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民族衣装を思わせる刺繍が施された白地のワンピースに、頭には赤いフード。
絵本から抜け出て来た様な姿の少女は、汚れた鉄兜に軽鎧、兵士クズレを思わせるナリをしたニヤつく野盗男数人組に取り囲まれ、その醜悪な手は、今、まさに、少女に届く距離に迫ろうかとしていた。
「た、助けてぇ……」
怯えた表情で、今にも泣き出しそうな少女に、
「ケッケッケぇ。助けなんて誰も来る訳ねぇだろぉ~」
お決まり文句で不快な笑みを浮かべる野盗たち。
ラディッシュは慌てて茂みから首を引っ込めると、少女が無残にも手込めにされていく姿を想像し、
(まっマズイよマズイよぉどうしよぉおぉ!)
真っ青な顔して頭を抱え、
(呼びになんて行ってたら絶対に間に合わないよぉおぉぉ!)
そうこう悩んでいる間にも、野盗たちの穢れた手は少女の艶やかな柔肌に伸びて行き、
『きゃーーーーーー!』
少女の悲鳴に、
「やっ、やめろぉよぉおぉぉ~~~」
堪らずラディッシュは茂みから飛び出し、誰それ構わずヒョロヒョロの駄々っ子パンチの連打をお見舞い。
盗賊を生業とするような、大の男に通用するとは思えなかったが、
「ぐわぁ!」
「うわぁ!」
「ぐはぁ!」
豪快に、次々殴り飛ばされる男たち。
もんどり打って地面に転がると、負け犬の三文セリフよろしく、
「「「「「チキショ! 覚えてやがれぇ!」」」」」
逃げ去って行った。
しかし、
「やるかぁ~~~! このやろぉ~~~! 許さないぞぉ~~~!」
両眼をつぶったまま一心不乱に両腕を振り回し続けるラディッシュは気付かない。
ゼンマイ仕掛けのブリキのおもちゃの様に、両腕をブンブン振り回していると、
『ありがとうございまぁす!』
いきなり満面の笑顔の少女に背中から抱き付かれ、
「ほぇ?」
(なんかぁ柔らかくて気持ちのいい小ぶりなものが、背中にムニュっと二つ?!)
我に返ると、野盗たちの姿が消えている事にやっと気付き、
(ウソぉ?! 悪党に勝てたのぉこの僕がぁあぁ!?)
茫然自失であったが、少女の胸の感触が動いた拍子に再び背中に伝わり、
「え! あっ、 いや、これは、その何て言うか!」
慌てて離れ、
「偶然! そぅ、偶然たまたまでぇ!」
経験した事の無いシチュエーションにどうリアクションして良いか戸惑っていると、少女が満面の笑顔でラディッシュの手を握り、
「危ない所を助けていただき、ありがとうございました! お礼がしたいので、ぜひボクの村に来て下さぁい!」
(ぼっ、「ボクっ娘」キタァアァァ!)
可愛らしい少女のキャラ立ちに、マニアな悦びを感じたのも束の間、
「え? あっ、むぅ、村ぁ?!」
(あれ? この森に村は無いんじゃ、)
悩む間もなく、
「此方でぇす!」
強引に手を引かれ、
「ちょ、ちょっと待ってぇ!」
引き止めようとしたが、小柄な細腕から発せられる意外な怪力に易々と引きずられ、
(ぼ、ボクっ娘のチカラが超強いんでぇすけどぉ?!)
驚きつつ立ち止まらせようと、
「もっ、森に仲間が二人いてぇ僕の帰りを待ってるんだ! 村があるなら二人も!」
精一杯の声を張り上げると、少女はピタリと立ち止まって、満面の笑顔で振り返り、
「モチロンでぇす!」
ホッと胸を撫で下ろすラディッシュ。
一先ず話が通じだ事に安堵すると、
「ありがとう! コッチに居るんだ!」
少女をラミウムとドロプウォートが待つ場所へと導いた。




