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〜早く死にたい〜

 うーうーうーうー……警察のサイレンが聞こえる。


「後――地、――歳。どーーー栄養失――――だーーすね」


「――も、自分で金をーーーーーら食べーーいってーーー由ででーー?」


「全―――た迷惑なーーー」


 ふわふわと、声が聞こえる。いや、聞こえているのか?


「情けない」


 後ろから声をかけられる。母さんの声だ。


「本当に情けない。こんなに呆気なく死んで」


「早く死ねばいいのにって思ってた」


「こんなふうに死ぬなんて、人間らしくない」


 なんだ……?声が混じっていく……。ここはいったいどこなんだ?


「生きている価値がない」

「死んで当然」

「自分で生きようとしない」

「生き様が醜い」

「流されている様に死んでいる」


 暗い……何も見えない……!


 耳を塞ごうとするが、絶えず声が流れ込んでくる。


「きもい」

「死ね」

「ゴミ」

「うざい」

「価値がない」

「人に依存している」

「生きている意味がない」

「言い訳ばっかり」


 もう、やめてくれよ……!もう聞きたくない……!


「すぐに逃げる」

「劣等人種」

「障害者」

「つまらない人間」

「そういう人種」

「生まれつき劣っている」

「死んでも治らない」

「キチガイ」

「摘まれるべき人間」

「存在自体が嫌われている」


 もうやめてくれ!もういい、もううんざりだ!もうやめてくれよ……!


 ダシュッ。


 なんだ……?


 ザシュッ!ダジュッ!


 誰かが、誰かを刺している。


 ザクッ!ザシュッ!ガシュッ!ズシュッ!


 俺だ。刺されているのは俺だった。


 刺しているのは誰かもわからなかった。


 やめてくれ!俺の喉には力が入らない。


 俺が業火に焼かれている。


 俺が海に沈められている。


 俺が女性に溺愛されている。


 俺が地面に埋められている。


 俺がミンチで潰されている。


 俺がビルから飛び降りている。


 俺が電車に轢き殺されている。


 おれがおれがおれがおれがおれがおれがおれがおれがおれがおれがおれがおれがおgれ。

 おごrごあごあがろえrごえgろえおがおえrごあえおろえおろあえgろあえおrごあらえろがおrげあおgろげあおれおrげおられrごあおろあえgろえrがえれえれらおえrげらおれあおrgrごらおrrgろあgらおrごえあえgろあgろあgr。




「うああああぁあああっぁぁあああっぁあああああ!!!!!」


 気がつくとエヴァードの店先に俺はいた。


 今のはなんだ?今の圧倒的恐怖はなんだ?


「やめろぉおおお!やめてくれぇぇぇえええ!」


「ああ…あ…………ああぁ………ぅあぁ……」


 その声を聞いて俺は周りの奴らも同じ様に精神的なダメージを負っていると気づいた。


「どうだ、おらぁ!この!圧倒的恐怖!この狂凶のルージュ様に、楯突いたことを詫びるんだな!ぎゃはははははは!!!」


 何か元気な声が聞こえる。だが、もういい、全てどうでもいい。


 早く死にたい。一秒も早く、今すぐにでも殺してほしい。


「こ、殺してくれ……」


「ははは、あんちゃぁん、殺してほしいのか?ええ?」


 ルージュは俺の体を片手で持ち上げる。


「だが、ころさねぇよ!」


 ルージュは……俺を殺してくれないのか?


「殺せばそれは犯罪だろうが!宮廷魔法士たるものが、犯罪を犯しちゃあならねぇんだよ!!」


 そんなの、どうでもいい。犯罪なら、すでに恐喝罪を犯しているじゃないか。早く、早く。


「それになぁ」


 絶望する俺の黒い目にその顔が映るほどルージュが近づく。


「俺様は、そうやって絶望させた後に殺してくれと願う奴をあえて生かすことでより深い絶望を感じさせることに、愉悦を感じているのさぁ!」


 嗤い声。俺を、殺してくれないのか……?


 こんな、こんな深い絶望に満ちるくらいなら、生きてこなきゃあ良かったのに。それでも俺は生きなければいけないのか?


 いやだ……いやだ!


「んん?だーっはっはっはっは!!あんちゃん、泣いてやがるのかぁ!?俺より背が高いくせに、俺様より大人のくせに、涙を流して嫌がるのかぁ!?」


 気づけば俺は心の底から泣いていた。次々と流れ落ちる涙。苦しい、目元に力が入って辛い。早く俺を、解放してくれよ……


「くっくっく!こんな大人が、泣いてるなんて、かわいそうだなぁあ!れろ〜ん」


 ルージュは俺の涙を舐める。その行為は、狂気の先に生まれた慈愛だろうか、それともまだ凶器のうちに眠る行動なのだろうか。


 ともかくルージュは、ダイの流す涙を舐め、その体に取り込んだ。


「…………」


 静寂。ルージュはぴたりと動きを止めた。


「おにいちゃん!!」


「!!!」


 俺は意識を取り戻した。

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