サメラハード
砂漠の世界から無事帰還したわたしは、やっと、沼地に辿り着きました。沼地、なんて遠いところなんだ。今度はちゃんとワッフルに乗りました。シェーラちゃんもシューベルトに乗ってついてきてくれてます。危なくなったら、すぐ逃げるのだよ。命を大切にしないやつなんて大嫌いなんだからね。
「ここが沼地」
カラッとしていないドップリとした踏み込みたくない湿地帯。暗い中に枯れてないような枯れてるような不気味な木々。
えっと、都市アズールの位置、もっと立地のいい場所にしない。こんな薄暗いところが大都市の近くなんて。
「お姉ちゃん、一回来たんだよね」
「う、うん」
嘘吐きパラドクスしないようにしないと。嘘でがんじがらめにならないように。
というか、これ、どこで寝泊まりしてるの、みなさん。キャンプ地ないですか。ここをキャンプ地とする、ですか。女性のデュオキャンプはもっと安全系の中でお願いします。
「お姉ちゃん、こっちだよ」
あ、シェーラちゃんに手を繋がれる。
うわー、土を踏む靴の音が、グッチョリグチョリと。
「沼地の古城、アカツキです」
あー、このバベルの塔ですか。トーキョーでもないのに。
途中から見えてはいたけど。ドテカイ塔が建ってるなぁと。
ここで生活しているのか。中国の円形住居みたいな感じかな。超高層バージョンだけど。
「この塔から双眼鏡で探せそう」
「ジャバスクリュースネークは普段は洞窟にいますよ」
沼地、洞窟、見つからない、うっ、頭が……。
「お姉ちゃん、どこの宿に泊まってたの」
「野宿です」
「……お姉ちゃん」
わたしのお姉ちゃんポジションが崩壊してそうな気がする。
嘘をついたせいで、逆に見栄がなくなりそう。砂漠に間違って行っちゃったの方がマシかも。かもかも。
アカツキの塔は、一階は誰も住んでないようだ。シェーラちゃん曰く、洪水のときに浸かるかららしい。
沼地で洪水とか大丈夫なのかな。わたし、絶対、ここを拠点にしない。砂漠の方がマシです。
宿屋《沼ッティー》
わたし、ここで沼ることだけはしたくない。絶対に。
マナティーを見に行ける海だけはわたしの故郷。というか、砂漠と沼って、海はどこ。
まぁ、水中戦はゲームでの操作は難しいのが多いから、後だよね。まさか雪山が先で雪中行軍しないよね。そうなったら、「天は我々を見放した」と叫んでやろう。
宿屋で二人部屋を取って、部屋でわたしは見事な裸体をさらして、着ぐるみを着用した。サメのアーマーさん。
「サメ、泥沼につかりいく」
「お姉ちゃん、すごくイヤそう」
わたしのキューティクルが痛んじゃうもん。
というか、なんでわたしはジャバスクリュースネークなんてものを倒さないといけないのだろう。
まぁ、いっか。
ゲーム内での泥ぐらいかぶってやろう。
洞窟内で終わらせたらいいのかな。
ビチャビチャ。
うん、サメのアーマーさんに泥がつかない。
おかしいな。血だったらバンバンつくのに。
まぁ、いいけど。小さいことは気にしない。
【砂水泳】が使えそうな直感がするのだけど。
ちょっと待って。わたしは伏線を回収しないことに定評がある回れ右女の子。危険に気付けば逃げろの原則。
ピチョン。
うん、浸かれた。
疲れた。
これは、泥湯。これは泥湯。
ゲーマー、やれそうだと、やってみちゃう。
まぁ、抜け出せば、綺麗な鮫皮だから大丈夫。
え、ミミズ?せめてドジョウかドンコとーー。
サメが沼を泳げないと思ったかっ!




