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黒の忌み子が刀抜く。  作者: 白達磨
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公爵との出会い

 ほぼ全裸のような状態で森の中をとある少年がさまよっていた。


 肩まである長い黒髪を後ろで束ね、全裸で無ければ女と勘違いされかねない中性的な顔立ちに色白な肌、華奢な四肢をしている。


 このような状態なのは、決して彼が全裸で森の中を歩くという特殊な趣味がある訳では無い。


 こうなったのは、理由がある。


 少しばかり遡るのだが……


 ***


 彼は、とある理由で幼い頃に全てを失っている。比喩などではなく、考えられうる全てをだ。そのため、各地でギルドの依頼をこなしながら旅をしている。ある組織を見つけるために。


 そして今日、少年は旅の途中で人里離れた森に入った。


 少年は、途中まで順調に進んでいた。


 しかし、空腹によりまともに動けなくなったため魚を採るついでに水浴びをしていたのだ。


「お、かなりの額持ってるじゃねえか」


「小僧貰ってくぜ」


 その時、たまたま通りがかった盗賊らしき男達が少年の荷物を手に取り笑っていた。


「え?ちょっ」


 そして、そのまま走り去って行ったのだ。


 少年は普段ならこんなヘマはしないのだが、空腹すぎてそれどころでなく、追いかける事を諦めたのだ。


 金なんかはまた稼げばいいから問題ないのだが、その荷物の中には少年にとってかなり大事な物があるため、彼はぼちぼち件の盗賊達を追いかけているのだ。


 少年がどうやって盗賊達を追いかけているのか、何故ゆっくりしていても彼らを見失わないのかと思う人もいるだろう。


 少年の一族は、生命エネルギー、彼らが気と呼ぶ物を感じることが出来るのだ。


 その気は、人それぞれで全く違い、見ようと思えばこの森程度の範囲なら全て見渡す事が出来るため、見失う事は一切ない。


 そのため、少年は急がずにゆっくり歩いているのだ。


 ふと、少年が下を見ると大きめの木の枝が落ちていた。彼は、それを拾い上げる。


 その木の枝のはそれなりに長く、かなり丈夫だった。彼の使う武器として申し分なかった。


 周りに着いている細い枝等を除けると一本の少し反り返った棒になった。


(良い握り心地だな)


 そんな余計な事をしているうちに盗賊達が動きを止めた事を少年は感じ取った。


 少年は、盗賊達の近くで他の三人の気を感じた。彼は、あの人達を襲っている最中なのだろうと予想した。


 そして、その予想は的中していた。


(ここが森の中で良かった……)


 少年は内心ほくそ笑む。


 少年は、自身の気に意識を集中させる。それが全身を更に激しく巡るようにイメージする。暫くすると彼の身体から蒸気のようなものが吹き出し始めた。


 さっきも言った通り、気というのは生命エネルギーだ。つまり、多ければ多い程、力が増す。


 その状態で彼が垂直に跳ぶと上の木の枝まで届く。


 そして、次の木の枝へと跳び移る。彼にとって森の中ではこれが最も速い移動方法だ。


 少年は、だんだんと盗賊達に近づくにつれ、そこで何が起こっているのかが分かってきた。


 どうやら、貴族の馬車を襲っている最中らしい。また、その貴族の息子を人質にしているようだ。


(他人が傍に居ると動きにくいな。どうしたものか。 ……暫く様子を伺うか)


 ***


「頼む!有り金全て持って行っても良い。だから、息子だけは離してくれ!」


「断る!その家紋……グラキエース家だな。今、金を手に入れて逃げたとしても直ぐに捕まっちまうだろ?だから、ここであんたらには死んでもらう」


 盗賊の(かしら)はそれなりに利口なようで人質をとっていても油断はしていない。部下達に貴族を取り囲ませている。


(で、あの貴族様も中々のようだ)


