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2-17

 数日後――


「お二人とも、推し神(作家)は出来ましたの?」

 おもむろに、本から目を上げるドロプウォート。

 この日は彼女の自室で読書会が催され、

「おぅさぁ」

「ハイでぇす!」

 ニプルとパストリスが笑顔で答えると、

 

「でしたら「せえの」で、推し神の名を言ってみませんこと?!」

「イイねぇ!」

「面白うそうでぇすぅ!」


 三人は声を揃えて、

「「「せぇの!」」」


 ドロプウォート「オミナエシ先生!」

 ニプル「オトコエシ先生!」

 パストリス「マツムシソウ先生!」


 想定外の不一致。

 

『『『…………』』』


 漂う不穏な空気。

 

 先陣切ったのはドロプウォート。

「パストの「マツムシソウ先生は」順当ですわねぇ」

 暗にニプルの選んだ作家を批判すると、ニプルも負けじと、

「確かに、パス(※パストリスの意)の選んだ「マツムシソウ先生は」当然だよなぁ~」

 遠回しに、ドロプウォートの選んだ作家を批判。

 

「「………」」


 険悪になりつつある二人の空気を察したパストリスは、緊張感を和らげようと、

「ぼ、ボクには「マツムシソウ先生」の作品でも、少し背伸びな感じでぇすぅ♪」

 少々引きつり気味ではあったが笑顔を見せ、

「かも知れませんですわよねぇ♪」

「まぁ「入り口」としては順当だよなぁ♪」

 二人とも笑顔で応じたが、その笑顔の裏側で、

 

((…………))


 ほとばしる火花。


 そして、先手ドロプウォート。

「ですがぁ「オトコエシ先生」とは、どうなのでしょぉぅう~? 男同士と言うのは、如何なモノなのでしょうねぇ~」

 要するに、オトコエシ先生とは人気の「BL系作家」。


 後手ニプルウォート。

「この「芸術性」が理解出来ないとはねぇ~って言うか「オミナエシ先生」の女同士って方が、ちょっとねぇ~」

 オミナエシ先生とは、人気の「GL系作家」であり、

「何を言っていますのぉ、ニプルぅ?」

 すぐさま応じるドロプウォート。

「芸術と言うならば、むしろ「女神の如き少女たち」の可憐な、」

「願望でも投影してるのかねぇ~パスぅ?」

 いきなり話を振られ、

 

「えぇ?!」


 慄くパストリスに、

「夜な夜な気を付けるんだよぉ~先祖返りに「ひん剥かれないように」ねぇ♪」

 ニプルが放った「からかい」と「ドロプウォートに対する挑発」なのは分かっていたが、パストリスは苦笑でお茶を濁した。

 思い当たる前例が、無い訳でもなかった故に。

 当たらずとも遠からずの「前科持ちのドロプウォート」は、

 

『んなぁ! 何ですってぇ!』


 過剰に憤慨。

 ガッと椅子から立ち上がり、薄い経本(愛読書)を手に、

 

「これは女子同士の「友情物語」なのでぇすわぁ!」


 ニプルも負けじと愛読書を手に立ち上がり、

 

「それを言うならコッチだって「男同士の熱い友情物語」だ!」


 困惑笑いのパストリスを間に挟んで睨み合い。

 火花を散らし合った二人は、

 

『『フゥン!』』


 小児の様にムクレ合い、背を向け合い、二人の(幼い)意地の張り合いに、

「あは、あはははは……」

 もはや笑うしかないパストリスであった。

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