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サメは、ドジョウではない


 八岐大蛇の八分の一程度の存在を倒しに、わたしは、サメのアーマーをかぶって出立した。

 邪竜ではなく蛇竜退治だ。竜ではないだろうけど。

 シェーラちゃんに蛇化現象していたけど、可愛らしい村娘は、都市に置いていきます。

 現代の戦乙女は、着ぐるみをかぶる。ログアウトしたいわたしはサメをかぶる。

 まぁ、馬車に乗るから、今は脱ぐけど。


 

 ここが、沼地。

 

「・・・・・・・・・・・・」


 カラッとした太陽が天にあって、砂はサラサラしている。朝と夜の寒暖差が激しそうだなぁ。


「乗る馬車を間違えました」


 現状報告を一人で虚空にした。わたし、なにやってるんだろう。沼地に来るつもりが砂漠に来ました。

 サメ、沼地より似合わない場所に出現。まぁ、砂サメとかかっこいいし。

 サメにとっては、ビーチも海の中というもの。

 さて、それで、ヒレだけだして、どうやって呼吸しているのだろう。

 やらないよ。


「まぁ、帰りの馬車を待てばいっかぁ」


 わたしは、砂漠のバス亭の――馬車亭の時間を確認する。


 【一日一本――午前中】


 うん、今度から、シェーラちゃんに、お見送りをきちんとしてもらおう。宿屋においていったらダメだ。きちんと入場券を買ってもらって新幹線のお見送りまでしてもらおう。

 クジラの子供たちは、砂の上で歌っているらしいけど、サメの子供は、とにかく近場のオアシスで昼寝をします。


 ザバァアアアアアアアアァァァァンッ。

 ん、遠くで砂漠の砂が海の水のように、巻き上がっているよ。

 真っ白なクジラのような、どこかのジエンさんみたいなのがいますが。大きな角がイッカクのようです。

 白いクジラの魚影はすぐに砂の下。

 

 うんうん、見なかったことにしよう。

 大丈夫、サンドワームではないし、倒す蛇の代わりにもならない。

 これは、きっと豊穣の象徴で砂漠ではよく見る観光資源に違いない。

 いやぁ、いいものを見た。イルカやクジラを豪華客船から見るようなものだよ。オアシスの都市部は、きっとモンスター侵入不可領域でしょ。


「さて、ファンタジーでありがちな砂漠の都市観光だー」



 さっそく、馬車亭からオアシスに行って、わたしは問題に気づいた。

 シェーラちゃんから、これで足りるよ、と言われて渡された旅費代が分からない。

 うん、今度から、どこにでもシェーラちゃんを連れて行こう。危険からはわたしが守ります。

 そういえば、わたし、このお金をどうやって管理すればいいのだろう。宿屋においていくしかない。


 だって、サメさんポーチに入れれば――。

 小銀貨、大銅貨、小銅貨らしき硬貨をサメさんポケットから出し――、バキバキ、うん、サメさんポーチから出すことはできない、ということになる。

 なにも持てないサメの姿の不便さ。サメに両腕があれば、世界最強の生物なのに。

 

 とりあえず、オアシスで水を買おう。喉が渇きました。

 小銀貨一枚だった。

 落ち着きました。


 ここは、一つ、ワンピース姿でずっと宿に引きこもり、最速で都

市に帰ろう。そうしよう。

 一度でもアーマーを着れば、わたしは詰む。

 いやぁ、沼地に行く前に気づいてよかった。

 そもそも、わたしは沼地からどうやって帰るつもりだったのか。

 ええ、サメであることを忘れるな。

 サメにはお着替えがある。衣服破壊だから、脱がないといけない。さらにポーチの中は自分の手でさわれない。

 ソロプレイして、黒の剣士はできないわけだ。


 まぁ、主人公だったら、ここで砂漠の主との激アツバトルなんだろうけど、わたしはオープンワールド必殺回れ右をする。

 迷い込みました、ちゃんと行けないように注意書きとか書いてください。沼地に行こうとしていることぐらいわかってるでしょ。

 


 宿《砂漠亭イサナ、61号店》

 わーい、すごいチェーン店です。61号支店なんて。

 まさか、60号店まで壊れた、とかじゃないよね。


 さて、クジラの形をした口から入りますかね。気分は、ピノキオ。

 だが知っているか。

 原作はサメだ。

 おっと、鼻が伸びてないかな。


「こんにちはー」


 イサナ亭のお姉さんは巨乳だった。

 サメは魚類。クジラは哺乳類。

 敗北は仕方ない。鼻の下が伸びてないよね。




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