いざ、イーリュ王国へ!
しかし、この世界には炭酸はなかったはずだ。
「ストラ、これって一体どこからもらったんだ?」
「私当ててみましょうか?イーリュ王国でしょ」
あれ俺はストラに効いたはずなんですけど。
「くふふ、流石にわかってしまうか。その通り、これはイーリュ王国が最近開発した新たな飲料水だよ」
おお、どうやらイーリュ王国ってところはかなり技術力がありそうだな。
いや待てよ?違うな。
もしかすると、イーリュ王国というところには同じ地球からやってきた異世界人がいるのかもしれない。
もしそうならば会ってみたい。あって何をするのかはまだわからないが、一体いつ頃からこの世界にやってきて、この世界で何を目指しているのかを聞いてみたい。
俺には目的がない。このままだとせっかくの異世界だというのにずっとこのまま何もしないってことになる。
まずは、そのイーリュ王国に行ってみるのもいいんじゃないか?
実際日本人がいれば会話ははずむ。この世界にどれだけうまいものがあるのか、先に異世界へやってきたのだから、俺よりもこの世界に詳しいはずだ。
さらに言って仕舞えば、この炭酸は開発されたものだと言っていた。普通、飲料水に対してそんな言葉を使うか?俺の教養が悪いからかもしれないが、なぜだか違和感を感じてしまう。
「決めた。よし、イーリュ王国に行こう!」
「くっくっく!そういうと思ったわ!」
ストラは準備していたのか、俺がそういうとすぐにドラゴン野津型になり、俺たちを乗せて空高く飛び上がったのだった。
イーリュ王国。
それはソラリス王国のある大陸のそばにある島の、唯一国家。
豊富な海の資源と、山からの恵み、さらにはソラリスのある大陸との交通手段が発展していることもあってとても豊かな国だという。
そんな国が魔物に狙われない理由はただ一つ。技術だ。
イーリュ王国が開発したとされる武器や武術は、他の人間国と一足もふた足も先に行っている。
例えば銃。いや、銃に似た何か、というべきだろうか。
イーリュ王国から出土される謎の物質から作られたその遠距離武器は、弾の消費も、魔力の消費もなく人を殺せる威力を出せるという。
そういえば、エヴァンスからもらった家も、灯の尽きないランプも、この国が開発したというのだ。
俺はこの世界で元の知識でチートをするつもりはなかったが、もしやっていたとしてもそれは無駄に終わっただろう。
なぜならもうすでにこの世界にも携帯通信機が存在しているのだから。
「まぁ、携帯なんてなくても魔法を使えば遠くの人と会話できるけどね」
そう教えてくれたのはルージュ。ルージュは一応魔法団の5番目に偉い人だ、魔法のことにも詳しいのだろう。
「しかし、ここがそうなのか……」
ストラに降ろされたところは港だった。
まぁー、クソでっかいね。見渡す限り、船、船、船。視界の端から端まで船が入らないようにするのが無理なくらいだ。
「こんなにでかいなら、さぞすごい市場があるんだろうなぁ」
「そりゃそうだろう。この国の港と市場は、この世界で一番大きいとされておる」
世界で一番、か。もう国のほとんどはこの港で埋められているんじゃないか?
「さぁ、こんなところで道草を食っている場合ではない。城へ行くぞ」
ストラはそういうと俺たちの手を引っ張る。しかし、すごいなこの国は。さっき、ドラゴンになったストラが余裕で泊まれる飛行場みたいなところもあった。さらにはテレポートの移動先になっているのか、やけに人がいない謎のでかい広場もあった。
何だか、ワクワクしてきた。そう、そうだよ、これだよな、冒険ってのは。
で?なに?城へ行くのね?うんうん、いいじゃない、城なんて観光スポットの代表なんだから。
「一応聞いとくんすけど、あの俺たちって城に何しに行くんですかね」
俺は恐る恐るストラに効いてみる。
「決まっている」
あー、嫌な予感。
「謁見だ」
そして嫌な予感は見事に当たったのだった。