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 ラディッシュの熱のこもった演説会が終わってしばし後――



 異様に上機嫌なドロプウォートが、


『お待たせ致しましたわぁ♪』


 山盛りの食材を抱えて戻って来た。


 出かける前とのあまりの温度差に、

「お、お帰りなさいぃ」

 いささか引き気味笑いのラディッシュ。


 よもや先ほどの「怒りの熱弁」を巨木の陰から聞かれていたなどと露と思わず、

(何か意外だなぁ~そんなに料理に自信があるのかなぁ?)

 勝手な妄想を膨らませていると、その間に上機嫌なドロプウォートは手早く調理を済ませ、


「完成ですわぁ♪」


 ドヤ顔で、二人の前に手製の料理を並べた。

 しかし、


「「…………」」


 出された料理を前に青ざめ、絶句するラディッシュとラミウム。


 皿代わりの葉の上には、絵として目にする事もはばかれる「蠢く何か」が。

 ラディッシュはその光景に戦慄を覚え、息を呑み、同じ顔したラミウムに、コッソリ、小声で、


(ね、ねぇラミウム……僕が異世界の人間だからなのかなぁ……とても命に関わりそうな料理に見えるんだけど……この世界の珍味ぃ?)


 現実逃避の半笑いで、カルチャーショックと思い込もうとしていると、

(お馬鹿言ってんじゃないさぁねぇ)

 慄くラミウムは「蠢く何か」を凝視しながら、


(アノ食材たちからぁ、どうすりゃ『こんな物体』が生まれちまうんだぁい……)


 信じられないと言った面持ちで脂汗を流していると、目の前の現実を受け止めきれないラディッシュの思考が、ある答えを導き出した。

(みっ、見た目が悪いだけ、とかぁ?)

(はぁ?!)

 呆れ笑いのラミウムは、

(そぅ思うんなら食ってごらんなぁ。骨はアタシが拾ってやんよぉ)

(えっ?!)

 思ってもみなかった切り返しに、上目遣いでドロプウォートの様子をチラリと窺うと、何処から来る自信なのか、無言で「お食べになって」の満面の笑顔。

 

 「食ってみろ(ラミウム)」と「お食べになって(ドロプウォート)」の板挟みではあったが、どちらに転んでも「食べる選択肢」。

 

 しかし、蠢く何かに視線を落とし、恐怖し、息をするのも忘れ、

(それはぁ、そのぉ、でもぉ……)

 二の足を踏んでいると、ドロプウォートが行儀よく膝にハンカチを置きながら、


「食事時にヒソヒソと押し問答とは、食材に対して不敬ですわよぉ」


 マナー違反に苦言を呈し、

「天と大地の恵みに感謝しますわ」

 何の躊躇も無く、フォーク代わりの小枝を『蠢く物体』にブシュと刺し、


「「あ……」」


 止める間もなく、青い顔して戦慄する二人の前で一口頬張った。

(食っちまいやがったよ……)

(たっ、食べちゃった……)

 唖然とする二人は恐る恐る、


「どぉ、ドロプぅ……? アンタぁ大丈夫……なのかぁい?」

「ドロプウォート……さん?」


 様子を窺うと、

「「!?」」

 ドロプウォートが満面の笑顔のまま制止し、


「………………」


 無言のうち、そのまま卒倒した。


『大丈夫かァい、ドロプゥ!』


 慌てて駆け寄るラミウム、

「たった一口だ! 傷は浅いよぉ!! 早く吐き出しちまいなァ!!!」

 抱き上げたが、あまりに非現実的な倒れ方に、


「アハハハ。ドロプウォートさんも、大袈裟だなぁ~素直に食べない僕たちを驚かそうとしたんでしょ?」


 ラディッシュは彼女のイタズラと高を括り、

「いくらマズイって言っても、そんな漫画みたいな事がある訳がぁ、」

 指先に料理の一部をつけてペロリとひと舐め、


『うぉっぷッ#&%“‘&%$”%&&’“%#$のおぉふぅおぉーーーーーーッ!』


 森の彼方へ全力疾走して行った。



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