第4章:ライバル商会との初接触と策略の芽
翌朝、王都市場は昨日以上に活気づいていた。魔法の光を放つ商品、呼び声、馬車の軋む音が混ざり合い、王都独特の喧騒が広がる。
エリナ・フェルナンドは小さな台車の前で、慎重に商品を並べ直す。昨日の小さな勝利で、客の目は少しずつ彼女に注がれるようになっていた。
「今日も失敗はできない……」
彼女は小さく息を整えながら、商品の並べ方や価格、顧客への説明方法を再確認する。魔法の小瓶を手に取り、光の反射で商品の魅力を最大限引き出す。
その時、市場の端から人が近づいてきた。長いマントを羽織った人物、王都でも名の知れた中規模商会「レヴィ商会」の使いだった。周囲の商人たちを威圧するような雰囲気を漂わせながら、じっとエリナを観察している。
「小娘が市場で商売か……」
冷たい声が市場に響く。彼の目は軽蔑に満ち、明らかに挑発している。
エリナは微笑みを浮かべ、落ち着いて商品の陳列を続ける。
「焦らず、慌てず……負けたら信用を失うだけ」
前世で培った心理戦の知識と販売戦略が、自然に頭を巡る。
市場に人々が集まり始める。エリナは魔法薬の効果を一つ一つ実演し、購入者に商品の価値を見せる。手のひらに少量を落とすと、光と香りが漂い、通りかかった客たちが思わず足を止める。
「なるほど……確かに効きそうだな」
小さな声でつぶやく客の表情に、エリナは心の中で微笑む。
一方、レヴィ商会の使いは高額商品を見せびらかし、客に声をかける。
「これが最高級の魔法薬だ! 小娘の品など比べ物にならん!」
しかし、客はエリナの実演と丁寧な説明に惹かれ、順番に購入を決めていく。レヴィ商会の使いは焦り、次々と値下げで対抗しようとするが、逆に信用を失ってしまう。
心の中でエリナは小さく笑った。
「ふふ……初めての大規模ざまぁ……序章に過ぎない」
午後、商会台車の横で、エリナはノートを開き、次の戦略を練る。
「ここからが本番……ライバルを完全に出し抜く」
ノートには、魔法商会の拡大計画、仕入れルート、値付け戦略、限定商品販売のタイミング、ライバル商会の弱点分析が詳細に書き込まれていた。
市場を見渡すと、レヴィ商会の使いはまだ遠巻きにエリナの台車を監視している。明らかに苛立っている。
「彼も私の策略に気づき始めた……ふふ、面白くなってきたわ」
エリナはテスト戦略を実行することにした。
限定商品の小瓶を少数だけ陳列
価格はやや高めに設定
「これが最後の入荷」と声をかけて希少性を強調
結果、客は列を作り、購入競争が自然に生まれた。レヴィ商会の使いは大量の商品を並べ、値下げ競争を仕掛けるが、客はエリナの「希少性戦略」に引き寄せられ、結局レヴィ商会は売れ残る。
「ふふ……これが策略の力……そして、これがざまぁの連鎖の始まり……」
夜、王都市場の灯りが石畳を照らす中、エリナは小さな勝利の余韻に浸りながら未来を見据えた。
「次は、もっと大きな取引……王都全体を動かしてみせる」
月明かりに照らされる彼女の瞳は、希望と策謀、そして楽しげな笑みで輝いていた——。




