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サメ、陸にあがっている


 シェーラちゃんとの夜の生活は最高だった。少女に本を読んでもらって寝かしつけてもらうという日々。とてもではないが、見せられないよ。シーンはスキップするためにある。五日が経ちました。けれど、どうもこの世界は、まだわたしを手放してはくれないようです。誰もログインしてきません。

 あ、そうだ、ウルフの名前は、ワッフルになりました。かっこ悪い? いえ、カワイイです。犬はわっふーともふるものだから。


 ええ、そして、もちろん、わたしはログアウトできてません。このゲームはいったい、どこからログアウトさせるつもりなのでしょうか。まさかログアウトポイント的なものがどこかにあるのでしょうか、それとも実はまだチュートリアルでログアウトできる段階まで進んでいないとか。

 古のゲームはログアウトやセーブ不可能な長時間イベントがあったとは聴きますが。クソゲーオブザイヤー三年連続受賞。殿堂入り。

 



 そうこうしているうちに、わたしは、犬にネックレスと名前をつけて、そして、日銭を稼いでいる労働者となりました。日雇い労働のようなゲーム生活。冒険に出て、ちょこっと討伐してギルドからお金をもらう。ただそれだけの繰り返し。最後はシェーラちゃんの読書子守唄で、ぐっすり。

 これが清く正しい異世界系主人公だな。とりあえず冒険者。まぁ、実際、他の職業の自由度がなさすぎるし、ゲームには向かない。

 でも…………。

 ダメだ!!

 これだと、このゲーム、きっと進まない。時間が過ぎると発生するイベントを待っていたら、ログアウトはいつになることやら。

 偉い人は言いました。苦労は買ってでもしろ、と。寝ているうちの果報なんて、きやせんのですよ。



 ということで張り切って、激ムズなクエストを受けることにした。事務作業は全てシェーラちゃんに丸投げだ。クエストランクも知らないし、クエスト報酬も知らない。

 全部適当に見繕ってもらってる。適材適所だね。文字が読めない異世界系主人公のごとく。

 ゲームっていうのは難易度の高いものをクリアすれば勝手に進むものだし。



「でー、シェーラちゃん、なにを倒せばいいの?」


 わたしはギルドの外で待っていた。フォーマルな場所にいるのは疲れるし。ミニリュウさんを頭にのせて、ぐでぇと喫茶店のような場所で、ヒレを伸ばしてーーいや今はワンピース姿だった。


「ジャバスクリュースネークです」


 おお、もはやパイソン以上に、パイソンしてるよ。意味不明だよ。ジャバジャバだ。はい、プログラマーの悪ふざけぇ。コーヒーが美味しいねぇ。どうせトグロでも巻いてるんだろうなぁ。


「じゃあ、行ってくるよー」


「まだ場所も説明してないよ。討伐対象の説明も」


 ああ、どこにでも行くよー。足はあるからね。わたしのアッシーくんはワッフルだよ。モフモフしたいけど、都市のなかはダメなよう。


「沼地だから気をつけて。かなり動きが速いみたい。それから服を溶かす酸を口から出すし、キバは猛毒」


 まぁ、典型的なヘビのモンスターだね。蛇の道は蛇。鮫の道は鮫。

 毒耐性ないし、ノロいし、わたし、これキルされない。

 難易度上げすぎて、初見殺しの新人殺しされない。

 まぁ、死ねばログアウトできる可能性も微レ存。


「わたし、この戦いが終わったら、サメ婚するんだ」


「えっ……と。サメ……コン?」


 理解されない死亡フラグを立ててだけだった。

 あからさまな死亡フラグ、実は生存フラグの法則。

 それで、サメ婚って何だろう。一生、アーマー生活のことだろうか。自分で言っておいて、理解してません。


「ごめん、適当なこと言いました」


 対話エンジンに理解不能なことを入力させてしまいました。

 サメ、早々に、都会から出る。

 まぁ、現実でも都会にいながら、家にずっといたし、結局。

 さぁ、行くぞ。こんな場所に居られるか、わたしは自分の家に帰らせてもらいます。


「ちょ、ちょっと。待って待って。雨が降りそうだし、明日にしようよ」


 ああ、うん、天気が味方してるよ。

 『加速(水中)』が機能するかもだし。

 土砂降りの沼地で戦ってくるね。

 絶対、リアルじゃやりたくないけど。


「シェーラちゃん、女の子には行かないといけない時があるんだよ。大丈夫、わたし、雨に濡れても気にしないから」


「お、お姉ちゃん。ジャバスクリュースネークは雨だと強くなるんだよ」


 じゃばじゃば……。

 ぴしゃぴしゃ、ぴしゃぴしゃーん。

 あ、降り出した。振り出しに戻りたい。



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