表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/50

サメさんは、悟るのです


 サメです。

 今は、2枚目のワンピースを着ているので、サメと思う人はいませんが。わたしは、べつに、サメ顔ではないから。教え子に脅迫もされないし。

 プリティキュートをウリにしていきたいお年頃です。

 あ、今のログは消しておこう。ぶりっ子アピールを消しておこう。



 今は、シェーラちゃんの後ろに、微笑ましくついていってます。わたしは、今、シェーラちゃんのお姉さんから、かっこいいアーマーをもらい受けるために挨拶に出向いています。

 向こうにある同じような木造家屋の場所にいるそうです。病気になると、一箇所に集められるそうです。それって、なんの感染症?

 まあ、原始社会に近いようだし、特に気にせずスタコラと入れますが。アルコール消毒とかマスクとか入りませんか。まあ、VRゲームで、風邪の症状とか機能につけないでしょうから、わたしは完璧な健康優良児。


「お姉ちゃん、サメさん、連れてきたよ〜」


 はーい、サメでーす。

 みんなー、応援してね。


「ごほっ、ごほっ。あ、いらしゃい、シェーラ。それに、サメさん」


 それは、わたしの名前ではないのですが。わたしには、ちゃんとサーシャという名前が……偽名ですけど。

 というか、いるのは、この人だけか。思ったより、おっとりしている。もっと、刀の(さび)にしてくれるわ、的な人を想定していたのに。だって、アーマー着て、戦っているんだよ。好戦的な人を想像するよね。


「この度は、村を守ってくださり、ありがとうございます」


「いえいえ。ただ退けただけです。まあ、何匹かは倒しましたけど」


 主に、自滅なんだけどねー。

 ウルフたちは、【サメハダ】の恐ろしさを知っただろう。しかし、本当の恐ろしさを知っているのは、わたしだけです。触れると傷つけてしまうなんて、どこのポエムなんだろう。幸い、白い部分は【サメハダ】の効果は、ないみたいだけど。ほとんど全身青いので、ああ、ハリネズミ。


「なにか村でお礼をしたいのですが。それに、シェーラも助けてもらったようですし」


 シェーラちゃんは、姉の近くで、タオルを変えたり、食事を片付けたりしている。

 アーマーが欲しいです、と言いたい。言いたいけど……、やっぱり無理かなぁ。なんだか、お姉さん、弱々しいし。この人から貰っていくのは、さすがに気が引ける。わたしの良心の呵責(かしゃく)が胸をさいなむよ。


「なんでも言って。できることはしますから」


「いいえ、なにも、いりませんよ」


 ふっ、言ってしまった。

 人生で一度は言ってみたい、善人セリフ。何かをしてあげた後に、礼はいらないぜ、と。

 これで、去って行けたら、カッコいいんだけど。いや、去ったら、なにも解決しないか。






「お姉さんは、いつから寝込んでいるの」


 看病を終えて、わたしの横に戻ってきたシェーラちゃんに尋ねた。


「二週間前ぐらいです」


「原因は?」


 そう、原因だよ。それを追いかけるべき。あれ、わたし、ログアウト……。いやいや、弱っている人を見たら助けないといけない。

 だって、わたしは、サメだから。

 意味不明。

 照れ隠しです。

 とにかく、この村を見捨てて、町や都市に行くのは、サメ的にノーなんです。陸上のサメは慈愛に満ちています。いいことをしてたら、ログアウトできるかもしれないし、急がば回れとも言いますし。


「原因は、分かりません」


 あ、そうですよね。原因がすぐ分かれば、誰も苦労しませんよね。

 えっと、蚊に刺されたとかかな。

 ーーここ、VR世界だった。

 そんな蚊とかで伝染病みたいなノリのファンタジーゲームは嫌だよ。殺人アメーバとか出ないよね。

 なんらかのスキルや魔法や呪いなんだろうけど、わたしも全くこの世界に詳しくないからなぁ。知識チートができない。なんでスマートフォンを持ってこなかったのか。今なら、ワンピース姿で、つつけるのに。


「お姉さんは、戦闘中に怪我とかした?」


「ううん、怪我なんてしなかったけど。戦った後ぐらいに、最近具合が悪くなってーー」


 うーむ、やはり、何か毒のようなものでもくらったのか。鑑定スキルを持たないんです。サメだけど、鑑定スキルがないんです。蜘蛛ですら持っているのに。サメにはないんです。

