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ポンコツ錬金術師、魔剣のレプリカを拾って魔改造したら最強に ~出来損ない同士でスローライフを目指していたら、魔王と勘違いされました~  作者: 椎名 富比路
第三章 炎VS氷! 魔剣同士の激突

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第21話 ノーム族の科学者《サイエンティスト》

 メガネの少年が、武器をしまう。白いシャツは黒ずんでおり、サスペンダーつきの半ズボンという出で立ち。


「ケガはしていませんか? これは新商品の【拡声器】といって、音を増幅させる装置なんです! この装置があれば、セイレーンの歌もシャットアウトできるんですよ! これで、海からくる魔物も一網打尽にできます! すごいでしょ!? 絶対利益が出ますって!」


 少年は、自己紹介より、武器の説明から始めた。


 この人が行商人さんの言っていた、商店の息子さんかな。


 行商人さんが、咳払いをする。少年にさりげなく、名乗るように催促した。


「……おっと、申し遅れました。ボクはシューテファンといいます。そちらの方と取引させていただいている、クロスボーデヴィヒ財団の愚息です。シューとお呼びください」 


 シューくんは、わたしたちが行商人さんの知り合いとわかり、「もう自分の説明はしているものだ」と勘違いしていた。

 だから、自作商品の説明から入ってしまったのだとか。


 わたしたちも、名乗る。


「キャラメ・ルージュさん、クレア・ナイフリート。そちらのおねえさんは、フワルーさんとおっしゃるんですね」


「ふわい」


 フワルー先輩が、上の空で返事をした。


 ああ、恋しちゃってるよぉ。


「ノーム族の方だったんですね?」


「はい。父がノームの【商人(マーチャント)】です。ボクは【科学者(サイエンティスト)】ですね。商売より、研究のほうが好きです」


 クロスボーデヴィヒはとある事業が大成功して、財団を率いているそうだ。


「では、魔物が去ったうちに街へ参りましょう。案内します」


「お願いします」


 わたしたちは、シューくんについていく。


「実験かなにか、してた?」


 シューくんに尋ねてみる。


 お金持ちのお坊ちゃまっぽいが、服の汚れはイジメによるものではなさそう。匂いからして、どうやら実験などで服を汚したみたい。顔にもやや黒いシミが目立つ。


「よくわかりましたね」


 またシューくんが、拡声器という発明品を取り出した。


「この拡声器を作っているときに、服を汚してしまったみたいです。商人さんに売れるかどうか確認したくて、自家用の馬車を飛ばしてきました。道中で運悪く、魔物に襲われてしまったのですが」


 着替えようと思っていたが、早く見せたかったのだという。なんつー行動力か。


「ボクは父の元で、研究開発のお手伝いをしています。もっぱら、開発ばかりしていますけどね。様々な武器やアイテムを、開発しているんです」


 といっても、武器はほとんど趣味だという。たいてい、船舶用のエンジンや、頑丈な馬車の開発をメインとしているとか。


 たしかに、シューくんの乗っている馬車は、薄い鉄製だ。あれだけのサハギンを相手にして、鉄製の馬車は傷ひとつない。


「このメガホンガンの試運転には最適の相手でした。これは売れるかと」


「え、ええ。そうですね」


 シューくんが話している間、行商人さんが苦笑いをする。


「実際のところ、彼の研究はどうなんです?」


「ごらんのとおりです」


 行商人さんが、アイテムボックスを見せてくれた。


 ボックスには、在庫が大量に入っている。


「実のところ、売上は芳しくありません。私のアピールが足りないのもありますが、確実性がないんです」


 一見しても、アイテムの用途がわからない。武器もあるみたいだが、これはなんだろう?


