サメ、ナンパされる
only down!が始まりそうな予感を、じんわりと感じながら、絶対に潜るものかと固い決意で、海に潜るのがサメなのだ、と、ワクテカで観光していました。
喫茶店で一服して、砂漠で儚げなワンピース姿の少女が歩いているとーー。
45歳の少女がナンパをふりほどいて、「お姉ちゃーん」と抱きついてきた。
鬱だ。
一回使い切りでお願いしたかった。エコ、リサイクルーーうんうん、一度登場して満足してよ。
「クリーングオフで」
「なに、それ」
絶対、厄介ごと、イベントの連鎖だよ、これ。砂漠の奴隷商人にカチコミ展開とかだよ。
それよりも悪役令嬢を素直にして、猫可愛がりルートとかないですか。ほら、わたしをペットにしたいイケメン公爵とかいない。辺境で変なアーマーを着てしまった可哀想なイケメンキボンヌ。え、死語だって。いいんだよ、古の言語を発掘してるだけだから。
「可愛いお姉ちゃんだな、君も一緒に遊ばない」
「無関係です。この子は知りません」
「わ、わたしを深夜の砂漠で裸にしたくせにっ」
路上で、無茶苦茶に人聞きの悪いセリフを叫ばれた。
うわー、見た目幼い腹黒女とか誰が得するの。
だいたい、絶対、盗賊で人殺ししている系少女でしょ。アウトアウトです、昨今のネット小説では悪を犯した人間は追放してざまぁしてグチャグチャにするものなんだよ。
まぁ、ゲームだし、FPSでキル経験なんてシコタマあるけど、わたしも。
「ナンパぐらい、首にナイフ刺せば解決でしょ」
わたしは、シェーラちゃん専門です。ロリコンじゃない、たまたまついてきたNPCがロリだっただけだ。
「そんなこと街中でできるわけないでしょ」
「だったら、わたしも一緒だよ。街中で、食べろっていうの」
ギャーギャーワーワーと言い合いをしている間に、ナンパは身の危険を感じたのか、フェードアウトしていた。
うん、わたしも関わりたくないと判断します。
「で、なにやってるの、こんなところで」
「働き口がない」
いやいや、女の子には最後の武器が……、トランスエイジが45歳でも見た目は幼女。これは、マニアな人にはいいかもだけど、ダメか。
「冒険者でもやればいいんじゃない」
わたし、ゲームの中で職業を薦めるハロワーカー。
美少女なのに強いとかだったら、マニアな人には以下略。
「アーマーがない」
ああ、アーマー頼りさんですか。
え、わたしも一緒?そうですか。そうですね。
わたしにどうしろと。わたし、この都市に昨日来たばかりで、人脈もないし、人脈どころか、このゲーム世界の常識もない。
壊さなきゃよかった。
変態アーマー滅ぶべし、とベゴシャンとぐちゃぐちゃにしちゃたけど。
「アーマーって、どこで手に入るの?」
もう流れにのるよ、アーマーを手に入れて、無理やり、なんでも帰させてやる。TSしても知らないからね。安くて呪いのアーマー的なやつを手に入れてやろう。
なんでわたしがそこまでしないといけないのか、全くこれっぽっちも分からないけど。
「アジトに一つあってーー」
ああ、うん、いい展開。盗賊のアジトに、お宝が溜めてあるのね。で、それは砂漠のどこかと。
「サイロの、9.4階層の3番線のどこかなんだけど」
なんだか、サイロが絶望的に広そうな予感を感じる。実感はしたくない。
「では縁がなかったということで」
「うぇええええええええっっっっーーーん、お姉ちゃんがいじめーるぅぅぅぅぅぅっっっっっ」
周りがガヤガヤとし始めた。
なんてズルいんだ、幼女。泣けば勝てるなんて。
てか、アジトの場所ぐらい知ってないの。
「だって、それぞれ勝手に隠してるから。ほら、仲間といっても、盗賊だよ。正確な場所までは教えないって」
それ、死んだ盗賊の盗んだ品を盗むってことでは。
サイロの大穴に突き落とした方がいい気がしてきた。45歳まで生きたら満足じゃない。盗賊にしては長生きじゃない。
わたしは、明日、一緒にサイロに潜ることを約束した。
それから、わたしは寝て、朝の馬車にのって、都市に帰った。
絶対に自分の要望が叶ったと思った相手を追いていく、なんて気持ちいいんだろう。
犯罪者ルートはごめんなので。さよなら、砂の都市。
砂水泳は意外と良かったよ。




