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あの頃の夢の続き。 第0章  作者: フォルツァグランデ
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〜進路の悩み〜

2023年 9月29日 19時

ー埼玉スタジアムー


「ついに出場です!日本のプリンス!!

イングランドの名門リバプールから電撃移籍。

背番号 99 白銀(シロガネ) 寛也(ヒロヤ)選手です!」


これは私、白銀寛也が追い求めた理想。いわば幻想の話。


2014年 夏 中学3年。

名門 浦和ラッズジュニアユース


「なぁ、進路決めたー?」

との会話が飛び交う 真夏のテントの下。

当然ジュニアユースからユースへ上がるのが鉄板とされる中でも、ほかのチーム、高校の部活動という選択肢がある為エリートでもこの会話はある。


中学3年にして既に一度トップチームデビューしていた俺ももちろんユース行きがほぼ既定路線となっていた。

「ヒロはユース?」

と話をふってきたのは太刀川という親友。

サッカーになると相棒的な存在だ。

「あーどうだろうな」 と少し曖昧な返事。


俺は少し他人と感覚がズレている部分がある。

AB型だし先天的な両利きだ。無理もない。


夏だしそろそろ進路を決めないといけないということは理解している。両親はともかく、中学の担任、ジュニアユースのコーチにも耳がタコが出来るぐらい言われている


自問自答する。

「お前は何にそんなに迷っているのか」と

今まで順風満帆な人生を歩んできたがここにきて初めての葛藤だ。

ユースに上がれることは確定していた。

高校在学中にプロ契約だって取りかわせるだろう。


しかしそれが1つプレッシャーになっていたのかもしれない。

満員のスタジアム、圧倒的な声援、周囲からの期待。

全てを体感したら自分が自分じゃなくなる気がしていた。

自分は自分が図太いと勘違いしていた。

改めて16歳や17歳が一流のプロとして活躍しているのがすごいと感じた。


帰宅後、今日の試合を振り返りながらサッカーノートを書きずっと考えていた。

しかし一向に考えはまとまらずまた次の日へとうつってしまう。


見かねた両親は様々な高校のパンフレットを取り寄せてくれた。

はっきり言って両親は自分に甘い。

パンフレットを見ながら悩んでいるとスマホに

「ピンポ-ン」と通知が響いた。


"大鹿慎也" 「進路は決めたの?」

これは小学生時代俺を指導してくれたサッカーのコーチ

いわば恩師だ。

「まだ決め兼ねてます。」と返信。

「1度小学生の練習見に来てみないか?」と誘い。


今のままでは何も変わらないし、練習offだったので行ってみた。


安行センター 夜

「久しぶり」と声をかけてきたのは

元チームメイト 守護神酒匂と キャプテン錦戸だ。

旧友との再会は喜ばしい。


「2人は進路決めた?」とおもむろに聞いた。

2人とも相当な実力者だった為名門校への進学が決まっていた。

俺は進路をきめかねていると打ち明け

「どうやって決めたの?」と聞いてみた


すると2人は爆笑した。

おかしなこと言ったかなと思いつつも

2人は真剣な顔に戻りこう言った。

「試合見て直感」


よっぽど俺の方が笑いたくなった。

そんなことでいいのかなと悩みながらも小学生たちとボールを蹴り楽しんでいた。

練習後大鹿元コーチらと談笑していた。

「今はとにかく色々なチームのサッカーを見ろ」と言われた。

続けて

「ユースに上がること少しでも躊躇ったりマイナス感情が生まれたりしたらそれは違うんじゃねえの?」と言った。


腑に落ちた。


10月になりいよいよ進路を確定させていく時

埼玉県の選手権予選へと訪れた。


埼玉の古豪 武真高校 vs 川口作陽高校だ。

県16の対決にしては多くの観客が見守っていた。


武真高校は毎年県ベスト4には必ずくい込んでくる

言わずと知れた名門だ。

昔からポゼッションサッカーを主体としとにかくボールを握り続けるスタイルで一時は高校サッカーへ旋風を巻き起こした。

対する作陽高校だが公立校にしては毎年頑張っているなくらいの印象で特段色が濃いチームではなかった。


試合が始まると一転

武真高校は常に後手を踏み前半だけで0-2となっていた。

作陽高校はとにかく目まぐるしくポジションチェンジを行い数的優位を作り出し圧倒していた。

「なんだこれ」と周りから声が漏れる。


"ポジショナルサッカー"


ポゼッションとは異なり常に数的優位を確保するよう努め制圧していくスタイルだ。

ペップ時代のバルセロナを見ているような感覚に陥った。


試合は終わってみれば1-3と作陽高校が勝利。

初のベスト8となったのだ。


一緒に観戦していた父とサッカー談義をしながら帰宅していた。

作陽高校はスタメンとベンチメンバーほとんどが1、2年生で構成されていた。

志望校として武真高校を挙げていた俺だったが一瞬にして作陽高校のスタイルに飲まれたのだった。


帰宅後両親に熱弁

「あのサッカーなら俺が100%生きる。」

「あのチームを頂点まで引き上げてみたい。」

そんな自信を色々な支店から説明した。


もちろん両親は好きにするといい。と言ってくれた。

心做しかユース推しだった父親は寂しげな表情をしていたかもしれない。


早速色々な人に進路を決めたことを話した。

両親以外に一番に話したのはジュニアユースのコーチでも恩師でも担任でもない。


親友でありライバルの"安永圭渡"だ。

武真のジュニアユースチームで活躍する同じ中学のやつだ。

一番初めに入団したチームが一緒で小学2年までしかプレーしなかったがトレセンや中学で再会し練習がない日はほぼ一緒に行動していた。


「俺は作陽高校に行くよ。武真とはライバルになるな」

といった。

安永は武真高校ではなく知り合いの監督が新任として務める別の私立校へ行くことを聞いた。

そして担任やジュニアユースのコーチにも作陽へ行くことを伝えた。

もちろんジュニアユースのコーチには止められたが

もう決めたことなのでと言い断った。


担任がサッカー部の顧問だったこともあり

作陽高校への練習会へ口を聞いてくれた。



11月 練習会

そこには武真高校との1戦を見た埼玉の中学生が多く来ていた。中にはきっと進路を急激に変更したものもいるだろう。

アップを済ませゲームを行う指示があった。

1日限りのチームを組むのは結構好きだ。

チームメイトには東京ヴェルシティのジュニアユースに所属する実力者や地元の中学のサッカー部の人たちもいた。

練習会終了後に監督に呼び出され推薦を受けることが出来た。

公立校なのに推薦あるんだと思いつつ

1度決めたことに断る理由もないのですんなり受けた。


そこから日時はあっという間にすぎいつの間にかジュニアユースも最後の試合を追えていた。


相棒の太刀川は少し寂しそうにしながらも次は高校の舞台でライバルとしてやり合おうと声をかけてくれた。

ほかのチームメイトも快く送り出してくれた。

やり残したことはないと思っていたが少し寂しくはあった。



2015年 春

無事入試にも合格し川口作陽高校への入学が決まった。

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