忠義
私 「ごちそうさま」
パンを食べ終わる
アンナ 「ご主人は自炊とかしないんですか?」
体を撫でられているアンナがこちらを見て問いかける
私 「しないね」
アンナ 「なんでまた」
私 「あー あのキッチンで料理はできないかな」
アンナ 「確かに」
私 「まぁとりあえずはゴミ処理とかしないとね」
キッチンは食器が溜まってゴミが散乱している
あそこで火を使ったら大惨事は免れない
アンナ 「私も掃除手伝いましょうか?」
私 「気持ちだけ貰っておくよ」
私 (そろそろ掃除しないとな)
自炊もしてこなかった
面倒だったから
部屋が綺麗な時から食生活は偏っていた
アンナ 「…」
アンナはそっぽを向いて撫でられる
私 (食事はずっとインスタントとかコンビニ弁当だったな)
しばらくアンナを撫でた後に手を離す
アンナ 「おしまいですか?」
不機嫌そうな声色で言う
私 「そろそろ掃除の続きしないとね」
私 (なんか癪に触ったかな)
ベットから立ち上がる
アンナ 「私も手伝いますよ」
私 「んー大丈夫だよ?」
アンナ 「お願いです手伝わせてください」
アンナの尻尾が私の手に巻き付く
私 「えーと」
アンナ 「お願いします」
アンナの方を見る
アンナはこちらを真っ直ぐと見ていた
私 (まぁ、いいか)
私 「ならアンナにはゴミ袋を持って口を開いてもらってもいい?」
アンナ 「分かりました」
アンナもベットから降りる
私 (コハクは寝てるか)
コハクの方を見る
枕の上で丸まって眠っていた
私 「ありがとうアンナ」
アンナ 「いいですよまた後で撫でてくださいね」
私 「まあいいけど」
私 (対価がそれでいいのかな)
アンナと一緒にゴミ袋を取りに行く
アンナ 「にしてもご主人随分部屋汚くしたんですね」
私 「まあそれに関しては何も言えないよ」
頭をポリポリと搔く
私 (袋足りるかな)
棚からゴミ袋を取り出す
アンナ 「なんでここまで汚くしたんですか?」
私 「ははは」
愛想笑いで誤魔化す
アンナにゴミ袋を渡すと尻尾で今日に開く
私 「おー」
私 (本当に器用だな)
感嘆の声を漏らす
アンナ 「まあ割と使い勝手はいいので」
アンナはゴミ袋の持ち手にしっぽをからませてゴミ袋の口を開く
私 「始めようか」
アンナ 「はい」
ゴミを袋に入れていく
物を整理する、整頓するなんてまだまだ
先に不必要なゴミを処分して作業できるところを作る
その作業すら怠っていたツケが回ってくる
アンナ 「ご主人は面倒臭がりなんですか?」
私 「まぁそうだね」
アンナ 「意外ですね」
私 「意外?」
ゴミを捨てながらアンナと話す
アンナ 「面倒なら私たちを見ないふりするので」
私「あー」
アンナがゴミでいっぱいになった袋をしっぽで結ぶ
そして新しいゴミ袋の口を開く
私 「まぁあれはなんだ 見て見ぬふりしたら後味悪いからしただけだよ」
アンナ 「後悔しないために助けたのですか?」
私 「嫌な言い方だけどでもそうだね」
私 (あのまま離れたら後味悪いし)
あの時目が合った
二匹の痩せこけた猫と
その時に見て見ぬふりもできた
けど気まぐれにも助けた
アンナ 「そうなんですね」
私 「ごめんね助けたかったとか正義とかそういうかっこいい理由じゃなくて」
アンナの方をあまり見れない
目線をつい逸らしてしまう
私 「格好つかないね」
思わず乾いた笑いが出る
アニメのヒーローや主人公のように
格好良くできなかった
格好なんかつかなかった
アンナ 「んーご主人は少し誤解してませんか?」
私 「誤解?」
私 (私が何かを勘違いしてる?)
