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 シェーラちゃんと雪山で雪だるまを作り終えて、【サメダルマフォーム】を獲得しました。まぁ、死にスキルでしょうけど。ダルマになってどうするの。

 さて、出発だ。この旅の終わり。終着点へ。ログアウトできるといいなぁ。


「メカシャークっ!!」


 わたしのフォルムは美しい戦車のようになりました。しかし、両翼のヒレがあるのです。つまり、このタンクは飛行機でもあるのです。

 ちゃんとウルフも二匹とも積むことができました。もう戦いはいらない。最後の滑空を始めようじゃないか。わたし、飛びます。サメだから。

 行こう、あの空の果てに。空戦サメ騎士は、とある飛行士を乗せて、揚空します。


「サメさん、発進します」


 雪原に、あきらかな戦車みたいなタイヤ痕をつけながら、一気に速度をあげて、上空へとあがっていきました。

 知ってますか、サメの目線からは水平線の果てが見えるのですよ。


「まぶしい」


「太陽に向かって飛んでますから」


 シェーラちゃん、おもったのですが、この世界、他の未確認飛行物体とかないですか。ぶつかりそうな何かをみるのですが。


「ドラゴンですね。空のクジラもいますよ」


 またクジラですか。ドラゴンと同列ですか。そこはサメではないのですか。

 この世界は大きなサメの上に存在しているという神話とか、どうですか。意味不明ですね。

 

「あのー、なんかドラゴンさん、追いかけてきてないですか」


「ああ、大丈夫ですよ。振り切るので」


 シェーラちゃん、ちょっと待とうか。わたしのスピードメーターはどうなっていますか。時速何キロですか。今、おかしいですね。キシキシとサメでは鳴ってはいけない音がなっていますよ。







 

「お姉ちゃん、海ですよ」


「……」


 返事がない。ただの屍のようだ。

 海の底には、自由がある。


「お姉ちゃんが、真っ青」


 うん、降ろして。

 返事する元気がないです。ハンドルを握ると性格が変わる人ですね、シェーラちゃん。

 わたしは哀れなサメ。波に揺られるように、逆らうことができないサメ。


「入ります」


 あ、ちょっと待って。海に直接メカシャークさんでダイブしないで。胴体着陸ですか、いや、この角度は入りますね。

 海に突っ込むぞ。


「どう元気になりそう」


 うん、ゲーム世界万歳。現実世界だと、最後の死因は大破になっていたよ。まぁ、メカシャークさん、痛覚はないようなので、このまま潜水してエンドもありかもしれない。圧力で爆縮。


「シェーラちゃん、とりあえず、近くの陸にあがろう」


「う、うん。で、でも――」


「どうしたの」


「速すぎて、全然コントロールできない」


 【加速(水中)】ですね。空より海の方が速いなんて。いや、視界が悪いせいかな。


「とりあえず、上にあがろう」


「どっちが上かな」


 どっちだろう。というか、全然、方向が分からない――、なんてこともないや、わたしは【夜目】【電流感知】があるし。でも誘導をどうすればいいのかな。


「とりあえず、くるっと一回転して、ハンドルを引いてれば、浮上するはず」


 うん、たぶん、これで上がれるよね。




 で、結局、上がってきました。無人島らしきところ。

 なぜ無人島と分かるかって。そんなの女の勘、いやサメの勘。

 砂浜にいると、海風がふいて、潮の匂いを感じる。


 わたしは、海だーーーーッ!!をやることもなく、しみじみと波打ち際に立った。

 な、なにも、起こらない。

 いや、分かったけど。なんかゲームで、ここでイベントが起こるのでは、と頑張ったのに、何も起きない展開。図鑑をあつめても、似たテキストがぺらっと一枚。

 しばらく、ぼうっと見つめていた。シェーラちゃんは、疲れたのか、くるっとウルフに抱かれて眠っている。操縦も楽ではないということだ。まぁ、10時間以上いってただろうし。


『こちら、アーマーズ・ワールド・エボリューション公式サポートセンターです。正式ゲームリリース前にお遊びの皆様、あと現実時間1分でこのゲームはVRMMOとして他ユーザーを含め、オンライン環境に適応します。また、海外での先行リリース版と同じくあらゆる機能は開放されます。ただし再スタート地点、最初の出現地点となります、ご注意ください。アーマーのレベルや持ち物や実績は引き継がれます』


 ゲームを始めた瞬間に聴いたのと、同じ人工の女性音声だ。

 あ、あれ。

 もしかして――、これは、わたしが英語を読まなかったからかな。

 まさかログアウトできないのは当座の仕様でしたか。あれ、今日リリースだから深夜00:00に始めたのは間違いでしたか。


「とりあえず、【サメさんポーチ】」


 どさどさと、食料を大量に落していく。やばいよ。無人島にウルフとシェーラちゃんとミニバンを放置する展開になるよ。さすがに出現ポイントに帰る時間はない。ここの座標は――。どうやって確認すれば。というか、どうやって、ここまで戻ってくればいいの。


「シェーラちゃん、起きて」


 気持ちよさそうに寝ている少女を揺すぶる。


「ん、んん――――――――な、なに」


「お姉ちゃん、ちょっとここを離れるけど。安心して。待っててね。あと、たまに、火で煙でもあげて」


「え、海に潜るの、今から」


「そ、そう。ちょっと長くなるかもだから。食料も置いてくから。信じて待っててね」


「う、うん」



 ああ、なんで、こんなことになってるんだろう。

 わたしは、シェーラちゃんをおいて、海に浮かぶ。

 しばらくして、光に包まれて、アナウンスが流れる。


『アーマーズ・ワールド・エボリューション、正式版にアップロード中です』




 そして、気づくと、最初の大草原にいた。

 普通にステータスを開けば、ログアウトボタンがあった。

 でも、ちょっとなかなかNPCにやばいことをしたので、救いに行きます。

 サメは人類の味方ですからね。

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