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死屍累々


 虎の尾を踏む、逆鱗に触れる、と弱点というか怒りの向こう脛はあるわけだ。サメの鼻も同様。

 まぁ、サメさんにはロレンチーニ器官以外にも、トニック・イモービリティという弱点がある。逆さにされてお腹をくすぐられると動けなくなるのだ。シャチさんがサメさんを狩るときにも使われるとても残酷な方法だ。やってみたい人は、海の底にどうぞ。お待ちしています。



 サラマンダーさんが睡眠ドアノックされて、一気に攻撃へと転換した瞬間、わたしは咄嗟に反射的に正当防衛オーバキルをしてしまった。つまり、自分の口で噛みついてしまった。ヘブンズドアが開いたでしょうね。

 そして。

 血だ。

 血が吹きつけられた。

 サメ、本能を知る。


 気づくと、屍が溜まっていた。

 いつも、よろしく【血の忘我】様。コントロールできない狂気。


「うぇえ、最悪」


 わたしの乙女の部分が、イモリの串焼きを食べてしまったような感覚を嫌っているとーー。

 火山で揺れが響いているのを感じる。

 地面から突き上げるような衝撃をくらいながら、わたしはサメのアーマーでコテンと転がり、おむすびのように転がっていき、途中の岩の塊に背中を打った。見事に逆さま。視線は火口に向かっていた。


「ギュアァァァァァッ!!」


 あはは、火口から飛び上がる大きなサラマンダーだー。

 わたしは、どこかに行っているので、クジラの亜種さんと頂上対決をしていませんか。

 うん、なんか、むちゃくちゃわたしを睨んでいますね。

 ごめんなさい、不可抗力だったんです。血を浴びたせいで、サラマンダーさんをパクパクとしてしまっただけなんです。無実です。過剰防衛なだけです。


 あー、海門決戦したいのですが、火山の頂上ですか。

 海の方にご案内します。

 まずは頭を冷やしましょう。

 

 サラマンダー撃滅から、ここまで数分。感覚としては。

 ゲームとしては一定上ここのサラマンダーを倒すと、大きなサラマンダーが発狂するという展開かな。

 うん、自業自得な気がする。

 でも、待とう。話せば分かる。

 

 えっ、問答無用ですか。

 大きなサラマンダーさんの口からの流れ出る溶岩流攻撃。とりあえず飛んで回避。

 うーん、戦略的撤退。


 ご、ごめんなさーーーいっ。





 幸いサラマンダーの親玉も歩みは遅いようだ。

 わたしですら逃げ切って、都市ロックベルまで到着できた。

 諦めてくれたかな、と後ろにだるまさんが転んだ気分で向き変えると、どんどん火山から降りてきていた。


「お姉ちゃん、何かしたの」


「わたしは、何もしてない」


 うん、したけど。

 証拠はない。中古車市場の私的情報を守ります。逆選択万歳。

 都市ロックベルは大慌てだ。

 突入してくるビックなサラマンダー。

 冒険者たちに次々と動員がくだる。


「さて、帰ろうかな」


 ガシッと、捕まれる。


「お姉ちゃんも、冒険者だよ。義務があるよね」


 うん、バレてそう。わたしの所業がーー。

 でもね、わたしは火山でバトルするようなスキルがないんだ。

 それでもやると言うならばーー、主人公は君だ。


「【メカシャーク】!!」


 シェーラちゃんが、ポカンとしている。わたしがサメロボットになれないと思ったか。


「さぁ、僕に乗って、戦おう」


 ガーリー・サメフォースいや、どちらかというと戦車だよね。

 ガールズ&シャーツァー。

 もう無茶苦茶だなぁ。

 できれば、ウィッチーズ的な戦闘装甲に変身したかった……。


 シェーラちゃんが、困惑しながらも、ヒレから上に乗って、背ビレの蓋を開けて中に入る。

 

「操縦の仕方、分かる」


「なんとなく」


 さすが、ハワイで親父に習ったのかな。


「行きます。ーー飛びます」


 ん、あれ、戦車じゃないの、これ。

 あ、目の前の人たち、どいてください。ここは滑走路です。

 ズキューーーーンッ。

 わたしの心臓が止まりそうな音。つんざく空気の音かも。

 自由がないことの恐怖を知りました。X^2の放物線のような急激な上昇。

 サメ、飛ぶ。空のトビウオとは、わたしのこと。


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