4話 周りの温かみ
「え? 今なんて言った?」
「だからギルドに入れてもらえませんか?」
「いや、その前にギルドを辞めたって......」
「はい。レイさんと一緒に仕事がしたかったので」
こいつらマジで言っているのか......。俺的には嬉しいが、本当にいいのか?
「ちゃんと考えたか? 俺は嬉しいが、お前たちはあそこにいた方が金銭面とかがよかったんじゃないか?」
まだ設立していないし、設立したところで福利厚生、報酬が元居たギルドよりいい報酬を出せるとは限らない。
するとCランクパーティのリーダーが言う。
「そうですね。お金ならあそこにいた方がよかったかもしれません。ですが私たちはレイさんの的確な指示があったからこそ、ここまで上がって来れたと思っています。もしそれがなかったらもっとランクが上がるのは遅かったでしょう。それなら目の前の金銭より今後の未来にかけた方がいいと判断しました」
続くようにDランクパーティも言ってきた。
「それは俺たちも一緒です」
2つのパーティの反応を見たところ、もう言っても無理だなと思ったので
「わかった。でも今後大変になるぞ?」
「「はい!」」
「じゃあ一旦、中にいるエルフの女性――アメリアさんに話だけでも聞いてきてくれ」
俺はそう言ってこの場を後にした。
(みんなが来てくれたのは良い誤算であったな)
なんせ冒険者がいなければギルドとしてやっていくことができない。だけど先程まで冒険者の見通しが経っていなかったため、みんながこういってくれたのは本当に助かった。だから、今回の商談は失敗するわけにはいかない。
知り合いの武器屋に着き、中に入る。すると30前半の男性が出てきた。
「レイか。いきなりどうしたんだ?」
「すみません。少しお話できませんか?」
「わかった。いつもの部屋に入っていてくれ」
いつも通り、奥の部屋に入り武器屋のギルドマスター、ロイドを待つ。数分経ったところでロイドが中に入ってきた。
「またせて悪いな。それでいきなりどうしたんだ?」
「まず、ギルドをクビになりました」
嘘偽りなく伝えると、驚いた顔をしていた。そりゃあそうだ。今回アポなしで来たので、元ギルド――灰色の翼をクビになったことなんて知っているはずがない。
「それで?」
「新しくギルドを設立することが決まりましたので、できれば専属契約をしていただきたいです」
「それはギルドマスター、レイからの願いか? それとも友達――レイからの願いか?」
友達としてかギルドマスターとしてか......。
「ギルドマスターとしてです」
「俺も灰色の翼と契約をしている。だから「はい、では契約します」とは言えない」
真剣な顔で言われる。
(まあそうだよな......)
俺も灰色の翼にいたからロイドと知り合いになれたわけだし。
「じゃあ無理ってことですよね?」
「まあ早まるな。ちょうど今月末、いわば来週にはギルドと満期になる。だからお前と契約してもいい。でもそれなりに魅力がなくちゃ俺たちも契約することができない」
「今提示できるのは......」
俺はそう言って、今回ロイドに提示できる金額を示す。それと今後どれぐらい契約できるか。契約切りをしないことなど、様々なことを伝えた。
するとなぜか、ロイドは笑いながら言う。
「悪い悪い。試すことして」
「え?」
「元からお前がそう言ってきたら了承するつもりだったんだ」
「......」
「俺はお前がいたから灰色の翼と契約したまでで、お前が抜けたあそこに魅力なんて感じない。でも本当に今回はラッキーだったぜ。お前がクビになったタイミングと満期がかぶってくれてよ」
「じゃあ契約してくれるってことか?」
「だからそう言ってる。金はレイに任せる。レイが払えるようになってくれたら払ってくれればいいから」
「なんでそこまで......」
なんでここまでしてくれるんだ? ロイドの経営しているギルドは、国の中でも1.2を争うほど大きなギルドだ。それなのに報酬は払える時でいいなんて......。
「俺はお前に感謝しているんだ。だからお前が困ったら助けたいと思うのは当然だろ?」
「あ、ありがとう」
「じゃあ軽い手続きは後日ってことで頼む。まだ仕事が残ってるからな」
そう言ってロイドはこの場を後にした。
(俺に感謝か......。恩を売るためにやってきたわけじゃないが、今は甘えさせてもらおう)
国から申請が降りた翌日、人材派遣の面接日になった。
読んでいただきありがとうございました。