サメは、剣を帯刀する
サメです。
最近は、めっきり見なくなったサメです。
今は、剣を腰に差しています。
え、ワンピースのどこに差すんだって?
もちろん、ベルドも買いましたよ。
おかげでAラインのワンピースなのに、わたしの貧相な体型が隠せずに、綺麗なウエストがバッチリです。サメではないので、ちゃんとくびれているわけですよ、これが。
まあ、でも、貧相なんですよね。
村娘の服に、ショードソード。いかにもかけ出しって感じです。いや、駆け出し冒険者よりも悪いかな。これでゴブリンの巣とか行けば、もちろんスレイヤーされます。まあ、ゴブリンなんて、中に火球をぶち込んで蓋を閉めれば一発ですけど。
え、火魔法ないじゃんって。
ないなら、仕方ない。水責めだ。
「お姉ちゃん、楽しそうだね」
「ふっふっふ、剣って落ち着く」
「お姉ちゃん、戦闘狂なの」
バーサークモードは、子供には見せられないよ。【血の忘我】は一生つかわな方向で。
あれ、そういえば、スキルって、なんだか良くないのもあったよね。レベルアップで変なの取ったりしないよね。
「装備【メガロドン】は、【武器破壊】を獲得しました」
なるほど、時間差ですね。
【衣服破壊】も覚えたもんね。
これって、相手の武器じゃなくて、自分の武器を破壊するんだよね。あはは、なんだか、【メガロドン】さん浮気に厳しいよ。そんなに着て欲しいのか。
着ないよ。
猫耳メイドにもならないよ。
ウェイディングドレスなら考えてもいい。空中を飛べるならーー。
「シェーラちゃん、わたし、武器破壊を覚えたみたい」
「えっとーー」
「アーマーを着ると、もれなく武器が壊れると思う」
「はい。じゃあ、ワンピースと一緒に預かりますね」
「うん」
要介護者の陸上のサメ。
もうワトソンくん無しでは生活できないよ。この世界が丸かろうが、平らであろうが。
「娘さんを、わたしにください」の準備をしておこう。この世界はジェンダーフリーかな。海外ゲーだしオッケーだよね。
え、サメとは、さすがに無理?
まあ、魚と交わる、と書いてサメだからいけるでしょう。
ちなみに、人偏に交わるではーー、ん、狡ではないから、あれ、こんな感じあったかな、佼?
ま、いいや。
「今日のご飯はなにかなぁ」
もうね、飢餓のデバフはやばいわけですよ。
魔物をモシャモシャ行きたいけど、シェーラちゃんの前だったし。我慢に我慢。
お腹はギュルギュルなんです。ダイエット中の女子のようです。アーマーを脱いで、剣を買った高揚感で忘れていたけど。
「ギルドに食べに行く?」
「行く行くー!」
最近、難しいことを考えるのをやめています。まあ、いつか出れるだろうと、このデスマーチから。そう、わたしは長い夢を見ているに違いない。
ギルドに初めて入る。とても綺麗です。なんだか、イメージが崩れます。こんな石畳みじゃなくて、木造でいいのに。気分はやはり郵便局や銀行に来たような気分です。カッチリしすぎですよ。
まあ、受付のお姉さんがピシッとスーツなんだから、こっちの方が自然なのかもしれないけど。受付嬢って、異世界物だと、一人やたらフォーマルで浮いているし。
まあ、食事だね。
シェーラちゃんについて行くと、二階へと上がっていく。重厚な階段を。大理石だよ。わたし、服装これで大丈夫なの。というか、Fランクで払える金額なのかな。
「大丈夫だよ。今日の魔物討伐の報酬はたんまりだったから」
はい、NPCに、金銭管理を任せるプレイヤーです。いや、正確には、わたしが持てないからです。持つとムシャムシャと言ってしまう可能性があるので。家計の管理は、少女に任せるに限ります。
まあ、かなり私が倒したけど、仲間は平等に報酬を分けるものです。じゃないと、いつかザマァされるかもだし。もう遅いとか言って、逃げられたら、わたしは、サメプレイから抜け出せなくなる可能性も。
レストランですね。
イタリアン風に見える。というかパスタです。麺類好きですね、この街。
パスタにお肉、それに赤いソース、ちょっとピリ辛。うんうん、悪くないよ。それで、もう一皿は、トンカツですね。まあ、豚肉なのかは分かりませんが。肉を揚げたもの。ジューシーで歯応えがーー、ああ、わたしの切れ味のいい歯。サックリといっちゃいました。
「お姉ちゃん、テーブルマナーちゃんとできるんだね」
疑われていたとはーー。
「シェーラちゃんも」
「わたしのお姉ちゃんがたまに、連れてきてくれたから」
あ、そうか。アーマー持ちって結構ステータスなんだよね。村からは遠いけど、何回かは来たこともあるんだね。プチ旅行。
「それで、サメのお姉ちゃんーー」
うん、なにかなぁ。
にへらぁ。
「ベヒモスに勝てますか?」
そんな思い詰めた顔しないで。「あれ、もしかして、ここでの食事は最後の晩餐?」って思ってしまうでしょう。
「お姉ちゃん、帰ってくるかな」
来る来るーー、お姉ちゃんに任せなさい。
どうやら負けられない戦いが、ここにあるようだ。
サメVSカメーー世紀の一戦だ。
ふっ、また一つ称号を増やしてしまうだろうか。




