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身の手入れ

「…て…」


声がする


けどまだ寝たい


「…てー…」


まだ静かに眠ってたい


「…よー?…」


コハクの声だ


多分まだ寝させてくれるだろう


ザバァ!!


私「!?」


はね起きる


顔にバケツで水を叩きつけられる


顔中水をかけられる


私 「ワプッ!!」


慌てて息をする


しかし水の感覚はない


私 「え…?」


コハク 「おはよぉお兄さん」


布団の上にコハクが乗っていた


私 「は、へ?」


コハク 「おはよ」


コハクは目を細めてにやにやとこちらを見る


私 「さっき水が」


顔を触る


何も濡れてなかった


服を見る


同じく濡れてなかった


私 (え?なんで?)


コハク 「言ったじゃん起こすって」


私 「今のコハク?」


コハク 「そうだよー」


布団を剥ぐ


私 (濡れてないよな)


服を触るがやはり濡れてない


しかし起きた時にバケツで水をかけられたような


そんな感覚を味わった


コハク 「ほら、起きよ?」


私 「うん」


渋々起きる


私 「今何時?」


コハク 「7時くらいだよ?」


私 「そかそか」


ベットから降りる


ちゃんと寝たからか体が軽かった


アンナ 「あ、おはようございます」


アンナが来る


私 「おはよ」


アンナ 「服届いてましたよ」


私 「やっぱ速いな」


私 (速達で頼んだとはいえすごいな)


コハク 「とりあえずご飯食べて身だしなみ整えよ?」


私 「身だしなみなー」


私 (髭とかはたまに剃ってるんだけど)


コハク 「身だしなみというよりかは最低限だけでもすると変わるよ?」


キッチンに向かう


アンナとコハクも着いてくる


アンナ 「ご主人正直もみあげも処理してないし眉もボーボーだし髭もたまに反ってる感じなのでやばいですよ?」


私 「人付き合いしないからいらないんよな」


アンナ 「じゃあそうですね」


アンナは少し考え込む


私は冷蔵庫からカレーパンを取り出す


アンナ 「私と一緒に出かけるのにご主人がかっこ悪いと嫌なので私たちのために手入れしてください」


私 「そう来るか」


アンナ 「いや、別にご主人と居れるならどの格好でもいいんですけどせっかくならかっこいいご主人と居たいんですよ」


私 「そこまで変わんないと思うけど」


アンナ 「変わりますよ」


コハク 「そうだそうだー」


コハクもニヤニヤとした声で便乗してくる


私 「まぁ、そう言うなら」


カレーパンを食べ終わる


コハク 「お昼に行くなら結構時間あるしやろやろ」


コハクが背中を叩く


私 「分かったやるから」


アンナ 「ほらキビキビ動きます」


アンナも同じくしっぽを叩く


私 (割と2匹強引なんだよな)


頭をポリポリとかく


そして私は風呂場に押し込まれた


アンナ 「私は届いた服を開けるのでコハクにあとは任せます」


コハク 「というわけで私がやるよー」


アンナは風呂場から出る


私 「カミソリとひげそりと」


コハク 「後、クリームくらいでいいかな」


棚から道具を取り出す


コハク 「髪の毛はまた置いとくとしてそこ以外で剃れるの剃ってこうか」


私 「動画見ながらの方がいい?」


コハク 「そうだね一旦お手本見ながらやった方がいいと思う」


スマホで動画を見る


【初心者用メイク】


コハク 「そうだねこういうのがいいかも」


私 「ならこれを見つつかな」


動画の指示に従ってもみあげを剃る


私 「にしてもコハクってしっかりしてるよね」


コハク 「ん?そう?」


私 「うん」


毛を剃りながら話す


私 「なんというかお姉さん気質というか」


コハク 「あー、まぁね」


私 「あと、真剣に物事をする時はタメ口だけど声伸びない感じとか」


コハク 「えっ 嘘?」


私 「本当だよ」


今日起きた時とかは割と間が伸びた感じで話していた


しかしアンナを止める時や今こうして監視している時


真面目な場面だと声質が変わるなと思っていた


コハク 「お兄さんよく見てるね」


私 「まぁなんとなくだけど」


コハク 「んー、お兄さんはどっちの方がいい?」


私 「今の喋り方の方がなんかいいかな」


コハク 「ならそうしよ」


コハクの独特な喋り方


最後の語尾を伸ばしてゆったりした喋り方


それよりは程よいテンポだけどタメ口


その方がなんかしっくり来た


私 「これでどう?」


こめかみの毛を剃り終わる


確認のためにコハクに見せる


コハク 「いい感じだね」


私 「なら次は髭か」


顔に髭剃り用のクリームを塗る


私 (あんまりやんないから慣れてないんよな)


カミソリを持つ


私 (慎重にやるか)


髭を剃り始める


その間コハクは私の足元で毛繕いをしていた


私 (にしてもここまで身だしなみ整えたのは久々だな)


