サメ頭なんで
どうも、サメです。サメのようなものです。
殺戮の音が遠く、平和な暮らしを求める美しい少女です。
現在、トリプルヘッドのように、三つの目的を持っています。
一つ、ガラスの花のように、この世界を壊して出ていきたい。ベッドで寝れば帰れませんか。ベッド爆破の前に、ベッドがないのですが。
二つ、とりあえず勉強をしよう、学生の本分としての日常を忘れないように。
三つ、デバフのない、別のアーマーが欲しい。
分かりやすく整理されました。シックスヘッドにならないことを。目的は解決されず増え続けるのかもしれないが。
ま、そして、手段として、とりあえず、マネーが、いるわけです。
よし、銀行を襲うぞー、陽気な海のギャングだぜ。え、それは、シャチやウツボだって。細かいことはいいじゃないですか。地球が回っていようが太陽が回っていようが。
ギルドーー。
大きな都市ともなると、さらに場違いな建物になりました。荒くれ者が行く場所とは思えないほど、端正で美しい建物。白い巨塔。なんで、このゲーム、ギルドがフォーマルなんだろう。面倒がなくていいけど。ヤクザな冒険者に絡まれるイベントなさそう。
「そういえば、この都市の名前は?」
わたしは白い階段を、ワンピース姿で登りながら言った。
「アズールですよ。お姉ちゃんって、陸に上がったサメみたい」
それは無知すぎるということ……。
さかなー、だから仕方ない。仕方ないんです。
頭が悪いわけではないんですよ。
「とりあえず、だいたいの情報がギルドにあるので、学校も調べてみますね」
思ったけど、ギルドって複合なの。傭兵ギルドとか冒険者ギルドとか商人ギルドとか、まとめて全部この建物ってこと。だから、デカくて立派というーー。
ああ、わたしは無知なサメ。攻略動画でも見ておけば良かった。まぁ、そんな楽しみを削ることしないんだけど。
階段を登り切って、白い扉から中へと入る。吹き抜けのエントランスに、キッチリ着飾った受付嬢がいる。大企業のフロントですか、ここ。
「冒険者ギルドは、二階みたい」
「解体とか素材とか、どうしてるの?」
「別の場所ですよ」
いったい、このフォーマルな場で、どうやって魔物を扱うのかと思ったけど、至極当たり前の解答が返ってきた。
たしかに、別に、ここでやる必要のない作業だ。
シェーラちゃんは、二階の前に、一階の奥の掲示板を眺めに行った。わたしは場違いな場所にポツリ。現実だったら、絶対ジロジロ見られて、何か尋ねられそう。
シェーラちゃんを目で追うと、掲示板から入口とは別の受付嬢の方へ。
ここまでNPC任せでいいのだろうか。放置少女。
「ホワイトヘッド学園の入学が近いみたい」
ちょこちょこと、動いていって戻ってきたシェーラちゃん。こんなに便利な少女がいていいんですか。一家に一台、美少女NPC。
「何の学校なの、そこ」
「純粋魔法理論です」
なるほど。絶対、わたしには不可能な学校みたいだ。もっと、ゆとりのありそうな学校を所望したい。
わたしは、この世界のゲーム上の魔法の仕様なんて、そこまで興味ないです。というか、ガチガチに魔法理論とか体系化されている世界なんですか、ここ。アーマー勝負じゃないんですか。魔法なんてオマケでしょ。
「冒険者の学校とかないの」
「えっと……なんですか、それ」
きょとん顔……。
ああ、大学レベルしかない世界だったり。たしかアメリカ人も大学からまず作ったみたいだし。小学校や中学校なんて普通後回しだよね。義務教育なんて存在しない象牙の塔。学問なんて貴族の道楽。
「図書館にしよう、そうしよう。自学自習、これ大事」
「お、お姉ちゃん……」
呆れないでよ、シェーラちゃん。
合理的に考えた結果、行き着く結論だから。




