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友情は変わらないで


 リトスはソフィーの言葉に、柔らかい鳴き声で答える。

 ラルフはソフィーとリトスが完全に落ち着いたことを確信すると、リアマに左手を回し指示を出す。リアマは甲高い声で答えると、攻撃をやめる。


 辺りを光が包む。

 ミリィが目を開け、ソフィーを見ると、その両手の上にリスほどの大きさで戻ったリトスがいる。

 ソフィーはリトスを胸元に抱き寄せると、安堵のあまり声を出して泣き崩れた。サムもその横で涙を拭っている。

 二人を見ていたミリィは、無事に終わった安堵に座り込むしかなかった。契約獣の恐ろしさの片鱗を初めて味わい、どこか宙に浮かんでいるかの様な気分だったのだ。


 この場所でただ一人立っているラルフは、肩に舞い降りたリアマの頭を撫でる。すると、撫でられて満足したリアマは神話世界に戻って行った。

 リアマが気を引かなければ、被害が出ただろう。この場をなんとかできて、本当によかった。ラルフは胸を撫で下ろす。

 溜めていた息を吐き出すと、ミリィの元に向かう。どこか不安そうな彼女に、ラルフの胸を揺さぶられる。

 泣いているソフィーとサムは、後で話しかけよう。まずは座り込んでいる彼女を立たせようと、ラルフは手を差し伸べた。


「大丈夫か、ミリィ?」


「え、ええ、私は大丈夫……」


 先程の激しい戦闘を見たばかりのミリィは、ラルフが別人に思えて仕方なかった。あんなに温厚だと思っていた人が一瞬にして過激になり、すぐに戻っている。

 ミリィには、差し伸べられた手がとても怖いものに見えた。足に力を入れ、自分で立とうするが、腰が抜けていて立つことができなかった。


「ごめんなさい、立てないみたい。ちょっと放っておいて」


 ラルフは手を無視されたことを気にせず、ミリィの脇に手を入れ抱き上げる。

 そして、サムに自分の馬車を取ってくるよう頼む。


「では少しこうしていよう。ソフィー、そろそろ落ち着いたか? 人がそろそろ集まるだろうから、移動した方がいい」


 ミリィは人に抱き上げられるなんて、初めてのことに何も言えずにいる。端正なラルフの顔があまりにも近く、瞳を縁取る睫毛すら見える距離だ。ミリィの胸の高鳴りは止まることを知らないように、主張する。

 

「なら、私の家にいらしてください。お礼もさせてほしいんです」


 鼻声のソフィーが出した提案にラルフは乗ることにした。

 ソフィーの家はハイドパークから近く、徒歩で行ける距離だった。しかし、ラルフは先程立つことができなかったミリィのことを考え、馬車で行くことにした。



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