サメは、雨天決行しない
シリアルなイクスペリエンス。連続する経験、雨が降っています。ログアウトに関する一連の実験することもない一日。
とりあえず、雨が止むようにてるてる坊主を吊るして、雨雲さん雨雲さんとあっち行けー、とサメなりの雨乞い逆バージョンをしたけど。
今頃、ドロンコになるガタリンピックのはずがーー。
宿の清潔な布団に寝そべって、もはやオーディオブックを越えて、疲れませんか、という気がしてきて、音読をやめてもらったシェーラちゃんを抱き枕にしていた。
「お姉ちゃん、そろそろ布団から出ないの」
もぞもぞとシェーラちゃん。
「だって〜、することな〜い」
晴耕雨読というけれど、サメ敗北海洋生物であって、そんな人間の生活の醍醐味なんて粗大ゴミ。
「お姉ちゃん、趣味とかないの?」
現状、ゲーマーはゲームをしているから趣味をしていると言える。
「小さな少女を愛でる」
ここにいたらロリコンになりそうだよ。幼女のヒモ。
あっ、海外は児童ポルノに厳しいから、バンされたりする?
バンしていいよ、そして、わたしをログアウトさせて。
よーし、シェーラちゃんとR18……ってダメだよね。もしログアウトできなくて性犯罪者ルートとかに行ったら、わたし、どう生きれば。
「お姉ちゃん、他の趣味を見つけた方がいいよ」
冷静な対応。
もちろん、そんな趣味は人間の美少女イケメンをみて、目の保養をする程度しか持ってないけど。
ただ暇つぶしの手段はゲームと読書ぐらいしか持ってないインサイダーなんだよな。インドアにラムネの青春なんてないんだよ。
この世界のやり込み要素ってなんなのだろう。
別に雨の日に宿にいたほうがいいほど、雨の嫌な触感があるゲームではないけど。どうせ風邪もひかないし。わたし、サメだし。都合のいい時はサメ。
うーむ、なにかなにか、ゲーム内の暇つぶしと言えばーー。
「スロットっ!!」
「お金は大切だよ」
間髪入れずに反対された。
あー、財布のひもが完全に握られていた。
勇者様だって魔王を忘れてカジノに足繁く通うものなのに。エンドコンテンツがメインストーリーを破壊。そのままカジノエンド。
「わたし、シェーラちゃんのモヤシ料理好きだよ」
「つ、作ったことないよ」
ダメだった。やっぱり。
うーむ、折り紙でもしますかね。
だまし舟を折るのが、雨の日の基本。そして、晴れた日にはカメラでも持って空の写真でも撮りに行くのだ。
「折り紙でもしよう」
「折り紙?」
皇女殿下も折っていたんだから、いわんやサメをや。
海の王が先に動いてあげようじゃないか。さぁ、ついてこい。
「お姉ちゃん、不器用なの」
違う違う、間違っているぞ、シェシェーラ。
手先は、そんなに不器用じゃない。オタク、手作業する。
ゲーム内のせいか、なんかズレてるだけだもん。
「サメだからね」
「キュイッ」
ミニリュウが完成された鶴を見せてきた。
上手い。
無駄に上手い。
「キュウ」
踏み潰した。わたしの下手くそな折り紙の鶴を。
証拠隠滅。
そして、わたしの目の前に、ミニバンが作った鶴を置く。
「お姉ちゃん、バレバレだよ」
わたしの指示じゃないから。
だいたい、鶴は救えても他の折り紙達は救えてないし。
下手な手裏剣やだまし舟や花や魚は残ったままだよ。