「それは、服の上に付ける仕込み投げナイフです。袖に通して腕を伸ばすとナイフが袖から飛び出すんです」


 馬車を止め、シューくんが実践する。たしかに、腕を伸ばすと袖からナイフがビュッと飛んでいった。木の幹に、ナイフが当たる。肩から上腕を通って、袖から飛び出すのか。


「アサシン向けに開発したんですが、売れませんでしたか?」


「私もいいと思ったのです。けれど、『普通にナイフを投げたほうが早い』と言われ、不評でした」


「そうでしたか。残念です。この【三方向に飛ばせるクロスボウ】なんて、自信作だったんですがねえ」


 シューくんが、変わった形のクロスボウをボックスから取り上げた。


 開発者のシューくんは、なぜ売れないのか不思議そうにしている。


「一発一発が的確に当たれば、さして問題はなかったんです。けど、敵が常に同じ方向から襲ってくるわけではないので」


 行商人さんの言葉には、やんわりさがうかがえた。


 ああ……売れない商品を押し付けられ続けていたんですね。わかります。

 

 なるほど。この人がシューくんを苦手とする理由、なんとなく把握。


「売れたのは?」


「携帯食くらいです」


「ダシ付きの乾燥うどんですね? あれは発案こそボクですが、我が社が開発したものです。ボクの功績ではありませんね」


 自分でアイデアを出したんだから、自分の実績だと自慢してもいいはずだが。シューくんは乾燥うどんの成功を、会社の成果だと語った。


「ううむ。ボクもまだまだ、勉強が足りません。やはり、父のようにはいきませんね」


 腕を組みながら、シューくんは考え込む。


 ノリはいいが、ちゃんと反省する。


 好感は持てる感じだな。


『コイツ相手に、アタシ様はしゃべらないほうがいいね』


 レベッカちゃんが、脳内に直接語りかけてきた。


 たしかに、会話できる魔剣なんて、研究対象にされそう。


「みなさんは、こちらには商売でいらしたので?」


「なんでわかるんです?」


 こちらは旅の目的なんて、何も話していない。


「護衛にしては、変です。商人さんが先頭を歩いているので。商人さんがファッパを案内するということは、みなさんは道に迷ったか、ビジネスかなと。それに、ウッドゴーレムの形も、構造を逆算すると、店舗になるんですよね。そのままファッパで、店を建てるおつもりなのかなと」


「お店だってことまで、わかるの?」


「だって、ほら」


 シューくんが、一体のゴーレムを指差す。


 ああーっ、モンスターの一体が、看板を担いでいたじゃん。


 わたしでさえ、見ていなかったよ。


 大した洞察力だ。


「ウソですよ。この手紙を読んだんです。それで、商人さんが来るってのはわかっていました。商売をしたい友人を連れてくるので、紹介をするとの報告も書かれていましたし」


 シューくんが懐から紙切れを出して、ヒラヒラさせる。


 だよね。でないと、わたしたちとすれ違いになっちゃうよ。


「どこか具合が悪いのですの、フワルーさん?」


 クレアさんが、先輩のオデコに手を当てた。


 おお、察しが悪い。こういう話には、鈍感か?


「でしたら、馬車を止めましょうか?」


「ええよ。問題ないで」


 ポケーっとしたまま、フワルー先輩は返事をする。


 こんな乙女になった先輩、初めて見た。こういう子がタイプだったのか。たしかに、魔法学校にはいないタイプかもね。

 魔法学校の男子なんて、自己主張が激しくてイキった貴族か、ひねくれた口うるさい学者タイプばっかだったし。


 シューくんは人懐っこく、研究を楽しんでいるタイプだ。親が庶民出身だからか、本人の脂質かどうかはわからないけど。


「フワルー先輩、ああいう子がタイプだったんですね」


「めっちゃかわいい。素直な年下最高」


 あー。そういう趣味か。たしかに学校だと、年上か同年代しかいないもんね。最高でも、二歳下しかいないし。


 ファッパの門が、見えてきた。大きい街みたいだな。壁がどこまでも拡がっている。

「ボクが来たからには、もう安心ですよ。門も軽々と通って――」


「クロスボーデヴィヒ殿! 止まりなさい!」


 止められたじゃん。門番さんに。


「なんですか、門番さん! ボクがなにをしたと!?」


「あなたが一番、信用できません!」


 うわああ。門番さんにさえ、この言われよう。

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