サメ、寝るには早い模様
サメは眠らないという噂もあるそうですが、泳ぎながら寝るのです。マグロと一緒。人間の睡眠と違って、自動操縦モードみたいなもの。活動を抑えて、まったりと泳ぐのです。
噴水孔のあるサメだったら、獲物を待ち伏せて止まれるのですけど。
まぁ、まだ寝るには早い。
美少女にオーディオブックを読んでもらうのは、夜。シュラーフェンには早い早い。
「お姉ちゃん、首輪買いに行かないと」
忘れている人がいるかもしれないから、言っておくけど、ミニリュウの話。わたしに首輪をつけるなんてことはないからね。ああ、ログは貯まる、されど出られず。忘れている人って誰だろう。
わたしの頭の上にずっとのってるこの小さなワイバーン。売り払ったら、ログアウトまで資金で困らないのではないか。まぁ、ペットを売るなんて、シェーラちゃんの情操教育に良くないからしないけど。NPCも生きてるですよ。
「お姉ちゃん、そういえば名前は付けてあげないの?」
ああ、そっか。名前か。
名前検定8段の実力を持つわたし。忘れている人がいるかもしれないけど。
ミニリュウとワイバーンを足して2で割って、ミニバン。
「いいかい、君の名前は、今日からミニバンだ」
「キュイ」
『ミニリュウの名前が、ミニバンになりました』
おお、ちゃんと付けれたようだ。
小型と見せかけて大型と見せかけて小型。バンが大型だから、ミニをつけても、まだデカいというオチ。前半に引っ張られたり、インパクトのある言葉に騙されてはいけないのだ
サメでも美少女の場合があるように。
「ミニバン。可愛い名前で良かったね」
ん、シェーラちゃん。わたしが可愛くない名前をつけるとでもお思いでしたか。ミニガンとかにすべきでしたか。こんなピクシーのようなドラゴンに、物騒な名前はつけないわけですよ、すよー。
シェーラちゃんは、わたしの頭の中の思考を無視して、犬猫のようにミニバンをこしょこしょしている。
「首輪ってお高くないんですか?」
人生、カネである。ゲーム世界でもマネーがストックされてないと何もできない。ワイバーンの首輪、高そう……相場を知らない庶民。
「うーん、そうですね、そんなに高くなかったはずですよ」
現実だと、ドラゴン用首輪とか特注レベルだけど。まぁ?ゲーム世界だし、ただのアクセサリーレベルか。装備の付与スキルもないのだろうし。
さぁ、ドワーフ的な工房へ行こう。
鍛冶屋だよね。なんてったって、アーマーが育っていくゲームなのだから。強化もなく勝手に進化していってる謎アーマーだけど。
「ちょうど、そこの魔法具屋で売ってると思うよ」
あれ……。
もしかして、ファンタジー世界でしたか。剣と魔法の世界。まぁ、小物だしアクセサリーだし、その辺の店で買えてもいいのかな。
魔法があるならば、もっと発展してよくないですか。原始共同体みたいな村を見るかぎり。お値段もお安いそうなのに。まぁ、その辺は、ゲームプレイヤーのための親切設計部分なのかもしれないけど。図書館も立派だったし。
ザ・ファンタジー魔法具屋の前。雨の日とか濡れまくりそう。魔法障壁でも出るのかな。建物の形はもっと考えたほうがいいですよ。デザイン性に振りすぎている。いい具合に歪んでいて、不安を感じさせる作り。暗めだともっとおどろおどろしい感じになりそう。
「お姉ちゃん、どのネックレスにする」
首輪ってネックレスなんだね。知らなかった。もっとゴツい奴隷ハーレム物のような、イカツイのを想像してました。
ファンタジーだったら奴隷紋のような紋章系もありかな。まぁ、ペットは家族なんで、首輪も可愛くないとね。お洋服もないかな。もう十分モフモフだけど。
「あれ、そういえばウルフの首輪は?」
わたし、つけた覚えがないようなーー。
「…………」
「シェーラちゃん?」
「は、はいっ!?」
ああ、ゲームシステムが、若干緩んでるよ。ミニリュウがペット枠なだけかもだけど。
「たぶん、大丈夫なのかな。街中には入れてないし」
「そ、そうだよねー」
今度、付いてきた二匹にもつけてあげよう。
あっ、名前もつけてないよ。
シェーラちゃんは、どうなんだろう。一匹はシェーラちゃんの小さめのウルフなんだけど。
「シューベルトですよ」
なるほどドイツ語はカッコいいからね。
付けてた。わたしもカッコいい負けない名前を思い付かねば。
ポクポクポク。
ん、なんだか視線がーー。
店の魔女チックなお姉さんがジロジロとコチラを訝しげな視線で見ていました。
すみません、ネックレスが先でした。店前で、商品を見ずに何やら考え込む変な少女。
緑色の球状の宝石のような物が付いているネックレスにしました。水色に似合いそうだし。
ちなみに、お金の管理は、全てNPCに任せています。未だに通貨単位を知りません。そろそろ知っておこうかな。




