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プロローグ


  むかしむかし、そのまたむかし。まだ神々が地上に干渉していた頃、とある邪竜の王が地上を支配していた。




 人々は言った。かの王は、傲慢であると。


 人々は言った。かの王は、冷酷であると。




 この世を恐怖に陥れる象徴。それ即ち、『魔王』である。







 






 現代、とある高校にて。

 


 見渡す限り山に覆われた校内の、無駄に広々とした運動場では、野球帽を被った数人の生徒が大会に向けて練習に励んでいる。


それを茜差す教室から見下ろして、元魔王こと、『田中健次(たなかけんじ)』は一人呟く。


「全くもって、平和ボケした世の中よな」


手の内でシャープペンシルなる物を回転させながら、窓の外から視線をずらした。

 

 教室内には、自分と数人の男女生徒のみが居る。他の生徒や教師は終業のチャイムが鳴るやいなや、早々に立ち去ったようだ。




 赤々と照らされた教室内を眺めていると、血塗られた荒野の景色と重なった。


「魔王、か.....」


 ふと目を閉じ、過去の自分に思いを馳せる。人々に恐れられ、畏怖され続けた前世。確かに自分は『魔王』と呼ばれていた。しかしどうだろう。勇者に討たれ、17年前、次なる生を歩もうと目を開けば、知らない世界へと翔んで来ていた。

 しかし不思議なもので、『科学』とやらが発展したこの世の中で、この世界の人間には使えるはずの無い『魔法』は使えるというのだから、世の理とは、興味の尽きることがない物であると言えよう。


(流石の我も、このような訳もわからぬ異界へ転生するとは思わなんだが.....人生、何があるかはわからぬものよな。しかし、それでこそ面白味があるというものよ)


 ゆっくりと目蓋を持ち上げ、クシャリ、と前髪を掻き上げる。

前世とは似ても似つかない色素を持つ体だが、一般人として過ごして来たここでは、この黒髪や黒目は役に立っている。


「…帰るか」


 何かここでありそうだと勘が告げ、暫く待ってみてはいたが、ついぞなにも起こらずにこの場を後にすることとなるとは。転生前は勘が外れる事など一切無かったはすだ。


(我も大分体が鈍ったようだな....。まあ、このような生ぬるい世の中ではそうもなろう)


ここで時間を無駄に消費しても利はないと、立ち去ることにする。

椅子を引き、あらかじめ荷物を入れておいたリュックサックを肩掛けけ、扉に手を掛けた。


パチッ


指先が痺れるような不快感。


「うわあっ!?」


「「きゃあっ!」」


 先程から教室内に残っていた三人の悲鳴が上がると同時に、蒼白い光が室内を眩く照らした。


(召喚の魔方陣!)


即座に魔方陣に手をかざし、召喚先を暴く。

召喚を妨害することも出来たが、この世界で魔法を見るのは初めてであり、興味深かったため、敢えて転移先を暴くのみに留めた。


(この座標は.....!)







光が、視界を埋め尽くした。





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