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第十一章:冒険者の反撃2

 ヴァルターさんを先頭に私達は洞窟の中を進み続けましたが、途中から食べ物が腐敗した臭い等が鼻を突きました。


 恐らく山賊達の寝床が近いのでしょう。


 となれば・・・・・・・・


 『蠱毒師の寝床は更に奥・・・・・・・・』


 何せ先程の様子を見る限り蠱毒師が山賊達の長と考えられますから寝床は離れた場所に在ると考えられます。


 ただ私で本当に蠱毒師を倒せるのか・・・・・・・・


 一抹の不安はありました。


 拳法も使えるとなれば接近戦に持ち込まれる可能性は低くありません。


 そして実力からしてもボリスやモニカでは歯が立たないと私は察しました。


 もし、対応できるなら・・・・・・・・


 「ヴァルターさん・・・・・・・・」


 私は小声でヴァルターさんを呼びました。


 ですがヴァルターさんは顔を振り向かせません。


 ただ前を進んでいますが、その背中に私は言いました。


 「蠱毒師が接近戦を挑んできたら・・・・お願い出来ますか?」


 私の言葉にヴァルターさんは無言でしたが、首を縦に振りました。

 

 それを見て私は安堵しましたが、山賊達の寝床が近いなら言うのは遅くても良かったと思いました。


 その証拠に寝床と思われる部屋には直ぐ辿り着きました。


 部屋からは10何人かの声が聞こえてきて、山賊達の人数を大体ですが把握できました。


 『しかし、親分には参るぜ』


 『まぁな。腕っ節は強いが細か過ぎる』


 『もうちぃっとおおっざっぱでも良いと思うんだけどな』


 山賊達の何人が蠱毒師に対し不満を口にしました。


 『おい、口を慎め。何処で聞かれるか分からねぇぞ』


 『聞かれてみろ。俺等まとめて八つ裂きにされるぞ』


 何人かが仲間の愚痴を戒めましたが、口調からは少なからず不満の色が出ているのを私は感じ取りました。   


 『だが、親分が細かいからこそ大親分も楽なのは確かだ。そして大親分は羽振りも良いし、俺達にも寛大だ』


 『確かに、親分なら激怒して殴る所を大親分は叱責だけで許してくれるからな』


 『言うなれば"飴と鞭"みたいなもんだ。しかし・・・・ここまで稼いだってのに・・・・まだ足りないのかねぇ?』


 『足りないんだろうぜ。まぁ、俺もは早めに楽隠居したいから稼げる内に稼ぐつもりだ』


 ゲラゲラと山賊達は仲間の言葉に笑いつつ酒を飲んでいるのか、早く仮眠しようと言いました。


 それを聞いてヴァルターさんは腰に取り付けたウエストバッグから皮袋を取り出しドアの前で山を築くと打ち竹で火を点けました。


 そして布で鼻と口を覆うので私達も直ぐ鼻と口を抑えます。


 火が点けられた粉末は白い煙を出しながら山賊達が居る部屋に流れ込みました。

  

 すると寝息が深いものに変わり、眠り香と私達は知りました。


 ですが山賊達の寝息が途切れるのを聞いて私は毒煙と知り、鼻と口から手を離そうとしたボリスを止めました。

 

 ボリスは驚いた表情を浮かべますが私は首を横に振り鼻と口を覆い続けるように眼で訴えました。

    

 やがて煙が消え、ヴァルターさんが布を取ったのを見て私達も鼻と口から手を離します。  


 「・・・・・・・・」


 ヴァルターさんは無言で山賊達の寝床のドアを開けますが体を半身にするなど警戒していました。


 ですがドアを開けて山賊達が眠るように事切れているいるのを確認すると漸く口を開きました。

  

 「・・・・さっきはヒヤッとしたよ」


 ヴァルターさんが私を見て言ったので私は頭を下げます。


 「すいません・・・・事無きは得たと言えども・・・・・・・・」


 「別に頭を下げる程じゃないさ」


 「でも・・・・・・・・」


 「そんなに罪悪感を感じているなら・・・・茶を御馳走してくれないかな?」


 6~7年後とヴァルターさんは言いました。


 「以前にも言った通り15歳になっばかりの女性を誘うのは俺の騎士道に反するからね」


 この言葉を私はヴァルターさんなりの誠意と受け取り、私は無言で頷く事で受け入れます。


 「だから6~7年後に茶を御馳走してくれないかな?それ位になれば君は今以上に綺麗で、そして冒険者としても成長しているだろうからね」


 「・・・・女性と愛を育むのが趣味と言っていましたけど・・・・女性を”育てる”のも趣味に入れるべきでは?」


 こんな風に女のやる気を出させるのですから・・・・・・・・

 

