真剣でわたしはサメしない
鯉に餌をあげながら、老後の生活をゆっくりしながら、婆さんや、爺さんや、としていたいけど、まずスローライフの店舗資金がありませんでした。わたし、あんなに頑張ったのに。ヘビ一匹倒しただけ。
でも、ゲームだとやばっわたしのクエスト報酬低すぎっ、となっても、異世界だと、A級モンスター討伐で金貨ズッシリ、もう二度と働かない、となるでしょう。
そういうことです。
都市アズールという拠点に戻ってきました。ドラゴン?ああ、頭の上にいます、ミニバンが。腐食龍?うん、触らぬ神に祟りなしって知りませんか。
「お姉ちゃん、そんなに儲かったら、みんな冒険者だよ」
くっ、冷静になれば、そうか。シェーラちゃんに、バッサリと切られた。
儲かるところにはみんな集まる。バブルに群がるハエ。
閃き1秒。
「アーマーを売ればいいんだ」
『非売品です』
なんかポップした。わたしのインテリジェンスウェポンがサメすぎる。自動販売機になってくれないかな。剣でもいい。
沼地に埋めてきてやろうかな。アーマなしアーマーズ・ワールド・エボリューション。裸装備で、散る。
先立つものがなければ、なにもできない悲しみ。
わたしは、きっと、この世界で、馬車鮫のように働くしかないんだ。まぁ、日銭稼ぎで、小さなモンスターを倒してれば安全力も高いんだけど。
「ログアウトしたいだけなのに」
「お姉ちゃん、ログアウトしたいの」
えっ、なに。まさかNPCさんログアウトという言葉をご存じで。まさかゲーム世界の住人にそんなことを訊こうとは思いもしなかったよ。
「ログアウトは、――――――――」
いやいや、聞き取れないのだけど。システム、おい、何をしている。
「パードゥン?」
「え、なにか話してた」
シェーラちゃんさん、そんな怖いこと言わないでよ。ホラーゲームになり始めてませんか。わたしの近くのNPCの挙動がおかしくて、わたしの心臓が食べられそう。
「ログアウトについて、詳しく」
「ログアウトってなに?」
パクパクパク――、金魚のものまね。
ヴァージョンアップでも入りましたか。ゲーム世界の雰囲気が壊れないように。うんうん、いいアップデートだよ、わたしが、ログアウトできない状態でなければ。ゲームの世界観を守るというのはね。
「シェーラちゃん、思い出して。ワシントンの首都は、このボールペンの芯を出してみて?」
「お姉ちゃん、なに言ってるの」
ニード・ノットゥー・ノーっと。
うん、知る必要性のあることなんだよ。
わたしにうたれた麻酔銃の麻酔力が強すぎて、永眠しちゃう。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
おい、見てるんだろう。このデスゲームの主催者。こんなシークレットなゲームにぶち込まれても、わたしは、最後まで諦めないぞ。賭博でもして、楽しんでいるんだろー。もうとっくにオワコンのデスゲームのお約束。
「脳内ログに反応なし――」
いや、反応があっても困るのだけどね。
見られていると知ったら、もうお風呂もお手洗いもいけない。暗がりが心地よくなるよ。
「お姉ちゃん、地道に稼いでこう。それで、えっと、お姉ちゃんはお店が欲しいの」
「――うん、そうだよ」
マイホームは、みんなの夢だよ。
「えっとね、稼ぎがいいクエストは――――」
わたしは、うんうんというボッドになって、シェーラちゃんの資金調達のための効率のいいクエストに流されるままになった。いくぞ、流され川ガール。
「火山地帯は、いい金策場所だよ」
シェーラちゃん、実は、わたしを殺害するためにあの手この手をしているけど、失敗しただけ的なパートナーじゃないよね。
サメはね、火山を泳ぐようにはできてないんだよ。暑い暑いです。
というか、なんで、こんな場所で暮らそうと思ったんですか。
街に、入りまーす。




