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~ストラと世界のことを教え合った~

 とある日。


「おい貴様。この作りかけの謎の機械はなんだ?」


 ストラが俺にとあるものを差し出してきた。


「あー、それは俺が炭酸を飲みたくて作ろうとしたやつだな」


 ストラが持っていたのは水の流れで回る水車もどき。頑張って作ってはみたが、しっかりとした知識がないので回ることもせずにガラクタとなった。


「ほう、炭酸とな。これは水車とやらではないのか?」


「水車ってのは水の力で電気を生み出すやつだ。まぁ、ここじゃあそんなことをしなくても魔法でどうにかなってるけどな」


 それに、かつて俺を訪れにきたエヴァンスの置いていった家は、謎の動力でいつまで経っても電気が消えないしな。


「その水車で水と二酸化炭素を混ぜて炭酸を作ろうとしたんだよ。俺、そういうの漫画で読んだことあったからな。だが、まぁー知識がないやつがやることじゃないね」


 この世界には炭酸はない。代わりに喉の奥がキュウっとなる謎の飲み物は存在する。


 でも、あの感覚じゃないんだよ。あの飲み物はごくごく飲めないけど、炭酸はごくごく飲めるんだよ。で、俺はぷはぁー!とやりたいわけ。


「貴様、異世界からやってきたと言っていたな。どこからやってきたんだ?」


「あのー、俺の名前教えたよな?なんなら友達になったと思うんですけど」


「くくっ!あれを本気にしてたのか!やはり面白いなぁ」


 ストラはいつもこんな感じでふらっと俺に近寄りふらっとこの家を出ていく。ルージュとはまた違った自由人といった印象だ。


 だがストラの問題は他にある。いや、これさえなければ完璧だし、正直直さなくても俺はいいというか、いや直す方がそりゃいいというか。


 ストラは毎朝裸で起きてくるのだ。どんなに注意しても、裸で生活することをやめない。


 俺だって健全な男子高校生だ、しっかりとみたい気持ちはあれども、だがあんなにも見せつけてくると正直興奮しなくなる。最初のころはチラチラ見るだけで、その晩に思い出してスッキリするのが流れだったけど、今ではもう気にしなくなってしまった。


 やっぱりね、隠すからこそエロいんですよ。全てひけらかすのはなんか違うんだよ。


「おい、黙るな。悪かったよ、ダイ。お主は本気で我と友人になりたいのだものな」


 あ、いや不貞腐れて黙っていたわけじゃないのだけれど。


「えっと、俺の元いた世界だっけ?まぁ教えてやるよ、そこは地球という星で、俺がいたのは日本って国でーーー」


 俺はストラに俺の元いた世界のことを話した。


「お主の元いた世界は平和だったのだな」


 話を聞いていたストラはそんなことを言う。


「いやいや、俺の世界にも恐ろしいやつはいたんだぜ?ヤンデレっていうのがあってな」


「ほう、ヤンデレとな」


「ああ、そいつはなぁ、自分のものにならないなら死んでとか、あなたが好きだから絶対一緒になるとかなぁ、そんなことをいうやつらのことだよ」


「ははは、愛されるのはいいことではないか」


「これは友だちの話なんだがな?そいつはクラスメイトにその能力の良さを認められて生徒会に入ったんだ。あー、まぁなんか生徒を仕切る奴らの集まりだな」


 ストラはまた尻尾をブンブン振って俺の話を聞いている。


「だがそいつにもいろいろあってなぁ。途中から学校に来なくなったんだ。学校はわかるよな?あんま褒められたことじゃないけどさ、まぁめんどくさくなったんだよな」


「ふーん?」


「……そしたらその生徒会長はさ、そいつの家にまで押しかけてきて、こう言ったんだ。あなたが欲しい、あなたと一緒に過ごしたい。最初は純粋にお……そいつの能力を求めていたのかもしれないけど、なんだか途中からそれが恋心だと勘違いしたんだろうな。とにかくそいつは毎日毎日マンションの部屋の前に立ってそいつが出てくるのを待つようになったんだ」


