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9.『人の不幸で飯を食っている奴だよ』

『食戟のソーマ』は、いい意味で古きよきジャンプコミックという感じ。

 読み返して面白い作品もいいし、まとめて読んで楽しい作品も良いけれど、一週ごとのインパクトに命かけている感じ。

 冷静になって読み返すと、矛盾もあるし、回収されてない伏線もあるんだけど、週刊少年漫画としては今! が楽しければいいというのもそれはそれで一つの真実。


 一番好きなキャラは"錬金術師"叡山枝津也。

 美味しい料理が作れるのは大前提で、いかに売るか? という視点を持っているところがいい。

 小比類巻勇作の葬儀は、しめやかに執り行われた。

 本来ならば、もっとからりとした空気で、多くの人がやってきて賑やかに執り行われるはずの葬儀だった。

 なにしろ、日本文芸社第一編集部の編集長である。

 多方面に人脈も広い。その中には誰もが知っているような著名な人物が大勢いた。

 葬式という本来厳かに執り行われるべき式だということがわかっていても、思わず思い出話に花が咲く。生前の故人への思いに盛り上がる。そうした会話が、小比類巻勇作が生前に成し遂げたことの証明であり、また手向けとなる。

 そんな葬儀になる。

 はずであった。

 にも関わらず、葬式の会場は沈痛な雰囲気に包まれていた。

 咳払い一つが、不自然なほど大きく響く。

「板坂さん、徳川さん」

 葬式の会場についたマイトと遠子の姿を見つけて、喪服姿の勅使河原唯が駆け寄ってきた。

「わざわざありがとうございます」

「いえ……それは良いのだけど。私自身も」

 髪をひっつめた勅使河原唯の顔を見ても、疲労と困惑が広がっているのがわかる。

「随分、様子がおかしいわね」

「そうなんですよぉ……」

 今にも泣き出しそうな顔で勅使河原は言った。

「小比類巻さん、編集長に就任したばっかりなのに、こんなことになるなんて。おかしいですよぉ……」

 よしよし、と遠子は手を伸ばして勅使河原の頭を撫でた。

「板坂さんの周りではどうですか?」

「私たち作家仲間の間でも動揺が広がっているわ」

「ですよね!?」

 勅使河原は高い声をあげてしまい、慌てて声を潜めた。

「うちの会社が不吉なんじゃ、って噂が流れていて……板坂さんはうちで続けてくれますよね!?」

「もちろん。噂なんかで右往左往する私じゃないわ」

 遠子はにこりと笑いかけた。

 どうしてここまで葬儀が混乱しているのか、という理由は二つある。

 一つには、小比類巻勇作の死が不自然であったことだ。

 入水自殺。

 それも、車のアクセルを踏み込んで、ガードレールを貫いて海に没するという恐ろしい形で彼が自殺したということが大きな理由だ。

 ブレーキ痕がなかったこともあり、当初は自殺としてあっさりと処理されそうになったのだが、しかし話はそれだけでは終わらなかった。

 自殺する数十分前まで、仕事の打ち合わせの電話をかけていたのだ。自殺する直前まで仕事の話をしている人間がいるか?

