翔べ
スカイをクロー……まぁ泳いでいるというのかな、これは。サメジェットかな。相対性理論を身体が理解しそうです。
まっすぐ飛んでいくぜ、巨大サラマンダーへ。サメライド。サメ型機動兵器。最終兵器サメ。
わたしの中身はどうなっているのだろう。自分の中身は見ることはできない。レンドゲンでもあればなー。えっ、金属はダメ。
まぁ、いいや。
とにかく。
わたし自身がサメになることだー!!シャハハハッ。
オート戦闘モードですね。何一つコントロールできない。シェーラちゃんに任せて、自動周回しています。グルグルと巨大サラマンダーを観察。
「シェーラちゃん、どうするの」
わたしには、どんな装備が付いているのかな。
大艦巨砲主義の賜物である大口径の主砲はありますか。口から何か大きな砲弾がでますか。胸ビレ近くにはガトリング砲でもありますか。特攻はやめてね。
「魚雷を落とします」
ふえ、空から魚雷ですか。
相手は戦艦かな。下は火山なのですがーーいくぞ、雷撃だ。
カチャッ、ガチャン。
うーん、体内の振動音が心地悪い。
胸ビレから何か落ちて軽くなりました。下で何やら衝突と爆発。視界がね、直線なんですよね。下は見えない。いやぁ、胸が大きくて下が見えないよ。
サラマンダーの叫び声が空中に響き、振動を震わせる。振動を震わせるって、絶賛間違った日本語のコロケーションっぽいなぁ。違和感を感じる。
「全弾命中したよ」
「さあ、帰ろう」
うんうん、戦闘機は爆撃したら爆撃帰宅だよ。
やることはやった。参加することに意義がある。
「まだやれるよ」
やりたくないです。もう二度と使いません、このスキル。わたし、もう大空のサメライの夢は見ない。身体の感覚があるのに自分では動けない。怖い怖い。まぁ、わたしの本体はシャークポッドに保管されているから、この肉体が滅ぼうとも第二、第三のわたしが以下略。
「シェーラちゃん、なるはやでお願い」
「うん、だいぶ慣れてきた」
んっ、ちょっとシェーラちゃんっ!!
メカシャーク、インメルマンターンを実行。わたしの心臓が停止しそうです。墜落エンド墜落園。
シェーラちゃん、わかった。やめよう。今度、戦闘機を買ってあげるから。背面飛行しないで。マシンのAIがちびりそうです。
わーい、ジェットコースターだー。
失神。サメ、空に沈む。
気づいたら、戦闘は終わっていました。
わたし、こんなのばかり。まともに戦った記憶があまりないです。ぐわんぐわんしまくっていた朧げな記憶だけが茫漠とした時間の中にあるような気がした。
メカシャークは着陸。
そして、シェーラちゃんが降りたところで、すかさずスキル解除。二度と使わないスキルを格納庫へ。
「どこですか、ここは?」
「うーん、着陸できそうなところに降りたんだけど。ちょっと歩かないと、都市に戻れないかな」
うーにゃー、もう疲れきったのですが。今日は野宿でいいですか。歩きたくない動きたくない。
「お姉ちゃん、せっかく倒したのに素材取られちゃうよ」
もうハイエナがいっぱいでしょう。
今から歩いても間に合わないよ。ゆっくりしよう。
【空中水泳】で帰りますか。いやぁ、地面が見える程度の飛行っていいね。地に足がつくぐらいがちょうどいいのです。
「また、乗せてね。楽しかった」
「また今度ね」
二度とないです。日本人の「またね」を信じるな。




