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〜王都で虐げられた私が魔法商会を支配する〜  作者: レノスク


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第7章 貴族社会の視線と元婚約者の噂

下級貴族の夫人が去った翌日から、

王都市場の“空気”は、はっきりと変わった。

それまでエリナを見ていたのは、

一般客と、競合商人の警戒の目だけだった。

だが今は違う。

「……見られている」

視線の質が変わったのだ。

値踏みするような、試すような、

そして――評価する側の目。

貴族社会は、噂を軽んじない。

特に「平民が例外的に信用されている」という話には、異様なほど敏感だ。

「下級とはいえ、あの夫人が買ったそうだ」 「薬の説明が誠実らしい」 「危ない真似をしない商人だとか」

それらの情報が、

“社交の場”という閉じた世界で、静かに回り始める。

エリナは、その変化を肌で感じていた。

(来る……質問が増える)

予想通りだった。

この日、彼女の台車を訪れたのは、

これまでとは明らかに違う層――

使用目的が個人的ではない客たちだった。

「子ども向けでも使えますか?」 「長期使用で問題は?」 「記録は残しています?」

どれも、責任を伴う立場の人間の質問だ。

エリナは、少しだけ言葉を選びながら答えた。

「安全性は確認していますが、万能ではありません」 「使えない方も、確実にいます」 「その場合は、別の方法を勧めます」

それは、

“売上を捨てる覚悟がなければ言えない言葉”だった。

だが――

だからこそ、信頼は積み上がる。

「……この人、無理に売らない」 「危険な点を隠さない」

貴族にとって最も恐ろしいのは、

「使った後に問題が起きること」だ。

その恐怖を、

エリナは正面から理解していた。

一方で。

レヴィ商会は、焦っていた。

「なぜだ……!」 「なぜ、貴族があんな台車に……!」

彼らは“実績”と“規模”を誇りにしてきた。

それが、説明と態度だけで崩されていく。

そして、

貴族が関与し始めた瞬間――

競争は、単なる市場争いではなくなった。

レヴィ商会は、

「力で潰す」ことを選べなくなる。

エリナは、その変化を理解していた。

(もう、露骨な妨害はできない)

だからこそ、

彼女は次の一手を、慎重に待った。


その噂は、

市場ではなく、貴族社会の内側から流れてきた。

「……そういえば、聞いたことがある」 「昔、フェルナンド家の娘と婚約していた男がいたな」

エリナの手が、一瞬だけ止まる。

(来た……)

その名を、彼女は忘れたことがなかった。

忘れようとしたことも、ない。

元婚約者――

かつて彼女を「価値がない」と切り捨てた男。

「今は、あまりうまくいっていないらしい」 「商才があると持ち上げられていたが……」

噂は、断片的だった。

だが、十分だった。

婚約破棄の理由は、

「平民に近い考えを持つ女は不要」というもの。

その判断が、

今、静かに評価され直されている。

エリナは、何も言わなかった。

否定もしない。

肯定もしない。

説明もしない。

――それが、最も残酷な対応だと知っていたから。

「本人は、何も語らないらしい」 「逆に、余裕があるように見える」

噂は、

“語られないことで膨らむ”。

一方、元婚約者の側では。

「……本当に、あいつなのか?」 「王都市場で成功している商人が?」

彼は、信じられずにいた。

自分が切り捨てた女。

役に立たないと判断した存在。

それが今、

貴族に評価され、

市場を動かしている。

「……偶然だ」 「すぐに化けの皮が剥がれる」

そう言い聞かせなければ、

自分の選択が“誤り”だったと認めることになる。

だが――

現実は、容赦しない。

エリナの商会には、

貴族からの“継続的な問い合わせ”が入り始めていた。

それは、

単発の購入ではなく、

取引関係の打診。

元婚約者の耳に届いたのは、

その事実だった。

「……社交の場で、比較される?」

彼の背筋に、冷たいものが走る。

エリナは、夜の帳が降りた市場で、

一人、台車を片付けながら空を見上げた。

(月が、明るい)

復讐のために進んでいるわけではない。

だが――

過去が追いついてくるのなら、避ける理由もない。

次に待つのは、

避けられない“再会”。

そして、

完全な立場逆転。

物語は、

貴族主催の商談会へと向かっていく――。

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