「すっかり奥様も弱ってしまって、それで、編集部から応援に来たんですけど」

 勅使河原はしょげた様子で言う。

「これじゃ私のほうが参っちゃいますよ」

 葬儀が沈痛な雰囲気に包まれている理由はそれだけではない。

 小比類巻勇作の死に類似した自殺? 事件がいくつも発生しているのだ。

 一般に報道されているだけで、既に十件を越えている。

 どの事件も、およそ自殺などしそうにない人間が自殺とも他殺ともつかない状況で死んでいる。

 死者は、いずれも仕事面でもプライベートでも充実しており、およそ自殺とは思えない。

 小比類巻勇作の死が自殺だと断定しきれないのも、こうした背景がある。

 警察としては、この十数件の事件を繋がったものだとは考えてはいない。

 殺人事件かどうかすらわからない事件を、連続殺人だと断言することなどできるはずはない。

 しかし、なんともいえない不穏な空気が式場を覆っていた。

「何か、私に手伝えることはある? 勅使河原さん」

 今にも泣き出しそうな勅使河原に対して、母親のように遠子は問いかけた。

「いえ……ぐすっ 大丈夫です……」

 涙声で勅使河原は言う。

「それよりも、探偵のお仕事のほう、がんばってください……」

「……」

 探偵の仕事をがんばって、と言われて遠子はぎゅっと歯を食いしばった。

 小比類巻勇作の死の報道を受けてから遠子は執筆を中断し、マイトと共に全力で捜査に当たっていた。

 明言こそしていないが、遠子の中では既にこの一連の事件は同一の事件だと確信しているらしかった。

 つまり、安達原要の死も、堀慎也の死も、小比類巻勇作の死も、あるいはそれ以外の不審死を遂げた人物に関しても、同一線上の事件である、と捉えている。

 一つの事件さえ解決すれば、あとの事件は芋づる式に解決できると考えている。

 そして、そのためならば今までにないくらいの熱心さで捜査を続けている。

 一定の距離を置いていた警察とも積極的に連携をとるようにしているし、敵対関係にあった他の探偵にも情報提供を呼びかけている。

 しかし、それでも決定的な証拠を掴むには至っていない。

 それどころか、謎の不審死は増える一方だ。

 遠子が精一杯に広げた手をすり抜けるようにして、謎の死体は次々と積み上がっていく。

「お焼香を済ませてくるわね」

 勅使河原の『探偵の仕事がんばって』の言葉には応えることなく、遠子は行くわよ、と顎でマイトに示した。

「……どうするんだ?」

 他の人物に聞こえないように、歩きながらマイトは耳元に囁く。

「どうって?」

 唇の動きだけで遠子は応えた。

「この事件の解決だよ」

 遠子は無言で口元を抑えて考え込んだ。

「遠子?」

「……私は名探偵よ」

 遠子の唇はそう語る。

「私は誰よりも多くの事件に遭遇し、解決してきた」

 それは知っている。

 探偵は多くいるにしても、この世に板坂遠子よりも多くの事件を解決した探偵はいない。

「つまり、誰よりも多くの人を見殺しにしてきた……ということよ」

「……その分、救ってもいるだろう?」

「かもしれない。けれど、亡くなった方の大切な人にとってはそうではない」

 以前、遠子は言っていた。

 どうして私の大切な人を救ってくれなかったのか、と責められたことがあると。

 あなたがもっと事件を早く解決していれば、私の大切な人は死ななかった。そう責められたと。

「もしかしたら、新記録かもね」

「……何がだ?」

「私が見殺しにした人の数。数人の死者が出た事件はいくつもあるけど、十人を数えたというのは恐らく今までにない。そして、これからはもっと増える」

 ぎゅうっと音がするほど強く、遠子は拳を握りしめた。

「絶対に、解決してみせる」

 二人はそのまま歩を進めて、焼香を済ませた。

 文芸社の人間であるために顔見知りの相手と何人も顔を合わせたが、やはり話は盛り上がらない。適当に挨拶を交わしただけで、なんとなく話が立ち消えて頭を下げ、物別れになってしまう。