 サメさんは、圧倒的、知識不足に悩んでいます。

 いや、今は、ワンピース少女だ。

 サメサメ言いすぎて、サメ気分が抜けなくなってきた。


「あれ、そういえば、どうして、他の人は、アーマーを着ないの?」


「お姉ちゃん、アーマーは所有者しか着れないよ」


 あ、はい。

 え、じゃあ、わたし、あのアーマー着れないの。


「お姉ちゃんが亡くなれば、誰でも着れるようになるけど。たぶん、次は私が着る番」


 わーい、絶対、アーマーもらえないよ。

 そして、もう一個疑問。


「なんで、お姉さんが着てるの?」


「あのアーマーは、女性しか着れないから。ちょうどいい人がお姉ちゃんで」


 まあ、10軒程度の家しかないし、総勢100人もいないだろうし。


「お姉さんでも、病弱そうに見えるんだけど」


「戦う前は、もっと健康的だったから」


 ピンときました。

 わたし、理解しました。

 要するに、呪いの装備なんですね、アレ。

 経験者は知っている。

 アーマーさんは、結構、使い勝手が悪くて、デバフもあると。サメさん装備も、なかなか変なスキルがありますし。


 そうと決まればーー、鑑定スキルがない。

 とりあえず、壊してみたら怒られそう。 

 ダメ元でーー。


「鑑定スキルって、持ってない?」


「鑑定?」


 鑑定が通じない。

 サメが通じるのに。


「アーマーのスキルが分からないかなぁ、なんて」


「お姉ちゃんが知ってるはずです。アーマーを着ると、スキルが分かるそうだから」


「なぁに、二人でずっとヒソヒソと話して」


 ごめんなさい。二人だけの世界にいました。


「お姉さん、そのアーマーのスキルで、変なスキルありませんか?」


 まだ名前を聞いてなかった。コミュ力が下がっています。サメになったせいです。現実世界のわたしは、もっとフレンドリーで円滑な社交ができます。誰に言ってんだろ。

 まあ、名前はいいや。それよりもーー。


「そうねぇ。吸血とか日光弱体化とか、いろいろあるけど」


 吸血鬼、絶対吸血鬼じゃないですか。

 え、やだ、カッコいい。

 え、まさか、まさかーー。


「そういえば、純潔とかーー」


 あ、最低だ。このゲーム作った人、最低だ。処女の生き血万歳なんだろ。

 わたしは、女性しか着れない変態装備を欲しがっていたのか。サメの方が百倍マシです。

 で、わたしはなにを指摘すればいいのだろう。

 

「ゴニョゴニョーー」


 お姉さんの耳元で、憶測を話す。シェーラちゃんには、まだ早いよ。サメは、生き血を区別しないけど、吸血鬼は変態だから。イケメンが多そうだけど、変態だから。


「な、なるほど」


「どうですか」


「そうですね、村だと、15歳で、みんなーー」


 ああ、原始社会。

 全員、村の子供なんですよねー。

 てか、ここだと、わたしもそろそろなの。

 待って、身体は乙女。心も乙女だから。

 VRでも経験ないんだから。

 このゲームは、プレイヤーにそんな機能ないからなにも心配しないけど。全年齢版の全裸だったし。15歳の美少女、全裸待機モードを確認済みです。


「でも、どうすれば」


「吸血すれば治りませんか?」


「したことなくて」


 やっぱり、勝手にアーマーがお姉さんの血を吸ってたんだろうな。

 ゲーム制作者出てこい、もっとまともな装備を作りなさい!!


「吸っていいよ」


「え、でも」


 大丈夫、大丈夫、どうせ、この世界で死ぬわけないし。

 そうだよね、吸血スキルって、死ぬまで吸われないよね。

 さあ、早く吸血童貞を卒業するんだ!!

 第四真祖になれませんよ!!


「わたし、今、装備してないんですけど」


 あ、そうですよね。

 胸のロザリオがないから、ヴァンパイア状態かと。

 じゃあ、アーマー持ってくるんで、かぷっちゅーとやってください。

 さあ、人間に混じったサメから血を吸うんだサメ。


 

 このあと、無茶苦茶、血を吸われた。



 ーーーーげっそりしました。

 でも、お姉さんはツヤツヤになりました。

 なんだ、このゲームっ。


 早く血を蓄えないと!!

 肉、肉食べないと!!


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