「ほほう?」


「うんざりしたよ。本当にしつこいんだ。それに怖い。それまでそいつは女性にモテたことなんてなかったからな、女性に求められるなんてめっちゃいいことじゃんとか思っていた。だが実際当事者になるとどうもそんな思いは抱かずに、女性への恐怖心だけが募るそうだ」


「諦めて一緒に暮らせばいいじゃないか」


「ははは……そしたらどうなったと思う?」


 ブンブンブンブンブンブン。


「どろどろに愛されたんだよ。一度認めてしまうと、もう後戻りはできねぇ。認めちまったからな、周りもそれを公認しておあついねぇとかお似合いだよとかいうんだ。ちげぇ、ちげぇよ。お前ら助けてくれよ。こんなに深い愛は俺にはいらない。俺にそんなに深い愛は受け止めきれない……そいつはそう思ったんだ」


「それで?それでその二人はどうなったのじゃ?」


「………男の方はある日急に失踪したんだ」


「かーっかっか!!そ、そいつは死んだんじゃな!間違いないわい!」


 ストラの言う通りだ。その男は結局死んだ。


「こんな世界に比べれば、ここは遥かにマシだぜ」


 俺は広大な空を仰ぎ見て、ため息をつく。


「ふ、今は魔王がいないからな」


 え、魔王?魔王とかいるのこの世界?


「クックック、やはり異世界人はこの手の話に興味があるか。いいだろう、我らドラゴン族が慕っていた魔王の話をしてやろう」


 ストラはそう言うとまるで子供のように魔王の話をするのだった。


 ストラの話は壮大だった。そりゃ、俺の世界の歴史も壮大だろうけど、俺は話半分で、ストラは実際に体験した話なんだから、その話の内容の濃さはまるで違う。


 残念ながらその魔王はもうこの世にはいないと言う。ストラも長くこの世界に生きているのだろう。


「魔王か……会ってみたいな」


「くはは、聞いてなかったか?今はいないのだ」


「いや、いないと言われても。魔王ってどういう制度でやってんの?」


 今にも死にそうな魔王なら、次の後継者くらい選びそうなのだが……もしくはその子供だったりがいるはずだろう。


「魔王とは、勝手に呼ばれて成るものだ」


 キリッとかっこよく言い放つストラ。思わずゾクっと背筋が凍る。


「この世界の魔物に慕われ、従え、新しい道を切り開き、魔物に知恵を授ける。それこそが魔王だ」


「ん?魔物に知恵を授ける?魔物ってのは元々は知恵がないのか?」


「うーむ、ないと言えば嘘になる。が、魔物は人間ほど狡猾ではない」


 まるで人間は狡猾であるかのように言うな。まぁ、実際その通りだと俺も思うけど。


「そもそもこの世界に存在する人間は魔物に対して一方的に有利なのだ」


「いや、そんなことないだろ。俺ポチとどっこいどっこいだぞ?」


 ついこないだだって皮で魚を取ろうと泳いでいた時、俺は一匹も捕まえられなかったのにポチは10匹くらい捕まえてたしな。あれ?どっこいどっこいどころか、俺劣ってるんじゃ。


「NPCを除いて全ての人間は魔物を狩ると経験値を得られるようにできている。経験値を得ると、途端に人間は魔物よりも強くなるのだ。スキルもあるしな」


 そういやスキルは一人一人違うものを持っているとルージュが言っていた。スキルは魔物に対しての対抗手段なのだから、必然的に人間の方が有利になってしまうのか。


「だが魔王は違う。魔王は魔物に知恵を与え、魔物を強化する。そうなれば人間なんぞ、ころっと、こうだ」


 首を掻っ切る仕草をするストラ。あーそれ、こっちの世界でも同じ表現なのね〜。


「つーかストラは人間側なの?魔物側なの?」


「くはは!我は魔人だ、人間でも魔物でもない」


 んん?なんかややこしいな。


「お兄ちゃん!それは私が説明してあげるわ!」


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