第1章 桜色の出会い 1話 隣の席の男の子
四月。
校門の前には、満開の桜が咲いていた。
春の風が吹くたび、淡いピンク色の花ビラが空を舞う。
「今日から二年生かぁ…」
櫻井美優は、校門の前で小さく呟いた。
新しいクラス。
新しい教室。
そして、新しい一年。
期待と不安が入り混じった気持ちで、二年三組の教室へ向かった。
ガラガラツ。
教室の扉を開けると、すでに何人かの生徒が集まっていた。
「あっ、美優!」
後ろから声がした。
振り返ると、親友の水野莉子が笑顔で手を振っている。
「莉子!同じクラスだね!」
「やったー!今年もよろしくね!」
二人は笑いながら席順の紙を確認した。
「えーっと、美優は…窓側の三列目!」
「莉子は?」
「一番後ろ!」
「離れちゃったね!」
「でも休み時間に会えるじゃん!」
美優は少し残念そうにしながら、自分の席へ向かった。
すると
「あ、ごめん。そこ俺の席!」
突然、後ろから男子の声がした。
「えっ?」
振り返ると、背の高い男の子が立っていた。
少し明るい茶色の髪。
優しそうな目。
そして、爽やかな笑顔。
「俺、藤堂悠真。よろしく!」
「あ、櫻井美優です。よろしくね!」
「隣の席だな。これからもよろしくな!」
そう言って悠真は笑った。
美優は思わず目を逸らした。
(…なんだろう。この気持ち!ちょっとドキッとしたかも!?)
そのとき、担任の先生が教室に入ってきた。
「はい、みんな席についてー!」
新しい一年が始まった。
午前中の授業が終わり、昼休み。
美優が机の上にお弁当を広げていると、悠真が
話しかけてきた。
「櫻井さんだったっけ?一緒に食べない?」
「えっ、私?」
「うん。他に誰がいるんだよ(笑)」
「そ、そうだね!」
美優は少し笑った。
そこへ莉子がやってきた。
「あれ?美優、もう仲良くなってるじゃん!」
「ち、違うよ!」
「俺、藤堂悠真。よろしく!」
「水野莉子で~す!よろしくね!藤堂くん!」
三人は一緒に弁当を食べ始めた。
「美優ってさ、普段何してるの?」悠真が尋ねた。
「えっと、小説を読んだり、音楽を聴いたりかな。」
「へえ、どんな音楽?」
「いろいろ聴くよ」
「今度おすすめ教えてよ!」
「うん!」
そんな何気ない会話が、何故か嬉しかった。しかし、その会話を聞いてた莉子は嫉妬してた。
(美優って男子の前でデレデレして何かムカつく!私だって悠真くんと話したいのに!)
放課後。
美優が帰ろうと昇降口へ向かってると、後ろから声がした。
「櫻井!」
振り返ると、悠真が走ってきた。
「これ、落としたよ!」
差し出されたのは、美優の小さな桜色のヘアピンだった。
「あっ、ありがとう!」
「大事なもの?」
「うん。お母さんにもらったものなんだ!」
「そっか。無くさなくてよかったな!」
悠真は笑った。
そして、少しだけ間を置いて言った。
「じゃあ、また明日な。美優!」
悠真の背中が遠ざかっていく。
美優はヘアピンを握りしめた。
その様子をずっと物陰から莉子が羨ましそうに見ていた。
この日、美優はまだ知らなかった。
友達の莉子から嫉妬されて、恋のライバルになっていくこと。