 「それは良いね。今度、名乗る際はそれも趣味に入れておくよ」


 クスリと笑いながらヴァルターさんは再び先頭を切って進みました。


 それに私達は付いて行きますが・・・・間もなく本当の戦いが始まると・・・・何処かで感じてはいました。

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 洞窟の奥へ進み続けると強くて毒々しい気を感じました。


 『蠱毒師の気だわ・・・・・・・・』


 私は直ぐ蠱毒師の気と悟り、錫杖を握り締めました。


 そして如何に倒すか考えました。


 蠱毒師は蠱毒を使い魔にしますが、それ以外は普通の人間と何ら変わりません。


 だから刃物で斬ったり、刺せば傷付きますが・・・・それは体術を心得ている者が出来ればの話です。


 私は体術を心得ていないので・・・・・・・・


 『ゴーレムを作って倒すしかない・・・・・・・・』


 ゴーレムは土等で作る土の魔術師の使い魔で、高い実力を持つ魔術師なら本人の人間みたいなゴーレムが作れます。


 ですがゴーレムを作った事がない私では如何なるゴーレムが出来るか・・・・・・・・


 『それでも・・・・やるしかない』


 私は決意を固めて徐々に近付く蠱毒師の気に負けないように気を引き締めました。


 そして・・・・とうとう蠱毒師の気を感じる部屋に着きました。


 ドアの前でヴァルターさんは足を止めると私達を左右の壁にやり、自分は正面に立ちました。


 刹那・・・・・・・・


 ヴァルターさんはドアを蹴破ると素早く中に入りました。


 そしてロング・スピアーを膨らんでいたベッドを突き刺しました。


 ですがベッドの中にいたのは枕で蠱毒師は居ません。


 ところがヴァルターさんは眉一つ動かさずに頭上から見舞われた蹴りを躱し後退しました。


 そこで私達は床に着地した蠱毒師と改めて対峙します。


 「ちっ・・・・やっぱり同類だったか」


 蠱毒師はギリッと歯軋りしながらヴァルターさんを睨み付けました。


 「同類とは人聞きが悪いな。俺は婦女子を乱暴に弄ぶような“趣味”は持ち合わせてないんだ」


 ヴァルターさんはロング・スピアーをダラリと垂らすように構えながら蠱毒師に言いました。


 「ケッ!気障な言葉だな。しかし・・・・甘かったな?」


 蠱毒師は残忍な笑みを浮かべながら私達を見ました。


 「休んでいた子分達ならベッドで永遠の眠りについているぜ」


 「・・・・てめぇ、何者だ?」


 ヴァルターさんを蠱毒師は睨みながら問い掛けました。


 「案内人だ。地獄への・・・・な」


 ヴァルターさんはロング・スピアーを眼に追えない速さで切り上げました。


 「!?」


 対して蠱毒師は後退する事で躱しましたが・・・・・・・・


 蠱毒師の額から薄らと流れる血を見て私達は目を見張ります。


 「野郎・・・・やるな」


 額から流れる血を拭いた蠱毒師は拳法の構えを取りました。


 対してヴァルターさんは再びロング・スピアーを構えますが・・・・・・・・


 『野郎共!餓鬼共が御頭の部屋に居るぞ!!』


 左右から山賊達の声が聞こえてきて私達は戦う態勢を取りますが・・・・・・・・


 「逃げるぞ!!」


 『えっ!?』


 ヴァルターさんの言葉に私達は驚きますが、当のヴァルターさんはドアを出るなり一目散に走り出したので私達も慌てて追い掛ける事になりました。


 ただ、その背後から蠱毒師達が追い掛けて来るのは必定で、このままでは挟み撃ちになるのですが・・・・・・・・


 ヴァルターさんの眼が薄ら笑みを浮かべているのを見て私は秘策があると直感しました。


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