6話 目標
「ルミナ、なんで.......」
「レイさんのもとで働きたいからです! なんでトリックやシャックは良くて私はダメなのですか!」
「前にもいったじゃないか! 君は灰色の翼と契約している。だから君の負担になってしまうと」
シャックやトリックとルミナじゃ状況が違う。二人はギルドを辞める際、違約金はないが、ルミナはある。それだけでもどれだけ自分のクビを絞めてしまうことか。それに加え、俺のギルドに来たところでSランククエストは無いし、Aランククエストですら限りがある。灰色の翼と比べて、メリットがあるとは感じられなかった。
「もう辞めてきました」
「え?」
(辞めただと......)
その言葉に驚きを隠しきれなかった。どれぐらい違約金がかかるかわからない。それなのに辞めてきたなんて。それも1週間やそこらで。
「私はレイさんがいたからSランク冒険者になれたと思っています。それは今後も変わりません。レイさんがいなければSランク冒険者の称号なんてあってないようなものです!」
そんなことないと思うけど......。俺が適切なアドバイスをしたところで、その人がやる気を出さなければSランク冒険者になんてなることはできない。
するとアメリアが言う。
「いいんじゃない? ここまで入りたいと言っているのだから入れてあげても」
「そうですよ! ルミナさんがいてくれれば、心強いじゃないですか!」
.......。俺が頑固になっているだけなのか? でもルミナに教えることなんてもうほとんどない。それなのに俺のところに来てもメリットがあるとは感じられない。
「本当にいいのか?」
「はい!」
「じゃあお願いしようかな」
「や、やったー!」
こうしてルミナが俺のギルド初Sランク冒険者になった。面接をした数日後、受付人の合否を伝えてギルドに来てもらう。
「レイさん。今日は何の集まりですか?」
「今後の俺たちの目標を決めるんだ」
そう。このギルドを作ったが、目標がない。目標がなければ、一定のラインまで言ったら立ち止まってしまう。だからここにいるメンバーでその目標を決めようと思った。
「目標ですか。それはレイさんが決めていいんじゃないですか?」
「はい。私もレイさんに任せますよ」
ルミナとアメリアさんが言う。
「じゃあ目標を言うね」
俺はそう言ってみんなに紙を見せる。
【世界一最強で安心できるギルド】
この紙を見てルミナやアメリアさんは頷いていたが、シャックやトリック、他の受付人たちは首を傾げていた。
「これはどういう意味ですか?」
「言葉のまんまだよ。この国ではなく、世界で一番大きなギルドにしたいと考えてる。でもそうしてしまうと種族間などでいろいろと問題が発生してしまうと思う。だから世界一最強で安心できるギルドが目標かな」
「そう言うことですか。でも最強とはまた不明確ですね」
「まあ簡単に言えば、Sランク冒険者やAランク冒険者がギルドの中で一番多くすることかな。でもそれには一つ問題がある」
「問題とは?」
「強くする人が居ない」
その言葉に全員が納得したような顔をしていた。俺が冒険者たちにアドバイスをしたところで、指南役がいなかったら意味がない。
「だからみんなにお願いがある」
「はい?」
「今後入ってくる冒険者たちに俺がアドバイスをするとして、ルミナやシャック、トリックにはその子たちを育ててほしい。もちろん俺も同行する」
「え!? レイさん自らクエストに出るのですか?」
「あぁ。なんせ現状弱小ギルドだからな。できる限り手を尽くしたいと思ってるから」
驚くのも無理ない。なんせギルドマスター直々にクエストに出るなんて聞いたことがない。でもギルドマスターになる条件としてSランク冒険者になっていることだ。俺は元々Sランク鑑定士としてなっていたから今回ギルドマスターになった。それは他のギルドでも同じこと。どんなギルドマスターでも元Sランク冒険者だ。だからこそクエストに出ようと思えば出ることができる。
でもめんどくさいから出ないだけだ。
「「「はい! 分かりました」」」
するとアメリアさんが一言言う。
「言うの忘れてたけど、ギルド申請したとき、ギルド名を後日決める事にしてたけどどうする?」
(あ.......)
一番重要なことを忘れてた。う~ん。
「トップワールドとかどう?」
ぱっと思いついたことを言うと、全員がなぜか驚いた顔をしながら言う。
「レイさんから良い案が出るとは......」
「え?」
「そうですよ! そう言う案はレイさんはダメですからね」
おいおい。ひどい言い様だな。前からこういう案も結構で来ていたと思ってたんだけどな。
「では私が申請しておきますね」
「よろしくお願いします」
そこから数日が経った日、続々と冒険者が加入して来てくれた。
(ここからが勝負だ)
読んでいただきありがとうございました。