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デートの約束


「昔、軍にいたから何度か駐留していました。すぐに最前線送りにされんですけどね。でも、有名な観光名所なら案内できますよ」


 大柄で逞しい彼は何か鍛えいると分かったが、軍にいたのか。整えられた黒髪と端正な顔立ちからは全く想像がわかなかった。貴族でありながら前線に行くとはさぞかし優秀な司令官なのだろうと、考えていたミリィは、ラルフの瞳に一瞬だけ走った影に気づけなかった。

 それよりも、案内できる、という言葉に興味がわいたからだ。


 幼い頃、ミリィの父が教えてくれたことを思い出す。紋章貴族だけのサロンがロンドンにはあり、そこでいつも情報交換していると聞いた。


「ぜひお願いします。ロンドンで行ってみたい場所があるんです。あの、あなたがお暇であればですが…」


 今、ミリィが紋章貴族の話をすれば、こんな親切で優しいラルフに逃げられるかもしれない。昼間に会い、紋章貴族を紹介してもらおう。

 もし、彼が嫌がれば、あまりしたくないことだが、クリュスで脅してでも紹介してもらおう。

 ミリィの瞳はいたずらに輝いた。


「ラルフと呼んでくれ。もちろん私は大丈夫さ。最近は領地に籠りっきりだったから、私もロンドンの変わりようを楽しむことができる。ミリィ、明日、私の馬車で出かけるのはどうだい?」


 ラルフはミリィの瞳が煌めいたことに、違和感を覚えた。しかし、そんな違和感は、彼女の微笑みの前では無力だ。


 善は急げ、レディではないと言い張る彼女と何か繋がりを得なくてはならない。

 その時、迷路の外からミリィを探す声が聞こえた。サフィアたちが帰るために、ミリィを探しているのだろう。

ミリィはまたちくちくと怒られることに、嫌気を感じ、唇を尖らせる。

 そんなミリィの唇に、ラルフは人差し指を当てた。


「では、明日、ハイドパークにあるマーブル・アーチで十四時に待ち合わせだ。また明日、会えることを楽しみにして、今夜は君の夢を見るよ」


 ミリィは思わず後ろに飛びずさると、真っ赤になって頷く。そして、ラルフの後ろにある入り口に向かって走った。


 ラルフは、そのうぶな反応に思わず黒髪をかきあげながら声を出して笑い、明日を待ちわびた。


1話ごとの名前を変えます。数字では、ちょっと味気ないですよね。

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