峰打ち(物理とは言ってない)
ルドムの笑みを見てショウタロウは笑みを引っ込め目を細めた。
「お?今までの威勢はどうした?」
ルドムはそんなショウタロウの行動を見て挑発する。しかし、彼は全く気にする事なく刀を両手で握り上段に構えた。
その瞬間、シオンとルドムの視界からショウタロウが姿を消した。彼の居た場所には土煙だけが残っていた。
シオンは消えたショウタロウの行方を周囲を見回し探した。そして、彼がルドムの背後に居ることに気が付いた。彼は上段に構えていたはずの刀を既に振り下ろしていた。
シオンの視線で察したのかルドムは背後を振り返る。
「逃げたかと思ったぜ」
ルドムがショウタロウの方へと向いた瞬間、彼の両手が地面に落ちた。その後、少し遅れて傷口から血が吹き出し彼は絶叫を上げた。
「ウアアアア!!!」
しかし、ルドムの出血は直ぐに止まり新しく腕が生えた。
「なんちゃって」
ルドムは余裕のある態度を見せ、額に巻いているバンダナを外した。その下から現れた物を見てシオンは絶句し口元を手で抑えた。そこにあったのは褐色の爬虫類の鱗と二本の角だった。
「あの方がさあ竜を俺達に移植してくれたんだ。そのおかげでいくらでも再生出来る。それに、あの方の予想通りその刀で無効化出来るのは魔術だけみたいだな!!竜の再生の性質が無効化出来てないのがその証拠だ!!」
ルドムは再びショウタロウへと右手を突き出した。その行動に動じることなくショウタロウは刀を鞘へ収めた。そして、帯へ差すと後脚を引き姿勢を低くする。抜刀術の構えだ。
「おいおい……勢い余って殺しちまうんじゃな……」
ルドムが言い終わる前にショウタロウは抜刀した。不可視の速度で繰り出された一振はルドムを斬ることはなかった。しかし、その威力は凄まじく起こった風圧により彼は背後の壁へと叩き付けられた。
「ガハッ……」
ルドムはそう息を漏らすとガクリと項垂れそれ以降動かなくなった。
「刃の無いもので斬る技術を心得ているのですから刃の有るもので斬る技術も心得ています」
ショウタロウはそう言うと刀を再び鞘へと収めた。
「不可視……一刀……」
シオンは起こった風により乱れた前髪を整えず呟いた。その目はとても輝いていた。




