第五話 それはおおきなくもでした
ようやく街に到着です。
イメージとしては壁と海に囲まれた貿易都市かしら?
ドッカンドアをくぐり抜けた先は⋯うん、港町なんてレベルじゃないな。
「ここは臨海都市ストレーナである!入門証はあるか!」
「いや、来るのは初めてなんだが⋯」
「そいつはアタシの連れなんだ!」
アクセが門番の前に出た途端に嫌な顔をされてるんだが⋯。
「⋯アクセ様のお連れ様ですか、仕方ない今回は問題ありませんので次回からは冒険者の証か町民証をお取りください。」
コイツなにかしたのか?
まあいい、やはり冒険者ギルドのようなものはあるらしい。
「アクセはギルドには入ってるのか?」
「いちおうはな。1人で街の外に行くにはギルド証あれば1番なんだぞ、アタシは顔パスだけどな!」
ふーんと相槌を返し俺たちはようやく臨海都市に入れたのだった。
☆☆☆☆☆
成程、これはまさに都市と言って間違いない規模えだな。城は無いものの入口から先、大きな道が広がり左右には宿屋に始まり様々な商店らしき建物が立ち並び軒先には屋台がずらりと並んでる。道の先に見えるのは⋯大きな聖堂らしき建物、おそらくは教会あたりだろう。
適当に目に入った店の焼き鳥のようなものを買い食いしてみる。
日本食には困らないがいざと言う時にこっちの世界の飯が不味いと目も当てられないからな。
「⋯ん?美味い。外国行った時の屋台メシくらいの覚悟はしてたんだけどな。」
「ストレーナの食べ物はどこも美味いぞ?なんせこの世界の荷物がみんな集まるようなとこだからな!いいコックもあつまってるんだ。」
「物流の拠点ってやつか、これは他の食べ物も期待できるな!⋯ん?」
なにか地面が揺れているような感覚の後、街道の奥の方のあたり白い煙が立ってないか?⋯なんか走ってくる???
⋯ゴゴゴゴゴ⋯
⋯ズドドドドドド
ガカカカカカカカカカカカカカカカ!!!
『きゃあああああああああ、皆様どいてくださいませえええええぇぇぇぇぇぇっ!!!!』
必死な叫び声と共に見えてきたのは⋯例えようがない⋯なんせ日本にゃいないからだ。
まるで日曜朝の仮〇ライダーの巨大化した怪人が猛スピードで前にダッシュしてくるような⋯ええっ?!
「アクセっ!!なんか防ぐような魔法とかないのか!?」
「えー⋯土壁を出すとかダイモンがたくさん火球を発射するとか?」
「人っぽいから傷つけるのはダメじゃないか⋯?」
それなら⋯あの生活魔法で。詠唱もいらないはずだけど気分の問題だ。
《水泡》
それは本来ならば空気中に作り出した大きな泡の中に荷物を入れて運べる簡易的な運搬魔法だ。これならば!
ズプンッ!
前のめりに巨大シャボン玉に突っ込んでいくのは⋯白い大きな蜘蛛⋯か?
そしてふわりと浮き上がり、ラッピング風船が出来上がった。
「やるなーダイモン。こんなふうに魔法を使うんだな⋯ん?誰かと思えばモスタか。」
「んーと、アルビノの⋯アラクネか?」
アラクネ。
俺が知る特徴は下半身が巨大な蜘蛛で、その頭部のあたりから人の上半身が生えたようなモンスターだ。
ただこの子は蜘蛛の部分が全体的にモフモフしてるな、長毛種なのかな猫みたいに。
そして人間部分はゲームのプリーストが着るような格好⋯修道女ってよりもオンラインゲームのヒーラーっぽい服を着ていた。怪我は⋯無いようだな、
「この子はモスタ、この街のおっきな教会で働いてるシスター兼冒険者だぞ。」
本人は泡に突っ込んだショックで気絶してるっぽいけどな⋯どうせならこのまま教会まで連れてってやろう。
⋯寄り道が増えた、まあ人助けして恨まれることはないだろう。
たぶん。
正体はアラクネでした。