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サメさんは鈍足


 血で血を洗う現実世界というレッドオーシャンから脱却して理想的な未開拓な世界であるブルーオーシャンに飛び込んだサメです。

 けれど、グリーンスライムによって、服は溶かされました。本当の敵は内部にいるということですね。スマートフォンを持ってこなかったことが、悔やまれます。



「お嬢さん、危険だ。これだけの群れだ。きっと、レッサーウルフの上位種ハイウルフもいるはずだ。アーマーを装備していても、大丈夫とは限らないぞ」


「大丈夫、大丈夫」


 わたしは、さらっとかわして、家屋を出て行く。

 さあ、倒して寝て、ログアウトするぞ。

 こんなイベントをやっている暇はないんだ。お布団が呼んでる。

 

「わたし、サメですから」


 食物連鎖の頂点と言っても、過言ではない。海の王者シャチではない。サメです。シャチなんて海のパンダに過ぎません。あ、可愛いかもーー。


 それにしても、このスピードどうにかなりませんか。このペンギン歩きのような遅さが、わたしをイラつかせるのです。ほら、村人さんたちが、ファーストペンギンの後ろからついてきてますよ。

 

 よちよち、バサバサバサバサーーーー。


 頑張って腕を振っても、飛ぶこともできません。何のためのヒレなんだか。

 柵の手前まで来た。

 ウルフの鳴き声がけたたましい。

 わたしは、負けずと、サメの鳴き声を出す。


「シャアアアアアアアァァァァァァァッック!!」


 あんまり響かなかったようです。

 さっき見たレッサーウルフが、前に五匹来た。

 じろじろと見ながら、間合いを測っている。

 よーし、さあ、かかってこい。



「必殺サメ流戦術、亀の型ーータートル・メイデン」


 この技は、パイソンを十匹ほど倒した絶対防御の構えである。まるで陸地に上がった亀のような格好をすることで、向かってきた相手を【サメハダ】の餌食する鉄壁の技だ。

 水中のサメを陸地で平べったくしたら、こうなります。弱点は、視界が悪いことと、土の臭いがきついことです。


「ギャゥ」

「ギャウゥ」


『レッサーウルフを倒しました』


 あはは、さあ、次々とかかってくるが良い。




 ーーオロ? 

 二匹倒してから、ウルフが攻めてこない。

 どうしてだろう。


 わたしは、ちょっと顔を上げて、キョロキョロした。


 あー、囲まれてますね。

 わっ、飛びかかってきた。


『レッサーウルフを倒しました』


 賢いっ!

 モンスター賢いっ!

 早くも弱点に気づかれたのかな。

 そうです、カウンター技かつ使っている間は動けない欠点技です。


 サメ、立ち上がる。


 ここまま亀の構えでいると、集落の人に突撃されそうだし。というか、すでに何匹かと村人は交戦中のようだ。ごめんなさい、まだ若輩もののサメでした。


「【ハンドパペット・シャーク君】!!」


 さてと、ガウガウガウゥーー、メガロドンだドン!

 とりあえず、近くにいる村人と戦っているウルフを後ろからいただきまぁす。


『レッサーウルフを倒しました』

『レッサーウルフを倒しました』


 なんだか、手で食べても、少し飢餓感が解消されるなぁ。手に口とか、もしかして、芸術は爆発だァ、とか言わないといけなくなる。

 まあ、まさかサメと爆弾は関係ないですよ。わたしは、サメ枠です。


「ギャウゥ」


『レッサーウルフを倒しました』


 あれ、勝手に後ろから私のフカヒレに噛み付いて、やられてる。このサメさんは、後ろは亀の甲よりサメの甲になってますよ。青い色がかったところは、全て【サメハダ】のようです。胸びれの前あたりはセーフみたいですが。どこからアウトか確認してません。


「ワォオオオオォォォォーーーーンッ!!」


 大きなウルフの鳴き声が、あたりの空気を震わせた。

 暗闇に隠れた森の奥から、ひとまわりほど大きなウルフが出てきた。周りには、十匹ほどのレッサーウルフたち。【夜目】のスキルでバッチリ見えています。不可視境界線だって見えちゃいますよ。

 ああ、黄金に輝くわたしの眼。鏡がないので、実際は分かりませんが。サメだし、輝いててもいいよね。

 

 さて、あれが、わたしの睡眠を邪魔する元凶か。

 早く睡眠を取りたいんです。帰っていたただけますか。

 動かない敵を前に、わたしは、心内会話の名手として、脳内ログを書き溜める。


 正直、怖いです。

 なに、これ!?

 大きすぎませんか。

 犬の平均的な大きさとサメの平均的な大きさを間違えていませんか。もっと、片足で転がして遊べる程度の大きさでいいのです。サメより大きな犬はいりません。丸呑み、わたし、魚でした。哀れな小魚でした。お魚くわえたワンちゃんの図のアクセサリーでした。


「ワォオオオオォォォォーーーーンッ!!」


 再びの鳴き声。

 これって、もしかして【威圧】なんですか。

 後ろで、村人がガタガタと震えています。わたしには、全く効いてませんが。

 やっぱり、大丈夫なのかな。

 昔の人は言いました。

 『体格の大きさが戦力の絶対的な差とは限らない』


「シャアアアアアアアアアァァァァァァァックッ!!」


「きゃうん……」


 あ、【威圧】が発動したみたい。ウルフがお腹を出して、寝転がっている。はじめの叫びには、スキルが発動していなかったのかな。村人が、後ろで泡を吹いている。

 それにしても、サメの鳴き声はこれでいいのですか。


 わたしは、ウルフに対して、森にお帰りと、指し示す。飼ってあげたいけど、たぶん、ここでは無理ですよ。

 わたし、サメハダで乗れそうもないし。あ、でも、これは移動手段として捨てがたい気も……。

 やめよう、とにかく寝よう。寝てから考えよう。

 電流感知もあるし、あとで探せるでしょ。


 スリープモードに移行しまーす。

 わたしは亀のような足取りで、シェーラちゃんの家に向かうのでした。

 途中、村人が喜んで近づいて来ないか心配していたけど、どうも、獰猛なサメは、少しビビらせすぎたようです。倒れた人の介抱が先ですね。



 


 シェーラちゃんに連れられて、お家に案内されました。

 メガロドンを脱ぎます。


 「なんで、また裸なんですか!?」


 わたしには、かくしごと、がないからです。

 もう寝ます。寝まーす。



 さて、サメの着ぐるみと同じ世界にいられるか、わたしは自分の部屋に戻らせてもらいます。

 あ、わたしのVRデバイス、サメの寝袋だった。





 あさ〜、あさだよぉ〜、朝ごはん食べて〜、学校〜。



 うん、変わってない。

 朝ごはん食べて、学校行きたいよぉ〜。


 

 ログアウト、ログアウトは、どこ!?

 緊急脱出用ログアウトボタンは、この世界にないの。

 ステータスの欄に、なんでついてないんですか。

 



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