第2章:初めての取引と小さな勝利と初めての復讐
朝の王都市場は、昨日よりもさらに活気づいていた。商人たちの声、魔法の光で輝くアイテムの数々、馬車の軋む音が混ざり合う。その中心で、エリナ・フェルナンドは自分の小さな商会台車を慎重に整える。
「今日こそ、ちゃんと利益を出すんだから……」
小さな声で呟きながら、彼女は商品の並べ方や値札の付け方を前世の知識で微調整する。目の前を通る人々の流れを観察し、どの位置に置くと目を引くか、どの価格なら購入につながるかを考える。
すると、一人の青年商人が立ち止まった。目が鋭く、周囲の小商人を見下すような雰囲気を漂わせている。
「ふん……小娘がこんな小さな台車で勝負? まあ見ていよう」
メリオスの表情を思い出させるその青年は、後にエリナのライバルとなる存在だった。
しかし、エリナは動じない。前世で培った価格戦略を駆使して、客一人一人に商品の価値を丁寧に説明する。手元の魔法薬が、どんな場面でどれほど役に立つか、具体的な効果まで語り、実演を交える。
「おや……なるほど、これは便利そうだな」
最初の客が笑顔で購入する。続いて、周囲の人々も興味を示し始め、台車は少しずつ活気づく。
その時、噂を聞きつけたメリオス風の青年商人が不機嫌そうに近づき、周囲の客に値下げを促し始める。
「この値段じゃ売れんだろ、俺ならもっと安くしてやるのに」
エリナは冷静に対処した。小声で自分の戦略を確認し、商品を限定数だけ残し、逆に「今買わないと手に入らない」と見せることで客の購買意欲を刺激する。
結果、青年商人は商品を余らせ、周囲から笑いを買うことになった。エリナは小さく微笑む。
「ふふ、初めての勝利……でも、これからが本番」
夜、王都市場を見下ろすエリナの瞳は、決意と策謀で光っていた。小さな勝利は、確実に次の大きな勝利への足がかりになる——。
数日後、王都市場に再び人々が集まる。エリナの商会は少しずつ評判を得ており、台車の前には客が絶え間なく並んでいた。
そんな中、昨日の青年商人——ライバル予備軍——が、今度は市場の中心で大きな魔法アイテムを高値で仕入れ、周囲に見せびらかしていた。
「俺の方が有利だ、誰もこの価格には勝てまい」
自信満々に言い放つ青年。しかし、仕入れたアイテムはその効果を正確に理解していなかったため、実際に使うと不具合が生じ、客は次々と不満を漏らす。
「こんなはずじゃ……!」
青年は慌てふためき、周囲から失笑を買った。エリナはそれを静かに見守り、心の中で小さくつぶやく。
「ふふ……これが、初めてのざまぁ……」
その夜、エリナは小さな勝利を手に、さらに商会の拡大計画を練る。
どの商材を次に仕入れるか
限定商品で客を引き寄せる方法
ライバル商人を巧妙に出し抜く策略
王都市場の灯りが石畳を照らす中、エリナの心は高鳴った。小さな復讐が、これからの王都全体の復讐劇の序章に過ぎないことを、彼女は知っていた。
「次はもっと大きな復讐……王都中を私の手のひらで遊ばせてみせる」
月明かりに照らされたエリナの瞳は、希望と策謀に満ちて光っていた——。