思わず手を止めてアンナを見る
アンナ 「私たちは結果的にご主人に救われたんですよ?」
私 「まぁそうだね」
アンナ 「ご主人がどう思って私たちを拾ったにしろ私たちからしたらご主人は恩人で何よりも格好いい人間ですよ?」
アンナは当然かのように言う
私 「格好いいのかな」
分からない
ただ、何となく後悔をしたくなくて餌を上げた
それ以上もそれ以下もない
動機なんかそんなものだ
私 「多分アンナが思うよりも私は綺麗な人間じゃないよ」
手を無理やり動かす
じゃないとなにか真っ黒になってしまいそうで
壊れそうで怖かったから
アンナ 「そうですか」
アンナは悲しそうに呟く
私 「ごめんねなんか」
アンナ 「いえ、いいですよ」
アンナはゴミでいっぱいになった袋の口を結ぶ
私 (ごめんね私が拾っちゃって)
後悔の念が出る
覚悟を決めたはずなのに
一時的な興奮だったのだろうか
自分の中の何かが黒く染っていく
アンナ 「ご主人がどう思っても私たちはご主人に救われましたし感謝をしています」
私 「うん」
目を合わせないように
そうしてゴミを入れていく
アンナ 「ご主人」
私 「どうした?」
アンナ 「ご主人って生きることが面倒になってませんか?」
私 「っ」
思わず手が止まる
言い当てられた
何事にも面倒になっていた
いじめられていた過去がフラッシュバックする
そうして諦めていた
壊れきっていた
アンナ 「やっぱりですか」
私 「凄いなぁアンナは」
私 (まだ会って数日もたってないのに)
手を無理やり動かそうとする
しかし動かなかった
立ったまま言葉を紡ぐ
私 「多分そうなのかも」
努力はしていた
耐えようともしていた
けど無理だった
誰にも救われなかった
親も周りも誰も
私を見てくれなかった
私 「全部に諦めたんだ」
人と関わることがないから
部屋を綺麗にする理由もなく
生きる理由がないから
自分の体を大事にせず
何もかもに諦めて無気力に生きていた
涙があふれる
私 「ごめんね」
アンナ 「何がです?」
私 「わかんない」
無性にアンナとコハクに罪悪感が湧く
悪いことも何もしてない
なのに何故か罪悪感が湧いてくる
私 「ごめんね」
涙を拭う
私 「みっともないな私」
アンナ 「ご主人」
アンナがゴミ袋を置いてこっちに近づく
私 「何?」
アンナ 「しゃがんでください」
私 「え?うん」
言われるがままにしゃがむ
アンナ 「こうしましょう」
アンナは尻尾で私の首を引き寄せる
アンナの顔との距離が近くなる
私 「うわっ」
びっくりする
アンナ 「私とコハクはご主人に救われました これはいいですか?」
私 「うん」
アンナはまっすぐこちらを見る
アンナ 「なので私とコハクはご主人の生きる理由になりますよ」
私 「生きる理由?」
アンナ 「はい 生きる理由です」
私 「アンナとコハクが?」
アンナ 「私たちが救います 分かりましたか?」
はっきりとした口調で言う
私 「え?いきなりすぎて待って」
アンナ 「返事はわかったかはいです 分かりました?」
私 「え?分かりました?」
私 (アンナとコハクが私を救う?どうやって?どうして?)
考えがまとまらない
アンナ 「いい返事です」
引き寄せられていたしっぽが離れる
アンナ 「コハクにも話さないとですし少し休憩にしましょうか」
私 「わかった?」
疑問形で返事をする
アンナはベットに向かう
コハクはいつの間に起きていたのかベットからこちらを見ていた
私 (びっくりした)
立ち上がる
私 (けど…)
誰かに真っ向から向き合ってもらって
そして救われると言われたのは初めてだった
そしてアンナとコハクに救われたい
そう考えてしまう自分がいた
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