8×6
「欲しがりません、死ぬまでは」の勢いで、東に大攻勢をかけているのですが、目の前の山脈ミャクミャクミャクミャク様が偉大すぎるので、神々の頂を眺めながら、麓でコーヒーブレイクです。麓といっても、富士山五合目ぐらいですね。入山料は要りますか?
なおサーー、なおサメだからマけてね。
「お姉ちゃん、そんなに急いでどこに行くの」
「まぁ、ノリで」
「疲れてるよ、シューベルトもワッフルも」
たしかに、ワンコーズには並々ならぬドッグデイズのドッグランだったかな。なお、何キロ進んだのかは知らない。でも、きっと目の前の山がリラックス山のはず。ん、なんか名前が違う気もするけど、誤差の範囲だよね。
「犬は庭を駆け回っているね」
野生に帰れ、自然に帰れとかのジャンジャックなんったらも言ってるよ。つまり、人類は元のサメに還ってーー。
「バテて寝転んでるよ」
思考中断。スイッチングコストで以前に考えていたことに戻るまで、30分はかかります。
とりあえず、コーヒーハウスのコーヒーを飲もう。アイスコーヒー、ガチで凍ってる。魔法陣が浮かび出る機械が下にあって、やんわりとした炎がアイスコーヒーを徐々に溶かしている。ちょびちょび。
まぁ、ゲームならではの飲み方。焼肉のように焼きコーヒーです。
さっさと飲みたいわたしからすると、なんかあんまりにもじんわりとした時間すぎる。
「ここからは、もう山小屋はないよ」
「シェーラちゃん、一泊しようね」
サメハウスを取得できなかった以上、ここで簡易宿するしかない。雪山のど真ん中で、愛を叫ぶことにはなりたくない。SAME151号は、冬眠はできないのです。一気にトンネルのように突き抜ける予定です。弾丸登山です。
山小屋でお泊まりですね。ゲーム世界の宿屋文化は素晴しい。現実だと、こうはいかない。
お料理描写は、小説のてこ入れ的な素晴しい舞台装置ですが、わたしは、粛々と、かみ砕く。
「お姉ちゃん、エビは殻ごと食べないよ」
「ごめん、なんか雪山にいるエビが許せなくて」
陸のエビといわれるコオロギなら最近のプロテイン危機で人気になった昆虫食だけど、雪山のエビって何。どうやって手に入れるの。釣るのか、ワカサギか。ワカサギ釣りなのか。凍った湖でもあるんですか・・・・・あるでしょうけど。
わたしは落ち着いて、エビの殻をむく。そして、他の貝たちに目を向ける。
「カキはかみ砕かないほうがいいよ。ナガレコもホタテも」
いやいや、ワンピース姿のわたしに、そのような力、滅相もございません。ちゃんと、焼きますよ。
冬山の山小屋で、魚介類を食べるなんて、それなんてチートですか。
美味しいから余計なことを考えるのはやめよう。輸送とか保存とか、現実的ツッコミをしたら負けだ。
「そして、麺料理がくると」
「蕎麦だね」
この世界、麺料理に魂でも売ってるのか、というぐらい炭水化物が麺なんだよね。なんだ、軟水化物や硬水化物はないのか。まぁ、まだラーメンもうどんも見てないけど。
まぁ、美少女なわたしは、麺もちゅるちゅると食べられちゃうよ。サメのような鋭利なキバはないから。
――食べ終えて、それから――――。
山小屋に布団を敷いて、夜になった。雪の不思議な音だけが聞こえる。雪の落ちる音だ。たまにボスンと大きな音。なんだか、現実だと怖くなりそうだ。雪崩でも起きそうで。フリじゃないです。
「朝が来れば山越えだね。ついに海が――」
「えっ、まだ全然だよ」
「これが、リラックス山じゃないの」
「標高3000メーチルぐらいだよ。リナックス山は10000メーチル超えるよ」
うん、迂回した方がいい山脈じゃないかな。エベレストを超えないでよ。メーチルはメートルなの。ダメだよ、そんな登山できないよ。
「大陸の面積は3000万キロです。だから、まだ一割ぐらいしか進んでは――」
オオカミたちの走力では、どうにもならない面積ですね。日本の面積は38万ですよ。
遠くの大きな山がリラックスな山だと思っていた時期がわたしにもありました。
跳ぶか――
跳ぶしかないか――
移動に時間がかかるゲームはクソゲーなんだから――
そらをとぶは序盤に欲しいもの。
あれ、でも、メカシャークさんにウルフ入るのかな。自分の積載量が分かりません。




