼ばれるに相応しい、威厳を感じさせる物言いで、
「構わぬぇ」
報告に上がった女騎士に、続けて語るのを許し、
「ハッ! では申し上げます! 勇者ラディッシュ殿率いる一行が、国境の関所に近づきつつあると一報が、監視班より届きましてございます!」
すると女王フルールの傍らに立つ、黒髪ストレートが印象的な側近女性リブロンが、毅然とした表情と立ち振る舞いで、
「御苦労様でした。下がりなさい」
「ハッ! 失礼致します!」
女騎士が謁見の間を後にすると、彼女は毅然を崩さず、
「いよいよですね、陛下」
眼の端をキラリと光らせ、女王フルールも怪しげな黒のレースの扇で口元を隠し、
「ほんに、早く妾の下へ来るでぇありぃんすぇ♪」
獲物を狙う女ヒョウの如き眼を光らせたと思いきや、リブロンの胸元で揺れる「チャームの黒猫」を横目でチラ見、からかいを含んだ眼差しで、
「待ち遠しくありんしょう、リブロンや」
しかし、女王フルールの言わんとしている意図に気付かぬ彼女は、元同僚であるニプルウォートの一時帰国を指していると思い込み、凛とした表情のまま、
「彼女はフルールを追われた身です。外の世界に触れ、どれ程の成長を遂げたか気にはなりますが、それ以上は、」
「そぅでありせぇん」
「え?」
見つめる女王の顔を不思議そうに見つめ返すと、彼女の眼はニヤリと笑っていて、
『!』
真意を、やっと理解するリブロン。
耳まで真っ赤に顔を背け、
「なっ、なぁ、な、な、なぁ何を仰りたいのかぁ私には皆目見当もつきましぇん!」
そんな彼女に女王フルールは愉快げに、
「初心きことはぁ羨ましきにぃありんすなぁ~♪」
『もぅ! 陛下ぁーーー!』
凛然とした表情は何処へやら、彼女は乙女の顔で憤慨した。




