王女様には何やら頼み事があるそうです
「お鎮まりください。ダイさん、あなたは地球の日本からやってきた、間違い無いのですね?」
「そうなんですけど……なんかそれって悪いことなんじゃ」
「とんでもございません!」
ぐいっと顔を近づける王女。ち、ちかい。
「あなた様は、その、トウキョウというのをご存知ですか?」
「ああ、日本の首都ですね。渋谷、秋葉原、中目黒……俺、ああいや私は宮城に住んでいましたが」
「ミヤギ?宮城は知りません。ですが、トウキョウがニホンの首都というのは知っているようですね……」
ああ、そうか。これで俺が本当に日本からやってきたことが証明できたのか。
「これでこのダイという方が日本からやってきたことは証明できました!ルージュ様とストラ様がこの場にはいます。兵士たちよ、この場から外してください」
王女がそういうと今まで厳重にこの部屋を守っていた兵士たちが部屋から出ていく。おいおい、俺が嘘をついていたらどうするんだよ。いやついてないけど。
「これで、あなた様とお話ができますね」
扉が閉まると同時に王女の雰囲気が変わる。
「クックック!フラン〜、なかなか王女が板についてきたではないか!」
「もう!やめてくださいよ!それでその……あなたは、狂凶のルージュ様でお間違い無いですよね?」
「何だぁ〜?怖いのか〜?うりうり」
どうやら本当にストラトフランは仲がいいらしいな。皇女に対してこんなに気軽に接しているのはこいつだけだ。いや、それをいうならストラもその正体はドラゴンだ、王女の方もかなり気軽に接している。
「あら、私をご存知とはね。ま、そりゃ当然か」
ルージュはため息をつく。そうだ、ルージュはここに着いてからずっと奇妙な目で見られていた。
まるで爆発物を見るかのような、いつ暴れ出してもおかしくないというか……
しかしそれが全く爆発しないことに対して、不思議そうに見る目だった。
「あの、こんなことを言うのは失礼なのですが、あなた様はかなり、その……」
「いかれた性格」
「やるか?くそばばあ」
王女が言いにくそうにしていることをズバッというストラ。おいおい、こんなところで問題を起こすなよ?
「ふん、あなたのいうとおり、私は狂凶のルージュ、宮廷魔法団第五位のルマ=ルージュ。今はダイお兄ちゃんについて回ってるの!」
がっしりと腕にしがみつくルージュ。ギョッとする王女、以前の彼女を知っている奴ならそういう反応をするのだろう、俺もそうだった。
「あー、王女様、世間のイメージってのは割と信用ならないんですよ。少なくとも俺はルージュは可愛い女の子だと思ってる」
「そう、なのですか……」
やっぱり”狂凶という名はそう簡単に払拭できないようだな。
「あなた方の関係はだいたいわかりました。仲間、ということですよね」
「兄弟よ!」
「ち、ちがわい!」
いかん、ルージュの口を塞いでおかないと誤解されてしまうな。俺たちは兄弟じゃない!
「仲間です、仲間。お兄ちゃんって呼んでるのは、まぁ気にしないでくれよ」
俺はルージュの口を塞ぎながら弁明する。
「ならば、信用していいですね……」
俺たちがはしゃいでいると王女は神妙な雰囲気を作り出す。
「一つ、どうしてもお願いしたいことがあるのです!」
その雰囲気はどこか儚げで、守ってやりたいと思わせるようで。
お願いしたいこと?俺に、何のお願いをするのだろうか。
この目。真剣だ、ふざけている場合じゃない。
「あなたには、モンブランを作ってもらいたいのです」
覚悟を決めた俺に帰ってきた言葉はそんな内容だった。