「よ、徳川」

 そんな有様であったから、いきなりの野太い声にマイトは面食らった。

「どうしたね? 最近活動を見せていないと思ったらこんなところに顔を出して」

「田中……さん」

 マイトは眉をしかめた。

 こんなところで出会うとは、想定外の相手だった。

「どうしたの? マイト。知り合い?」

 遠子に問いかけられて、マイトはため息をついた。

 彼女は、声をかけてきた男を不審がる態度を隠そうともせずそれとなくマイトの背後に回った。

 それもやむを得ないことだ。

 しっかりと喪服を身にまとっているにも関わらず、男の雰囲気はどこか異質だ。少なくとも、まともな勤め人には見えない。

 笑顔を浮かべてはいるものの、目は笑っていない。

 どこか、相手の隙をうかがうような、ハイエナのようなしたたかさがしたたり落ちている。

 表面だけは取り繕っているが、地金の陰湿さが仕草から発露している。

「同業者だよ」

 と応えた。

「田中保。僕と同じ仕事で、僕と違って優秀な記者だよ」

「はあ。お仕事仲間でしたか」

 マイトの言葉で納得したのか、ぺこりと遠子は会釈をする。

「初めまして。わたくし、板坂遠子と申します」

「板坂さん」

 名前を聞いて、田中はぎらりと小さな瞳を輝かせた。

「はじめまして。板坂さん。わたくし、田中保と申します」

 急に居住まいを正して名刺を差し出したので、遠子は面食らった様子で大きな瞳を瞬いた。

「……こういう奴なんだよ、田中は」

「こういう奴?」

 遠子もようやく喪服の裡ポケットから名刺入れを取り出して田中と交換した。

「こういう奴って、どういうこと? マイト」

「僕と違って、したたかで抜け目がない。少しでも金の匂いを嗅ぎ付けたらとりあえずツバをつけておくし、儲けるチャンスを見つけたら人を足蹴にしてでも小金をつかみ取る」

「わざわざ嫌な言い方をしないでくれよ、徳川」

 けけ、と笑い声を漏らしながら田中は名刺を大切そうにしまい込んだ。

「仕事熱心だと言ってくれ。名探偵にして売れっ子作家・板坂遠子とお近づきになれるチャンスがあったら当然掴んでおくさ」

「僕は褒めているつもりだよ……良くも悪くも、田中のことは一流の記者だと思っている」

 ライターとしての優秀さは、人間性とは比例しない。

 むしろ、他人を土足で踏みにじることを頓着しない。相手を慮ろうとする気持を意識的に遮断できる。そうした、世では人でなしと言われそうな精神性こそが必要になることも多い。

