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サメ、現地少女を手に入れればいいんだよ


 「この門をくぐる者は一切の望みを捨てよ」と言われそうなクジラの顎に入ると、エロイムエロッサムなお姉さんがいました。エッサイムだって、知ってるよ。四月に学びました。

 

「砂漠で過ごすと胸が大きくなるんですか」


 わたしはゲーム世界だということを最大限利用して、フランクなジョークから入った。現実でやるとセクハラですね。

 西瓜が二つ。みずみずしい。


「ここは宿屋ですよ、そういう店はーー」


 うん、そういう店を紹介された。

 まぁ、ゲーム内の胸の大きさなんて製作者の性癖でしかなくて、具体的な理由なんて基本あるわけない。設定が破綻していようが、だからどうしたと開き直られるのがオチ。歪んだ胸のユートピア。

 

「一泊させてください」


 わたしは、財布から銀貨を三枚出した。

 水の値段から推測した。お釣りよ、かえってこい。釣りは必要だぜ。

 そうしてわたしは相場を理解する。


「一枚で十分ですよ」


 あー、ぼったくりバー。

 観光客に、水一杯を高額で売りつける、サイテーだ。

 そりゃ砂漠に来たら喉も渇くし、高くても、水は貴重だし、そんなものかと思って出しちゃうよ。


 こんなところで世間知らずでウブで純情で可憐なサメっ子がいたら、最高のカモになってしまう。暴力だー、で食べて解決していいならいいけど。マミるぞ、マミっていいのか。


「ちなみに、一泊は何円ですか」


「エン?」


「なに通貨単位ですか」


「お嬢ちゃん、通貨単位も知らないと、ぼったくられるよ」


 お姉さんに優しく正論を諭された。


「これが1バイト、これが1メタ、それに、1ギガ」


 うーん、通信料金を思い出させる値段。

 銀貨は1メタと。銅貨は1バイトと。金貨は1ギガと。


「ちなみに水は、一杯なんバイト?」


「5バイトあれば、普通のサイズの水が買えるわ」


 わたし、いったいどれくらいボラれたんだろう。

 交換レートをきかないでおこう。まさか100バイト=1メタじゃないよね。やめて、わたしは、このオアシスで財布の紐を締めます。

 

 自分の宿の部屋に案内されて、砂が吹き抜ける外を眺めていると、ポンと勝手にウィンドウが開いた。


『【砂水泳】 取得条件、砂に埋められて1時間過ごす』


 うん、いらないぞ。

 どこの少女が寒中水泳を超える砂中水泳をしたがるんだ。

 泳げても砂だらけの身体とか最悪だし。


『【砂呼吸】 取得条件、砂水泳を5km行う』


 あはは、砂に潜らせようとしているな、鎮まれわたしのアーマー。

 モグラじゃないんだから。だいたい砂の生物じゃないから、視界を塞がれたら、何もできないよ。

 電流感知で応用できますかね。でも、砂漠水泳なんて暑そうだし、イヤでーす。


 わたしは、ここから出ない。寝る。




 はずだったんだけどなー。

 人生の道半ばにして正道を外れてしまったわたくしは、気づくと、夜の砂漠で砂に埋まっていた。サメの装備を着て。

 なぜって。

 わたしはフラグというものを理解しているから。

 きっと、このまま朝を迎えれば、何か理不尽なイベントにあうに違いないというゲーマー的判断。初回砂漠都市特典。

 必要なスキルはさっさと取っておく。

 ああ、まさか、砂の中の行軍とはなー。ロンメルなんて所詮砂漠の狐、砂漠の鮫には勝てないだろうなぁ。


 そういえば、砂漠のパスタは美味しかったなぁ。

 夕食は食べましたよ、宿で。そして恥ずかしいから、夜に砂漠風呂。

 

 1時間。砂漠の美しい夜空に綺麗だなぁ、という漠然とした感想のみを思い浮かべているうちに【砂水泳】を取得した。

 さて、泳ぐか。

 砂漠を5キロ泳げば、わたしはムキムキじゃないかな。

 水の前に、砂を泳ぐサメさん。


 バシャバシャ。

 嘘です。もっとズシャヴァサヴァッサと砂が舞う。

 でも、なんか、アーマーの顔の部分まで覆いが完全に塞がってきたので、砂で苦しむことはないようだ。呼吸の必要性があるから、一定程度泳げば、ガバッと起き上がるけど。息継ぎを上手くするのは無理です。

 徐々に楽しいなんちゃってバタフライ泳法。


「サメさん?」


 そして、わたしは、砂漠の月夜で、岩盤に座っていた少女と出会った。

 こんな砂漠でもサメという存在は認識されているのですか。


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