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あれから

大雨だ。


車に襲いかかる雨達は、

ベートーベンの運命をも

打ち消すほどに


音を立て、


威張り散らしている。


まるで、自分の機嫌で、

部下に怒鳴り散らす

瞳子の上司のようだ。


しかし、瞳子には、そんな音など

全く、耳に入らなかった。


拓海の告白から、

2日が経っていた。


「愛してるって...

一体、何を考えているのよ。

16歳も年下なのよ!

私をからかったに違いない。

そうよ!

絶対そう!

からかったのよ。」


瞳子は雨音が

鳴り響く

車中で、


独り言を

まくしたてていた。


家から会社まで

車で約20分の道のりである。


その20分間、ずっと、

独り言を

ブツブツではなく、


まくしたてていたのである。


誰に言うのでもなく。


もしかしたら、

自分自身に

言い聞かせていたのかもしれない。


1ミリの期待も抱かない為に.....




会社の隣の席には、


山田美佐江と言う、

同僚が座っていた。


正確に言うと、

10年来のママ友達でもあった。


日本の保険会社は、

一緒に働いてくれる人を入れると、

入れた人が

出世する。


入ってくれた人が、

家族を保険に入れ、

また、その友人達を

入れる。


そんなシステムに気付いたのは、

美佐江を入れてからだ。


それから、人を入れる事ができなくなってしまった。


これが、健全な神経なのだろう。


しかし、その輪に巻かれていると、


ここに入れば、

その人の為になるんだと

思い込む。


しかし、

自分の為になるかどうかは

本人が決める事だ。


他人が決めるのではない!


本人だ!


そんな、単純な事も、

分からなくなっていた時に

美佐江を誘って、

入ってもらった。



美佐江は本当に

性格が綺麗な人だ。


瞳子は、自分には、

もったいない位の

友人だと、思っている。


引き寄せの法則っていう

言葉があるが

美佐江が引き寄せてくれたと思うと、


嬉しい。


美佐江にも3人の子供が居る。


夫は口数の少ない、優しい人だ。


そんな美佐江から、

話を聞いてほしいと、

連絡があった。


話って何だろう?


少し、不思議に思いながら、

とある喫茶店に着いた。


美佐江がキョトンした顔で、

座っていた。


「お待たせ。」


声をかけた途端に、

待ってましたとばかりに、美佐江が話し出した。


「ごめんね。忙しい時に、

実はさ、

昨日、◯◯会社のお客様に、

ご挨拶に行ったんだけど、

いきなり、そのお客様が


山田さん、僕と映画を見に行ってくれませんか?


って言うのよ。

つい、


いいですよ〜。


って軽く言っちゃったんだけど、


どうしよう〜。


瞳子ならどうする?


行く?それとも行かない?」


ちょうど、

話の区切りが良い時に


定員さんが


「ご注文は何になさいますか?」


何だか、体が暑くなって来た。


「アイスコーヒーをお願いします。」


美佐江に、こんな出来事が起こるなんて、

考えてもなかった。


「かしこまりました。」


定員さんの声が

響いた。


「どうするって?

美佐江はその人の事は、どう思ってるの?」


「えっ?

私の気持ち?えっ?

考えてもなかった。」


美佐江は狐につままれた様な表情をしながら、宙を見た。


「わかんないけど、気になるかも...」


ちょっと恥かしそうに言った。


「そっか.....」


と受け答えをしたかと思う間もなく


「瞳子、有難う。

そうだよね。そうだよね。

有難う!

それじゃ、私は彼と待ち合わせてるから、

これで行くね。

本当に有難う。」


と、

コーヒー代をテーブルに置いて

行っしまった。



えっ?


えっ?


え〜〜〜!



ビックリした。

口はぽかんとあいたままだ。

マヌケ顔とは、

こう言う時に、使うのがピッタリだ。



「アイスコーヒーでございます。」


定員さんの声が響いた。


しかし、

瞳子には、聞こえなかった。


瞳子は1人でアイスコーヒーを飲む事を

余儀なくされた。














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