 それぐらいでなければ、フリーライターとしては生きていけない。

 しかし、そうした下種の蠱毒のようなライターの世界においても、田中保は例外の例外。

「人の不幸で飯を食っている奴だよ」

 話しながら、マイトは口の中が乾いていくのを感じていた。

 あまり、仕事をしている姿を遠子に見られたくはない。

「それにしてもよ、徳川マイト。こんな大作家と繋がりがあったのか」

「……別に、繋がりってほど大したことじゃないよ。遠子とは、大学の同窓なんだ」

「ほぉ。徳川がそんな美人を連れ回せるはずがないとは思ったが、そういうことか」

 田中はひげのそり跡の残るあごを撫でた。

「せっかくそういうコネクションがあるのに、マイトが文芸関連の仕事をしているのを見たことがないな」

「僕は文芸関係の仕事してないからな」

「もったいない」

「いいだろ、俺の話は」

 田中の追求を無理に打ち切って、マイトはできるだけ自然に見えるように、遠子をかばうように立っている位置を変えた。

「小比類巻さんとは繋がりあったのか? 田中」

「ねえよ」

 と、田中は言う。

「俺が来たのは、取材だよ、取材。お前もそうじゃないのか?」

「いや」

 田中の態度に鼻白みながら、マイトは答えた。

「彼女……遠子が、仕事で小比類巻さんと繋がりがあったので来たんだ。それで、田中、取材って?」

「取材って? もないだろ」

 にやにやと、田中は粘つくような笑みを浮かべた。

「もちろん。この連続不審死を記事にするんだよ」

 ひひひ、と田中は歯をむき出しにして笑い声をあげた。

「年間の自殺者が何人か知っているか? 徳川」

「ええと……三万人くらいか?」

 突然の話題に面食らいながらも、マイトは記憶をまさぐる。以前、なんの記事を書いた時だったか、書いたことがあるのを思い出していった。

「そうだ。思い出した。自殺と断定されたのは三万人程度。ただし、行方不明者のうち相当数に自殺者がいるという説もある。だったな、田中」

「そうだな」

 にやにや笑いを隠すことなく、田中は言った。

「ご名答だ。それに対して殺人事件は何件起きているか知っているか」

「三百件」

 マイトは即答する。これも以前、調べたことがあった。

 推理小説では週刊雑誌みたいな頻度で起きる殺人事件だが、実際に発生している件数は極めて少ない。稀に一度の事件で複数人が殺害されることを考慮しても、殺人による死はほとんど無視していいような確率だし、それに対応する名探偵もタイミングよくそれに出会うのは容易ではない。

「つまり、殺人事件に比べれば、自殺はずっと普遍的なことなんだよ」

「それでも、当事者にとってはそれしかない、という切実な問題で、それを普遍的だとは僕は思わないけどな」

「お前の気持はわかるがまあ聞け、徳川マイト」

 マイトの言葉を、田中は軽くあしらう。

「先ほども言った通り、俺がここに来た理由は取材だよ。この一連の不審死は最近注目度が上がっているからな。それなりに飯の種になる。まだ噂段階で、まとまった記事になってはいないしな」

 飯の種、か。

 嫌な響きだが、マイトの仕事も似たようなものであるので口に出して非難することはできない。媒体はなんであるにせよ、報道されるようなニュースはいい話より悪い話のほうがずっと多い。

