二人の願い
きりのいいところで話を区切ったので、
今回は短くなってしまいました。
申し訳ないです、すみません。
「ミリィ、君は捨てられてなんかいないよ。むしろ家族に愛されている、私が証言しよう」
ミリィはラルフの言葉に驚いた。まだ紋章を見せていない。ならばラルフは、クリュスを知っているのか。ミリィはソフィーにもたれかかる。
「私が誰だか本当にわかるんですか? 家族に愛されていれば捨てられるはずなんかないですよ」
ソフィーはミリィの額に出る脂汗をハンカチで拭う。親友は衝撃を受け混乱していることが、ソフィーにもわかる。
「君はミリィと名乗っているが、本当の名前はミルドレッド・ライトだろう? ミルドレッドは私の親友であるキース・ライトの妹で、六歳の時に誘拐されたんだ」
ミリィは久しぶりに聞いた自分の名前に、殴られたかの様な衝撃を受ける。そして、確かにキースは二人いるミリィの兄の一人だ。ミリィの瞳から涙がこぼれる。
「ライト家の人たち全員が君を探している。キースなんていつも君を探し、イギリス中を飛び回っているんだ。彼は今、丁度ロンドンにいる。会いに行こう」
ラルフの琥珀色の瞳は優しい光を帯びている。これは喜ばしいことだ。親友であるキースと愛しいミリィの願いが共に叶うのだから。
想像していたより早い家族との再開に驚くミリィを急かし、馬車でライト家の邸宅に向かう。