 少年がそう考えるのには理由がある。貴族の当主は、背後に手を回し何やら力を込めている。その瞬間―、


 シュッという風が吹き抜けたような音がしたと思い、少年が盗賊の頭の方を見れば、貴族の息子らしき彼と同世代くらいの少年の頬に赤い液体が流れていた。


「ち、父上……」


 怯えた表情をした少年の隣には、正反対の嬉しげな表情をした盗賊の頭が言う。


「気づかれないと思ったか?息子を先に逝かせたくなきゃ抵抗せず殺られな」


「く……」


(あの人、それなりにじゃなくかなり頭が切れるな。それに、貴族様のあの繊細な行動に気づくとはかなりの手練だな)


 当主が諦めたらしく、もう抵抗しないという意志を表示するためか肩を落とし目を瞑る。


「風魔術……」


 それを見て頭は下劣な笑みを浮かべ、片手を正面へ突き出す。


 こんな光景を少年は過去に一度見たことがあった。そして、それは彼にかなりの不快感を与えた。


「風魔の爪!!」


 頭がそう叫んだ瞬間、見えない何か鋭利な物が当主の元へと飛んでいく。


 しかし、少年な木から飛び降り、それが当主に直撃する前にさっき拾った棒で叩き落とす。


「先程ぶりですね、盗賊さん」


「お前は川辺にいた小僧……」


 少年がこんなに速く追いつくとは思ってなかったのかそれとも攻撃を叩き落とした事に動揺しているのか。


 ―しかし、少年にはどちらでも構わなかった。


「僕の荷物とその少年を返して貰いますよ」


「き、君は……」


 突然現れた全裸の少年に盗賊達だけでなく当主も動揺している。


「貴族様、僕が奴らをどうにかするのでその間に」


「わ、分かった」


 彼らが話しているうちに盗賊達も冷静さを取り戻したらしい。


「はっ!突然来た時は驚いたが、お前この人数が見えないのか?お前ら殺っちまえ!!」


 頭の言葉を合図に周りの盗賊達が各々武器を構えたり、手を出して何やら唱えたりしだす。


 少年は冷静に周囲の気を読む。


(目で見える範囲で六人。茂みに隠れているのが三人か)


 丁度数え終わった所で近接用武器を持った盗賊三人が彼を囲んで飛び掛かってくる。


 まず、彼は棒だけを後ろに回して斧を持った盗賊の溝落ちを突く。


「ッハ……」


 しっかり入ったらしく短く息を漏らした。


 そのまま棒に身体を引き付けるように後方へ跳び、宙に浮いた状態から更に脳天へと追い討ちを掛ける。その時点で男は白目を剥き気絶した。


 地面に足が着いた瞬間、体制を低くし右隣の男の下段に棒を叩き込む。


 今度は、十分の力だったらしく一撃だった。


 何かの術を放とうとしている連中の準備も整ったのを少年は感じ取ったため、気絶させた男の首根っこを掴み連中の方へと投げる。

 空中に浮かんでいたので投げやすいようで簡単に飛んでいく。


 仲間が突然飛んで来て動揺している隙を狙い、少年は連中の元へと跳んでいき、右から順に首から横腹の起動で一撃ずつ叩き込む。


 背後の一人の方へ向き直りそのまま突っ込み、取り去る瞬間に腹部に一撃入れ、背後に回った時に切り替えして背部にも一撃叩き込んだ。


 その勢いを殺さずに茂みに隠れていた三人の所へ突っ込む。


「奇襲でも仕掛けるつもりだったんですか?」


「へ?」


 そう呟くと三人は僕の方を向くとギョッとし間抜けな声を漏らす。


 それを少年は見逃す事なく、容赦なく攻撃する。


 頭以外を少年は意図も容易く片付けてしまった。


 少年が茂みから出て行くと、頭は惚けていた。

面白いと思っていただければ幸いです。

この作品は僕が過去に書いた作品の大幅リメイクになります。

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