「普遍的な自殺と希少な他殺。その中間を揺蕩うこの一連の事件は本当に面白いテーマだよ」

「つまり、田中、あんたはこの一連の不審死を、一つの事件として記事にまとめるということか」

「やらいでか」

 ふん、と田中は鼻を鳴らした。

「もちろんだ、徳川マイト。俺はそのためにこの葬儀に取材に来たんだ。悪いか?」

「……いや」

 田中がこの一連の事件を報道することを悪いと断じることはできない。

 むしろ、そうした事件を伝えることこそ、マスメディアの本来の役割である。

 その意味では、田中保は誰よりもマスメディアとして純粋な男と言える。

 しかし……しかし、マイトは田中のことを全面的に肯定することもまた、できない。

「それとも、お前が記事にするつもりだったか? だったら悪いな。俺のほうが先に記事にしちまうぜ」

「僕はしないよ……好きにしたらいい」

 マイトは乾いた唇をなめた。

「そうか。まあ、どちらにしても、遠からず誰かが記事にするだろうからな。俺が一番乗りさせてもらうぜ」

「そんなに、既に話題になりつつあるのか?」

「不穏なものを感じている連中は多いだろ……アンテナの鈍い、お前ですら肌で感じているくらいだからな。遅すぎるくらいだ」

 こともなげに田中は答えた。

 確かに、田中の言う通り。

 気がつけば、既に死の不穏というどっぷりと泥に浸かっている。

 どうして今まで記事にならなかったのかと言えば、それはきっと言葉にするのが恐ろしかったからに他ならないだろう。

 不穏なものを感じつつも、誰一人言葉にできないでいた。

「それを俺がどう味付けしてやるのかだな」

 楽しげに、田中は口元を歪めた。

「とはいえ、これだけエキセントリックな事件だ。どんな味付けをするにせよ、気づきを与えてやるだけで、充分な効果があるだろうな」

 得意げに、田中は続ける。

「この一連の事件の共通点は、なんと言っても死んだのがいずれも人生の成功者である点だろうな。人の不幸は蜜の味、センセーショナルが巻き起こるだろう」

「人生の成功者?」

 マイトは聞き返して、言った。

「成功者……か」

 安達原要は言うまでもなく、堀慎也も間違いなく人生の成功者側の人物だろう。そういう意味では、小比類巻勇作も疑う余地がない。

 それどころか、人生の絶頂といってもいいような状況で突如謎の死を迎えている。

 確認をとらなければわからないが、他の人物ももしかしたら、同様の性質があるのかもしれない。

「不満そうだな? 徳川マイト。何か言いたいことでもあるのか?」

「……ないよ」

 マイトは目線をそらして答える。

 正確に言うのならば、言いたいことはあるが、言えることは何もない。

「田中がどんな形でこの事件を報道しようが、俺から言えることは何もないよ。ただ」

 ずっと下に向けていた視線を、そっと上げてマイトは田中を見た。

「被害者と顔見知りの関係としては、やっぱりいい気持はしないし、さらし者にされる遺族はお前に不満を言う権利があると思う」

「ふん」

 その言葉を聞いて、田中はおかしそうに笑った。

「やっぱり怒っているじゃねえか、マイト。感情を隠すのがへたくそだな」

「怒っているよ……でも、怒ってもしょうがない。そういう業が深い仕事をしているだろう? 僕も、あんたも」

「違いない」

 くっくと田中は歯を見せて笑った。

「だから、田中、僕が言えるのは、どうかあんたが人に刺されたりしないで畳の上で死ねるように祈ることだけだよ」

「そりゃどーも」

 立ち去ろうと歩きかけた田中がぽんぽんと肩を叩いてきた。

「やっぱり徳川、お前は記者には向いてねえよ。俺の真似事だけは巧いが、それは技術だけだ。心が弱すぎる」

「……肝に命じておくよ、田中」

 確かに、記者としてこれから生き延びられるのかは自信がない。

 他人の真似をして、『それらしい』記事を書くことは簡単だろうが、それだけで生き残れるほどぬるい世界ではない。

「お前なら、何をしても食ってはいけるだろうがな。他の仕事もことも考えたらどうだ? 若いうちにな」

 じゃあ、俺はもうちょっと写真を撮るからと言い残して田中はその場を後にした。

「悪い奴じゃないんだけどな」

 誰にともかく、呟いた。

 田中保の報道姿勢は度を超しているが、悪意があるというわけではないのだ。

 ただただ、マスメディアとしての新年に忠実なのが田中保という男。

 もちろん、人間だから金銭欲もあれば虚栄心もある。

 だが、注目を集める記事を発表して一発当てたいというのは嘘ではないのだろうが、彼が記者という仕事に誇りを持っていることもまた疑いようのない事実だった。

「将来ねえ」

 自分に将来などあるのだろうか。

 遠子やこはくのような人物と会ってばかりいると、彼女たちの輝かしい人生に嫉妬する部分がないと言えば嘘になる。

 かといって、自分が彼らのような存在にはなれないのもまたわかる。

「さて、帰ろうか」

 とマイトは歩き始めかけて、

「……遠子?」

 田中が立ち去ってからも、遠子はその場を動こうとしなかったことに気づいた。

 ただ、思い詰めたような表情でじっとその場に立ち尽くしている。

「どうかしたのか? 遠子」

 返事はない。

 マイトは遠子に近づいて、その肩に触れた。

「おい、遠子?」

「ああ、びっくりした」

 それでようやくマイトが声をかけていることに気づいたようで、大きな瞳をぱちぱちと瞬かせた。

「どうかしたのか? 遠子」

「ねえ、マイト……人を集めてもらえる? こはくと、安達原花恵さんと……そうね。他の亡くなった方の関係者に声をかけて。勅使河原さんにも来て欲しいな」

「まさか、遠子」

「ええ」

 遠子は眉をひそめて、考え込むような表情で言った。

「犯人がわかったわ。謎解きを、しましょう」

「わかった。任せろ」

 マイトはすぐに携帯電話をタップした。

 呼び出し音を聞きながら、事件を看破したはずの板坂遠子の表情に浮かないものがあるのはどうしてなのか、その一点だけが気になった。

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