高校の最初の頃


その時は人付き合いもしていたためきちんとしていた


今はもう面倒くさいし誰もかかわらない


やる理由がなかった


私 (人付き合いをしたくないって思ってるのも原因だな)


人を信じられない


人付き合いが面倒くさい


それでしなくなった


髭を剃り終わる


そして顔を水で洗う


私 (さっぱりしたかな)


コハクは洗面台に飛び乗って私を見る


コハク 「あ、だいぶ変わるねかっこよくなってるよ?」


私 「そう?」


コハク 「うん!!」


コハクは私を褒める


私 (お世辞でも嬉しいな)


私 「あとは眉?」


コハク 「そうだね眉は軽く整えるのと眉間の繋がってるのを剃ればいいと思う」


私 「ん」


眉の手入れをする


きちんとした道具がないから最低限だけだ


私 (化粧道具とかなんも買わなかったからな)


眉間の毛を剃る


コハク 「お兄さんもう少し右側剃って」


私 「ここ?」


コハクに言われた通りに剃る


コハク 「そうそうそのくらいでいいかな」


私 「まゆ、髭、もみあげやったしとりあえずこれでいい?」


コハク 「大丈夫だよー お兄さんめっちゃさっぱりしたよ」


私 「そうだねこうして見ると随分やらなかったんだなーって思う」


私 (だいぶ変わるもんだな)


鏡を見る


前まではもみあげも毛が生えて髭も伸びてまゆもボサボサだった


しかし今は余計な毛はなく、顔はさっぱりしている


久しぶりに身だしなみを整えた


コハク 「にしてもお兄さん顔は悪くはないからちゃんとすればいいのに」


私 「んー、少し人付き合いが苦手になってね」


コハク 「それで諦めてたんだ」


私 「そういうこと」


コハク 「んー」


コハクは少し悩んでいるような声を出す


私 「ん?なんか引っかかる?」


コハク 「まぁ色々ね とりあえず顔洗ってさっぱりしよ?」


私 「ん?うん」


私 (なにか気に触ること言ったかな)


洗顔フォームを手に取って顔を洗う


私 (コハクもアンナも私の過去や嫌な話とかになると悩む感じなんだよな)


顔を洗って水で泡を流す


私 (にしてもコハクとアンナが来て色々変わったな)


部屋が変わった


身だしなみが変わった


服も変わった


元々諦めていた


普通は無理だと思っていた


しかし徐々に何かを取り戻している感覚になった


私 (まぁ、人付き合いをする気は無いかな)


あんまりしたくない


怖い


昔みたいに虐められたり無視をされたり


大学生にもなってそれは無い


しかし怖いものは怖い


それに今はもう距離を取られてる


むしろ取られるために顔の手入れもせず近づかれないようにしたのかもしれない


私 「ぷはっ」


水を止める


コハク 「はいタオル」


手にタオルが触れる


私 「ありがとう」


タオルで顔を拭く


私 「コハク」


コハク 「どうしたの?」


私 「コハクは私がちゃんとしてる方がいい?」


顔をタオルから離す


コハク 「んー」


コハクの方を見るとこっちを見ていた


コハク 「別にちゃんとしてなくてだらしなくてもいいかな」


私 「そうなんだ」


コハク 「うん」


私 (じゃあなんでここまでしてくれるんだろう)


コハク 「ただね」


コハクは続ける


コハク 「かっこいいお兄さんと入れたらいいなーっていうわがままかな」


私 「それはまた大変なわがままだ」


コハク 「まぁ、今もかっこいいけどね」


私 「もっとかっこいい人はいるよ」


コハク 「そう?私からしたらどの人も汚らわしいよ?」


コハクはさも当然のように言う


私 「思ってたけど割と過激だよね」


コハク 「まぁそりゃあね」


カゴに使ったタオルを入れる


コハク 「まぁ、正直それ以外に復讐したいからかな」


私 「復讐?」


コハク 「うん」


私 「誰に?」


コハク 「お兄さんに害した人だったり色んな人」


私 「物騒だね」


コハク 「嫌?」


嫌と聞かれて考える


私 (別に復讐したいわけは無いんだけどな)


復讐心は無い


諦めていた


コハク 「そんな酷いことはしないよ?」


私 「そうなの?」


コハク 「だってお兄さんそこまで望んでないでしょ?」


私 「まぁね」


コハク 「だからなんも罪もなくてただただ嫌なやり方するよ」


私 「まぁ直接傷つけないでね」


コハク 「善処はするね」


私 (復讐か)


本当に考えてなかった


何よりそれをする気力すらなかった


私 (まぁ、見返したいとは思わなくは無いけど)


もしも


もしも見返せたら


そしてら少しは気持ちは晴れるのだろうか


私 「まぁとりあえず着替えるか」


コハク 「そうだね」


コハクと風呂場を出る

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