ミリィの事実
ミリィはキースにすがりつき、涙を流しながら何度も頷く。帰りたい、ミリィはちゃんと家族から愛されている家族の元に今すぐ帰りたいと願った。
「キース、ちょっと待ってくれ。俺を忘れているぞ?」
ラルフは手をあげる。
聞き慣れないラルフの一人称に、ミリィはどきりとした。
「ああ、忘れてなどないぞ、ラルフ。やっぱり君は親友だ。本当にありがとう」
キースは感謝の念をこめて、ラルフの手を捕まえ、力をこめて握る。
ラルフは親友の今にも嬉しさで泣きそうな姿に、彼自身も嬉しくなり、目を細め笑う。
しかし、ラルフは事実を言わなければならない。ミリィは現在、ミニッツ家の召し使いであること、妹とはいえ勝手に連れ帰ってはならないことを、ラルフにも腑に落ちないことだが、事実なのだ。
事実を伝えると、キースは契約獣の力を使ってでも、ミニッツ家に殴り込みに行くと大声で吠える。
ミリィは兄の過激さに驚きながら、離れたくないと強く抱きつく。
「俺の妹をさらっておいて、更には召し使いだから、自分の意思で帰ることもできないなんて、ふざけるな!」
「確かにミリィは家に帰るべきだ。しかし世の中には、道義というものがある。いくら正しくても、それを破ることは許されない」
ラルフは淡々と伝える。そして、ブライアンだ、と呟いた。
「我らが親友ブライアンならわかってくれるさ。小さなミリィにあったこともない、ミリィの契約獣も見てないブライアンは、ミニッツ家に騙された被害者の一人だ。あいつなら、すぐに許可をくれるだろうさ」
ラルフの不敵な笑みに、キースは神妙に頷く。ブライアンなら仲間になってくれるだろう。頭に血が昇り、冷静に考えることをやめていたキースは、深呼吸し落ち着こうとする。
二人の仲の良さにミリィは、信頼を感じる。
「久しぶりの再会なんだ、頭が白くなるのも仕方ない。俺がブライアンとこの件を話してくるさ。お前の金髪が白髪になる前には、話は終わる。そして全部ハッピーエンド、最高だな」
救いの神を見つけたかのような気分になったミリィは、飼い主を見つめる子犬のような顔をした。
そしてまた、キースもミリィとそっくりな顔をする。
そっくりな兄妹の表情にラルフは神妙な顔をしながら一礼するが、堪えきれず吹き出した。




